○安衛法と仲良くなる荷役運搬機械

構内運搬車を安全に使用するための措置

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製造業では、ライン間で材料や品物を移動させる必要があります。

そのような品物は、人が運んでも構いませんが、作業の合間で運ぶとなると、作業を止めなければなりませんし、重いものであれば、とてもじゃないですが持てません。

大きなものであれば、フォークリフトで運びますが、ライン間での荷物のやり取りとなると、少々車体が大きく、大げさです。
狭いところを走ると、突き出したフォークが危険になることもあります。

工場などで荷物を運搬するには、それに適した運搬機械が必要になります。
それが、構内運搬車です。

構内運搬車は、限られた範囲内で、荷物をやりとりする場合に使います。
限られた範囲内なので、スピードを出し過ぎる必要はなく、時速15キロ以下でなければなりません。

構内運搬車は、イメージ的には、台車タイプの車両という感じでしょうか。
飛行機に乗る時に、飛行機まで荷物を運んでいる車両というと、目にしたことはあるかもしれません。
あれも構内運搬車の一種です。

運搬車なので、荷物を載せて運ぶことができます。
またオートメーション化されたものもあり、決まったルートを無人で行き来する物もあります。

構内運搬車というくらいなので、路上を走ることは意図していません。
工場や倉庫などの屋内または屋外でも敷地内のみ走ります。

そのため、スピードは出ません。とてもゆっくりのスピードです。
狭い範囲で早く走ると、危険きまわりないのは分かりますね。
無人車であれば、時速1.0キロ程度になります。
これは人が歩くよりも遅いスピードなのです。

車両の形をしているので、それに伴う規定もあります。

安衛則では、構内運搬車の規定が定めれられています。

【安衛則】

第6款 構内運搬車

(制動装置等)
第151条の59
事業者は、構内運搬車(運行の用に供するものを除く。

以下この条において同じ。)については、次に定めるところに 適合するものでなければ、使用してはならない。
ただし、第4号の規定は、作業を安全に行うため必要な照度が
保持されている場所で使用する構内運搬車については、適用しない。

  1)走行を制動し、及び停止の状態を保持するため、
   有効な制動装置を備えていること。

  2)警音器を備えていること。

  3)かじ取りハンドルの中心から車体の最外側までの距離が
   65センチメートル以上あるもの又は運転者席が車室内に
   あるものにあっては、左右に1個ずつ方向指示器を
   備えていること。

  4)前照灯及び尾灯を備えていること。

(連結装置)
第151条の60
事業者は、構内運搬車に被けん引車を連結するときは、
確実な連結装置を用いなければならない。
(使用の制限)
第151条の61
事業者は、構内運搬車については、最大積載量その他の能力を
超えて使用してはならない。
(積卸し)
第151条の62
事業者は、一の荷でその重量が100キログラム以上のものを
構内運搬車に積む作業(ロープ掛けの作業及びシート掛けの
作業を含む。)又は構内運搬車から卸す作業(ロープ解きの
作業及びシート外しの作業を含む。)を行うときは、
当該作業を指揮する者を定め、その者に次の事項を
行わせなければならない。

  1)作業手順及び作業手順ごとの作業の方法を決定し、
   作業を直接指揮すること。

  2)器具及び工具を点検し、不良品を取り除くこと。

  3)当該作業を行う箇所には、関係労働者以外の労働者を
   立ち入らせないこと。

  4)ロープ解きの作業及びシート外しの作業を行うときは、
   荷台上の荷の落下の危険がないことを確認した後に
   当該作業の着手を指示すること。

(点検)
第151条の63
事業者は、構内運搬車を用いて作業を行うときは、その日の作業を
開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。

  1)制動装置及び操縦装置の機能

  2)荷役装置及び油圧装置の機能

  3)車輪の異常の有無

  4)前照灯、尾灯、方向指示器及び警音器の機能

(補修等)
第151条の64
事業者は、前条の点検を行った場合において、異常を認めたときは、
直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。

構内運搬車についての条文は少ないですが、荷役運搬機械全体の規定は適用されます。
そのため、使用にあたっては、作業計画や作業指揮者の配置などが必要になるので、注意しましょう。

構内運搬車の装備ですが、フォークリフト等では、前照灯やヘッドガード等でしたが、車両の要素が強い構内運搬車は、それだけはありません。

前照灯と尾灯はもちろんのこと、ブレーキなどの制動装置、警音器、ハンドルや方向指示器も必要になります。
これはフォークリフト等より、作業者の近くで運転することが多いので、人にぶつからないための装備です。

工場内で、人が通行する通路を走ります。
走行中、人が横切ったり、並走したりすることもあるでしょう。
近くに人がいるから、当たらないようにする配慮が大切なのです。

構内運搬車の中には、トレーラーなどのように、いくつか荷台を連結するタイプのものもあります。
さながら、電車が走っているようなものでしょうか。
いくつかの荷台を連結するのですから、連結部が弱いと問題ですね。
荷台が外れて、全く別の方向に走って行ったら危険です。
そのため、連結は強固でなければなりません。

また構内であり、路上ではないからといって、過積載はいけません。
最大積載量、荷重はしっかり守り、使用制限を超えた使い方をしてはいけません。

荷物の中には、非常に重いものもあります。
中には100キロを超えるような荷物を運ぶこともあります。

100キロ以上の荷物となると、落下して、人の上に落ちると、大怪我もしくは致命傷となりかねません。
100キロ以上の荷物の積み下ろしには、慎重に行う必要があります。
積み下ろし作業を行うにあたっては、作業指揮者を指名しなければなりません。
指揮者は作業手順に従い、指揮し、切れそうなロープなどは排除し、関係者以外は立ち入らないようにさせます。

大きく重い荷物の運搬で、最も慎重に行わなければならないのは、積み降ろしでしょう。
そのため、指揮者が責任をもって、荷物の面倒を見る必要があるのです。

さて、構内運搬車は、フォークリフトなどの他の荷役運搬機械のように、定期自主点検を行うことは定めれられていません。
そのため年次点検も月次点検も、行うことは義務付けられていません。
ただし、自社として独自に点検すると、安全に使用することができるのは間違いありません。

点検は、作業前の点検として行います。
その日の作業前に、タイヤや荷台など、不具合がないかを点検します。

もし作業前の点検などで、不具合が見つかった場合は、すぐに修理しましょう。
定期点検がない以上、点検時に修理すればいいやという先延ばしはできません。
軽微な不具合であっても、なるべく即対処するのがよいですね。

構内運搬車は、限られた範囲の中で、行き来をする車両機械です。
多くの場合、短い距離の運搬ですが、これを人が持ち運びするとなると、とてもじゃないですが、手におえません。

工場内での運搬を担うものなので、何よりも人に接触しないということが求められます。
条文で定められていませんが、人にぶつかりそうになったら察知するセンサーや、仮に接触してしまった場合にも怪我をさせないようにバンパーを備えたり、角を丸くしたりなどの配慮しているものもあります。

機械側でも安全対策はしているのですが、それだけでは不十分です。

必ず使用する人、周りで作業する人が安全意識を持つ必要があります。

近くで構内運搬車が行き来している環境で仕事していると、あまりに日常的なことなので、危険意識が薄れていきます。 こういった慣れは仕方ないことかもしれません。

しかし、油断していると、工場内でも交通事故は起こってしまいます。

構内運搬車も機械なので、力は人間が及ぶものではありません。

また積んでいる荷物も、重量物もあるので、落下してくると、ひとたまりもありません。

油断すると大きな事故になりうるのです。

構内運搬車も身近な機械ですが、風景の中に溶けこませず、油断すると危ないんだという意識で、一緒に作業したいものですね。

まとめ。

【安衛則】

第151条の59
構内運搬車は、前照灯等などの装備が適合するものでなければ、使用してはならない。
第151条の60
構内運搬車に被けん引車を連結するときは、確実な連結装置を用いなければならない。
第151条の61
構内運搬車については、最大積載量その他の能力を超えて使用してはならない。
第151条の62
一の荷でその重量が100キログラム以上のものを構内運搬車に積み降ろす作業では、必要な措置をとらならなければならない。
第151条の63
構内運搬車を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、点検を行わなければならない。
第151条の64
事業者は、点検を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。

 

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