○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、ショベルカーにひかれる?

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

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ここしばらく続いていた水道管工事も、ようやく終わりに近づき、犬尾沢ガウたちのチームは、仕上げの作業にとりかかっていました。

水道管の設置は全区間完了し、埋め戻しもしていたので、残りは掘削したところを、きれいに整地していきます。

今回は兎耳長ピョンは、別の現場で作業を行うので、整地の作業は犬尾沢の他、猫井川ニャン保楠田コンの3人で行います。

メインになる作業も終わり、少し気も抜けてくる時期なのですが、犬尾沢はミーティングで、みんなの気を引き締めるように言いました。

「残りは整地なので、今日明日で終わると思います。
 俺がバックホウで採石を敷いていくので、保楠田さんと猫井川は、平らに均していってください。
 
 別の現場で、終わりがけの作業で怪我をしたというのがあります。
 もう後片付けとか、仕上げだからと油断することがあるみたいです。
 今日もバックホウで作業するので、しっかり周りのことに注意してください。
 
 この現場もあと少しなので、ご安全に!」

2人に油断しないようにと発破をかけて、犬尾沢のミーティングは終わりました。

実は犬尾沢の現場ではありませんが、別の監督の現場で、作業員が怪我をするという事故があったのでした。
その現場は、もう後片付けをしているだけだったのですが、作業員同士話しながら、荷物を運んでいたところ、つまづいて転んでしまい、額を切ってしまったのです。
工事の後片付けだからと、ヘルメットもかぶっていなかったことが、額の怪我につながってしまったようでした。

犬尾沢はそのことが頭にあったのでした。

「どうしても、後片付けくらいになると、気が抜けるからなー」

犬尾沢の現場でも、誰かが怪我をするというのは、いつ起こるか分かりません。
今日のミーティングは、仕事の終盤、仕上げです。
掘削やクレーン作業のように、気を張るほどではありませんが、作業リーダーが気を引き締めている態度を示す必要があると考えたのでした。

「さっき犬尾沢さんが言ってた怪我って、牛黒さんのことですよね?」

猫井川が、保楠田に尋ねます。

「うん。あの家を建ててた現場。足場材を片付けている時らしいよ。
 3針縫ったらしい。」

保楠田は答えます。

「そういえば、しばらく額にガーゼ付けてましたね。
 でも、怪我を気にせず、ガハハハと笑ってましたけど。」

「あー、あの人はそういう人だから。」

保楠田と猫井川は、額に怪我をしながら、豪快に笑う牛黒ベコを思い出していました。

2人がそんな話をしながら、ショベルとジョレンを持って、作業の準備につきました。

犬尾沢もバックホーに乗り、エンジンをかけ、作業の準備をとりかかります。

犬尾沢のバックホーは、バケットで砕石を一掴みし、埋め戻した土の上に降ろします。
この作業を何度か繰り返し、ある程度の採石を置いたところで、砕石降ろしの作業は手を休めます。

今度は積み上がり、こんもり小山になった砕石を、崩して広げ、バックホウのクローラーで前後に移動しながら、敷き均していったのでした。

バックホウでは大雑把な敷均しになります。
よりきれいに平坦に仕上げていくのは、保楠田と猫井川はショベルなどを使っての作業になります。

保楠田と猫井川は、犬尾沢が作業し終えた場所から、デコボコの砕石路を平坦にしていくのでした。

平坦にしていくのは、意外とコツが入ります。
猫井川は、最初の頃は、作業をすればするほど、デコボコになるということもありましたが、今はそんなこともありません。

バックホウで砕石を広げ、人力で仕上げを行う。
3人は黙々と作業していきます。

とても順調に作業は進んでいったところで、保楠田は一度レベルで平坦度を確認しようと思いました。

「猫ちゃん、レベルで確認するから、スタッフ持ってきてくれる?」

「はい。あー、スタッフは車のなんかですね。取ってきます。」

猫井川は、そう返事をすると、作業していた手を止めました。

作業車は今作業している場所から、バックホウの脇を抜けた先にあります。

すぐにショベルを置き、作業車に向かおうとしました。

猫井川の油断は、左右の確認をしていなかったことです。

猫井川が走りだし、一歩、二歩進んだ時でした。

唸りを上げて、バックしてくるバックホウ。
左の肩から後方を見る犬尾沢からは、猫井川が走っている姿は死角に入っているようでした。

猫ちゃん、危ない!
 犬尾沢君、ストップ!!!

バックホウが猫井川に接触しそうなことに気がついた保楠田が大声を張り上げ、犬尾沢に見えるように大きく手を振りアピールします。

驚いて、ブレーキをかける犬尾沢と猫井川。

間一髪。

バックホウは動きを止め、猫井川はその場で石のように固まったのでした。

ヴァ、バカヤロー!!

犬尾沢の怒り声が響きます。

猫ちゃん、よく見ないと危ないだろう!!
 ひかれたら、死ぬよ!!

保楠田も大声で怒ります。

「朝、気を引き締めろと言っただろうが。
 バックホウにひかれたら、頭を少し切ったどころでは済まないぞ!」

怒る犬尾沢の声は、バックホウのエンジン音に負けないくらいの音量です。

2人にこっぴどく叱られた猫井川は、その後「羹に懲りて膾を吹く」ごとく、しっかりと左右を確認して、動くのでした。

今回のヒヤリハットは、バックホウに接触しかける、ひかれかけるです。

一歩間違えれば、命にかかわる大事故になりかねないものです。
保楠田がいち早く気付き、ストップをかけたので、事故に至りませんでしたが、危機一髪でした。

猫井川は、今回は保楠田からも怒られてしまいました。
保楠田が怒るくらいですので、よほど危険だったということがわかります。

バックホウや移動式クレーン、ブルドーザー、くい打ち機など、建設業の現場では非常に多くの機械が行き交っています。
建設業以外でも、工場ではフォークリフトや構内運搬車などの車が行き交っているでしょうから、常に機械との接触する危険は、隣り合わせだと言えます。

バックホウに接触する、クローラーにひかれるという事故は、実は少なくありません。
当然ですが、とてつもない車体重量ですので、上に乗られると、致命傷になってしまいます。

バックホウなどは、乗用車などと異なり、走行スピードはゆっくりです。
せいぜい時速20キロにもなりませんし、作業中であれば、もっと遅いスピードになります。

しかし今回の猫井川たちのように、バックホウが作業しているすぐ側で、人も作業している状況も多いのです。
機械と人が近いのですから、回避する時間がないのです。
バックホウが後進している先に、作業員がいて、ひいてしまう事故があるのです。

バックホウの上部は360度旋回できますけど、単純に前後する場合は、旋回まではしないことが多いようです。
その場合、後進する時は、乗用車などでバックする時と同様、肩越しに後ろを見ます。
当然ですが、後方部の全範囲を見ることはできないので、死角もできます。
作業員が死角に入り込むと、バックホウの運転手は見つけようがないのです。

バックホウなどと接触するおそれのある場所では、誘導者をつけるように定められています。
作業員数の関係上、誘導者を配置できない場合は、明確に人と機械の作業場所を分けることが大事ですね。

今回のお話でも、作業範囲を分けていたのですが、移動する時が問題でした。
直接作業ではない、移動時、特に機械が動いている範囲を横切ったりする場合は、必ず状況を確認し、運転手に、横切ることをアピールしながらがいいですね。

それでは、今回のヒヤリハットをまとめたいと思います。

ヒヤリハット 後進するバックホウにひかれそうになった。
対策 1.機械と人の作業範囲を明確に分ける。
2.接触する危険がある場合は、誘導者を指名し、誘導させる。
3.誘導員がおらず、機械の側を通る場合は、機械の動きを確認するとともに、運転手に分かるようにアピールする。

機械に接触すると、人の身ではひとたまりもありません。
そんなことは、分かっているのに、このような事故は跡を絶たないのです。

事故の背景には、常に機械がすぐ側で動いている状況で仕事しているので、慣れがあるのでしょう。
慣れは危険意識を薄くしてしまいます。

これくらいなら平気という油断は、大きな事故につながることもあります。

人と機械の作業範囲を明確に分けるために、可能ならば三角コーンとバリケードで、区切りをすることです。区切りをつけると、心理的にもバリケードを越えてはいけないなと思えるものです。
ただし機械の運転手からは、見えづらいかもしれないので、その点は運転手からも見える工夫は必要です。

また接触する恐れがあるのは、クローラー部だけではありません。
バックホウ等は上体がぐるぐる回転します。
この回転する上体にぶつかっても、相当なダメージを受けてしまいます。

このような事故から身を守るためには、機械が作業中には、近づかないことが大切です。

猫井川は今回2人に怒られましたが、それくらい危険な事故だったんですね。

バックホウの近くで作業する機械は、年度末にかけて増えますけども、現場作業場での接触事故には十分注意してくださいね。

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