厚生労働省労働局長登録教習機関
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2023(令和5)年3月に労働安全衛生規則が改正されました。この法改正の対象は足場です。
足場については過去何度も法改正が行われました。特に平成27年の法改正は大きな改正がありました。このときの法改正により、足場組立等の特別教育が義務化されました。
今回の法改正は、大きく3点の変更です。
なぜ法改正が必要となったのか、変更内容はどのようなものなのかについてまとめていきます。
目次 |
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1 法改正の背景 高所作業の災害が多発 2 法改正のポイント 2.1 一側足場の使用範囲の明確化(2024(令和6)年4月1日施行) 2.2 足場の点検者の指名(2023(令和5)年10月1日施行) 2.3 点検記録項目の追加について 3 安全教育センターの研修について |
労働災害の統計を見ると、墜落・転落による死亡災害で最も多くを占めています。
建設業は、特に墜落・転落による死亡災害比率が高く、約40%を占めています。休業4日以上の死傷災害でも約30%を占めています。
建設業において、墜落・転落災害への対策は大きな課題となっています。
墜落・転落箇所では、次のような傾向があります。
・屋根等の端、開口部
・足場
・その他(はしご、脚立など)
墜落・転落対策として、平成30年には高所作業に欠かせない、墜落制止用器具(フルハーネス型安全帯)が義務化となりました。
義務化に伴い、特別教育も義務化され、高所作業に関しての意識を高める機会ともなりました。労働災害の傾向を見ると、平成30年~令和元年にかけて、墜落・転落災害が減少して、効果が見られました。
しかしながら、依然として墜落・転落災害が多い傾向には変わりありません。
屋根等の端や開口部からの墜落・転落は、住宅建築などの小規模工事で目立ちます。
パトロールでも住宅工事現場では、開口部などが放置されている、墜落制止用器具が使われていない様子なども見かけます。
規模が小さくなると、作業場にいる人も少なく、管理が行き届いていない様子が見られます。
また住宅建築では、一側足場を使用されることも少なくありません。
一側足場は、作業床の片側に支柱を建て、床を支えます。支柱側にのみ手すりや幅木を設けています。建物側には手すりなどは設けられず、大きな開口となっています。
一側足場は、本足場を組むことができないな狭い場所でも設けられます。しかし実際には、十分に本足場組める広さがあるにもかかわらず、一側足場を組んでいることもあります。
一側足場は本足場に比べ、部材が少なくなるため、設置コストを下げられますが、安全性が低くなります。また手すり等の設置義務がなく、墜落制止用器具と使用しての作業となりますが、墜落制止用器具が使われていないこともよく見かけます。
また足場の点検も形だけになっていることも少なくありません。
これもパトロール時ですが、足場の点検表を見ると、常に✔️され、良好と記録されています。しかし実際の足場には幅木が外され、元に戻されていないこともあります。これでは本当に点検したんだろうかと疑問に思ってしまいます。
このような問題点、放置すると墜落転落災害につながる状態の解消を目的として、次のことが検討されています。
1.屋根・屋上等の端・開口部からの墜落・転落防止対策 ・マニュアルの作成・普及 ・最新の木造家屋建築工事の墜落・転落防止対策 ・脚立などからの墜落・転落防止対策 2.足場での通常作業中の墜落・転落防止対策 ・一側足場の使用範囲の明確化 ・足場点検の確実な実施体制 3.足場の組立・解体中の墜落・転落防止対策 ・作業手順の遵守徹底 ・手すり先行工法等の普及促進 4.足場の壁つなぎの間隔などの明確化 |
2の足場での通常作業中の墜落・転落防止対策が、今回の法改正の内容です
一側足場は、住宅工事で、本足場を組めるほどのスペースがない、狭い場所で組まれます。
構造は、作業床の建物の反対側に建地(支柱)を設け、建地がある側にのみ、手すりや中さん、幅木が設けられます。建物側は手すりなどはありません。作業床は、三角形のブラケットで支えます。
一方にしか手すりなどがなく、十分な墜落防止設備が備わっているとはいえません。使用時には墜落制止用器具を併用することが求められます。
一側足場で使用する部材数は、本足場に比べて少なくなるので、コストは低くなります。今までは、一側足場を設置するための制限はありませんでした。コストなどを考え、本足場を組める程度のスペースがあっても一側足場を選択するケースもありました。
しかし構造上、墜落・転落の危険性が大いに残っています。令和元年~3年に発生した足場からの墜落・転落による死亡災害56件のうち、8件が一側足場からの墜落でした。
法改正では、一側足場を設置できる範囲を明確化にしました。
本足場を使用するために十分幅がある場所(幅が1メートル以上の場所)では、本足場を組むことが義務づけられます。
場合によっては、一側足場を本足場にすることでコストが増すこともありますが、事故が発生時に支払うコストはとてつもないものになります。その意味でも、安全優先の設備にしてもらえればと思います。
足場の点検は、次のタイミング行わなければなりません。
1.足場の組立後、変更後、一部解体後
2.作業前(使用前)
3.悪天候、地震の後
注文者(元請けなど)は1~3の点検を行います。2は足場を使用する事業者(協力会社も含む)行います。
パトロールなどでも、足場の点検表をチェックしますが、良好以外の表記を見ることは極めて稀です。しかし実際に足場に登ると、指摘する項目が見つかります。
足場に不備があると、その箇所から墜落・転落することがあります。不備がないことを確認するためにも、責任のある点検が求められます。
法改正では、足場の点検を確実に行われるようにするため、点検者をあらかじめ指名することを義務づけます。点検は、指名された点検者が行わなければなりません。
もし不備があるにもかかわらず、点検者が見落としていた場合は、点検者の責任も問われることになります。
足場点検に指名される人は、誰でもよいというものではありません。やはり足場について十分な知識と経験を持つ人から選ぶ必要があります。知識と経験を持たない人に任せても、不備を見つけられない可能性もあります。
足場の点検者については、次の通達が参考になります。
平成27.5.20 基安発0520第1号による改正前の平成24.2.9 基安発0209第2号 別紙 足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱(旧要綱)の別添
安衛則の確実な実施に併せて実施することが望ましい「より安全な措置」等について
(2) 足場等の組立て・変更時等の点検実施者については、足場の組立て等作業主任者、元方安全衛生管
理者等であって、足場の点検について、労働安全衛生法第19条の2に基づく足場の組立て等作業主任者
能力向上教育を受講している等十分な知識・経験を有する者を指名すること。
(3) 作業開始前の点検は職長等当該足場を使用する労働者の責任者から指名すること。
さらには、足場等の安全点検の確実な実施について(事務連絡 平成24年4月9日)
1 足場の組立て等作業主任者であって、労働安全衛生法(以下「法」という。)第19条の2に基づく足場の組立て等作業主任者能力向上教育を受けた者
2 法第81条に規定する労働安全コンサルタント(試験の区分が土木又は建築である者)や厚生労働大臣の登録を受けた者が行う研修を修了した者等法第88条に基づく足場の設置等の届出に係る「計画作成参画者」に必要な資格を有する者
3 全国仮設安全事業協同組合が行う「仮設安全監理者資格取得講習」、建設業労働災害防止協会が行う「施工管理者等のための足場点検実務研修」を受けた者等足場の点検に必要な専門的知識の習得のために行う教育、研修又は講習を修了するなど、足場の安全点検について、上記1又は2に掲げる者と同等の 知識・経験を有する者
少し整理します。
1は足場作業主任者ですが技能講習修了だけでなく、能力向上教育を受けて最新の法令知識などを持っていることが条件となります。
2の計画作成参画者とは次のようになります。
一 次のイ及びロのいずれにも該当する者
イ. 次のいずれかに該当する者
(1) 足場に係る工事の設計監理又は施工管理の実務に三年以上従事した経験があること
(2)一級建築士試験の合格者
(3) 一級土木施工管理技術検定又は一級建築施工管理技術検定の合格者
ロ.工事における安全衛生の実務に3年以上従事した経験を有すること又は厚生労働大臣の登録を受けた者が行う研修を修了したこと。
二 労働安全コンサルタント(土木又は建築)
三 その他厚生労働大臣が定める者
3は講習修了者です。「建設業労働災害防止協会が行う「施工管理者等のための足場点検実務研修」を受けた者」とありますが、これに相当する研修は、建災防以外でも実施しております。
安全教育センターでは、足場組立作業主任者能力向上教育、足場点検実務者研修を実施しております。
なお、協力業者は職長等が行うものとされていますが、やはり一定の足場について知識や経験は不可欠といえます。
点検を実施したら、必ず記録を残します。記録は今までも使用していた足場点検表で問題はありません。
しかし、点検者を指名することが義務づけられますので、点検者の指名も記入する必要があります。
足場の点検者指名は、10月からですので、まもなく義務化されます。
安全教育センターでは、足場点検に関する研修を全国で出張講習などで行っております。施行が10月と迫っておりますので、お早めにご対応ください。
お問い合わせやお申し込みは、出張講習のページからお願いします。