講習・研修

工作物石綿事前調査者講習登録制度の新設

工事現場の石綿(アスベスト)問題は根深い問題であり、最近でも建設業を中心に法改正が行われています。特に石綿は建設業と密接に関連することから、石綿が「どのようなものなのか」「どのようなリスクがあるのか」は把握しておくことが重要です。

この記事では、令和8年1月1日から新設される工作物石綿事前調査者講習登録制度の新設について解説します。

石綿についてはもちろん、新設される事前調査の内容について理解を深めたい方はぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

 

建築物石綿事前調査者との違い

令和5年10月1日には建築物石綿含有建材調査者による事前調査が義務付けられました。これによって建築物の解体、改修(リフォームなども含む)においても、調査者の資格を持ったものによる調査が義務付けられました。これは建築物に限定です。石綿は使用範囲が非常に広く、建築物以外の場所にも使われています。使用例として、ボイラーや発電機などがありますが、これらの調査を建築物石綿含有建材調査者ができるかというと難しいです。このような背景もあって工作物での調査者の必要性が高まりました。そして令和8年1月1日からは「工作物石綿事前調査者講習登録制度の新設」が行われます。

建築物以外の工作物についても、事前調査は義務付けられていましたが、資格までは求められていません。これについて令和8年1月1日からは石綿調査の工作物における資格が新設されるためより厳密な調査が求められます。

石綿

石綿は建築材料の中に使用されている繊維状の物質で、健康に被害を及ぼすことが知られています。吸入すると肺に深刻な損傷を与える場合があるとされ、日本でも度々話題に上げられている物質です。

石綿は事前調査では、建材建築物内に石綿が含まれているかどうかを確認します。この調査は、石綿の含有の有無や含有量や飛散のリスクを評価し、除去作業時に適切な対策を講じなるために行われるのが特徴です。解体や改修では事前に必ず調査することが義務付けられています。建物に石綿が含まれていない場合や飛散のリスクがない場合には事前調査が不要となることもあるのですが、それは例外的なケースに限られます。建設業界では安全な環境を確保するために、石綿に関する規制や調査が重要視されており、今後も石綿に関する調査はより厳しく徹底されることが予想されるはずです。

そのため、建設業界で働く方は石綿の事前調査者講習を受けておくのが賢明と言えるでしょう。

 

工作物の石綿事前調査の内容

工作物の石綿事前調査の内容は次の通りです。

すでに建築物については、解体・改修等の作業に先立って事前調査が義務付けられています。同様に工作物の解体・改修等の作業のうち、石綿が使用されているおそれが高いものとして定められた工作物(※特定工作物)も石綿則第3条第1項に定める石綿等の使用の有無に係る事前調査を行わなければなりません。

 

石綿等の使用されているおそれが高いものとして定められた工作物は、以下のものとなります。

(1) 特定工作物の解体等の作業

(2) 特定工作物以外の工作物の解体等の作業のうち、塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業(塗料の剥離のほか、モルタル及びコンクリート補修材(シーリング材、パテ、接着剤等)の 除去等を含みます。)

 

特定工作物とは、次のとおりです。(石綿則第4条の2第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める物に掲げる工作物)

ア 反応槽

イ 加熱炉

ウ ボイラー及び圧力容器

エ 配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建設設備を除く。)

オ 焼却設備

カ 煙突(建築物に設ける排煙設備等の建設設備を除く。)

キ 貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く。)

ク 発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。)

ケ 変電設備

コ 配電設備

サ 送電設備(ケーブルを含む。)

シ トンネルの天井板

ス プラットホームの上家

セ 遮音壁

ソ 軽量盛土保護パネル

タ 鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板

チ 観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く。)

 

簡単にまとめると、工作物に関する工事を行う際にも、事前調査は工作物石綿含有調査者資格を持ったものが行わなければならないということになります。令和8年1月1日に調査者の資格が新設されます。義務化の前に、資格講習は開始されるため、お早めに取得をご検討ください。

 

石綿の事前調査対象

ここでは、石綿の事前調査が必要な場合について解説します。

 

原則は全ての建材を調査する

木材など明らかに含有がない材料のみ使用されているなどでは、調査が不要なこともあります。

しかしながら、特にレベル3の成形板は多種多様であり、人目で含有が判断できないものも少なくありません。解体・改修作業では事前調査が必要になります。事前調査の方法は、「書面調査」と「目視調査」になります。原則は両調査を行います。ただし、2006(平成18)年9月1日以降に着工したものについては、書面調査のみでもよいとされています。

 

事前調査の対象となる工作物(特定工作物)

事前調査を必要とする工作物は特定工作物になります。特定工作物は次のとおりです。(石綿則第4条の2第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める物に掲げる工作物:令和2年厚生労働省告示第278号)

 

①反応槽、②加熱炉、③ボイラー及び圧力容器、④配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く。)、⑤焼却設備、⑥煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く。)、⑦貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く。)、⑧発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。)、⑨変電設備、⑩配電設備、⑪送電設備(ケーブルを含む。)、⑫トンネルの天井板、⑬プラットホームの上家、⑭遮音壁、⑮軽量盛土保護パネル、⑯鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板、⑰観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く)

 

必要となる資格

上記は特定工作物ですが、調査対象によって必要となる資格が異なります。中には建築物石綿含有調査者で調査できる特定工作物もあります。

 

◯特定工作物のうち、炉設備、電気設備、配管設備、貯蔵設備等の解体等の作業

→ 工作物石綿事前調査者

 

◯特定工作物のうち、煙突等の建築物と一体となっている設備等の解体等の作業

→工作物石綿事前調査者 、一般建築物石綿含有建材調査者 、特定建築物石綿含有建材調査者

 

◯特定工作物以外の工作物の解体等の作業のうち、塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業(エレベーター、エスカレーター、コンクリート擁壁、電柱、公園遊具、鳥居、仮設構造物、遊戯施設等)

→工作物石綿事前調査者、一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者

 

建築物石綿含有建材調査者資格を所持している人は受けるべきか?

工作物石綿含有建材調査者と建築物石綿含有建材調査者は別物です。そのため上記の特定工作物の解体、改修の事前調査を行う際には、建築物の調査者資格ではダメなものもあります。(一部除く)

建築物石綿含有建材調査者資格を所持していても、11時間の工作物石綿含有建材調査者講習受講し、修了試験に合格しなければなりません。ただし建築物石綿含有建材調査者資格を所持している人は、一部の教科が免除となります。(基礎知識1,2及び報告書の作成が免除となる。合計3時間)

 

【補足】石綿事前調査に関する法改正の流れ

ここでは、石綿事前調査に関する法改正の流れについて解説します。

 

令和5101日:有資格者による事前調査が必須

令和5年10月1日からは、建築物石綿事前調査において、有資格者による事前調査が義務化されました。専門的な知識や技能を持った資格を有する者が調査を行うことで、調査結果の信頼性が向上を図ったものです。

 

令和811日:石綿調査の工作物における資格が新設

令和8年1月1日からは、工作物における石綿調査に関する資格が新設されます。

建築物以外の工作物となるため、幅広い業種が対象となります。これにより石綿調査を行うためには、専門的な知識や技能を持つ資格を取得する必要があるでしょう。

 

石綿含有建材調査者講習は安全教育センターにお任せください

「工作物石綿事前調査者講習登録制度の新設」により、石綿含有建材の調査が重要視されています。石綿は石綿と呼ばれ、健康被害を引き起こす恐れがあるため、工事現場では正確に把握することが重要です。

今後は「工作物石綿事前調査者講習登録制度の新設」により、さらなる事前調査が必須となるため、石綿を扱う工事現場に対応する場合は調査者の設置が必要となるでしょう。

なお、安全教育センターでは石綿含有建材調査者講習を提供しており、労働者の安全を守るために必要な知識と技術を提供しています。安全教育センターでの石綿含有建材調査者講習は、労働者の健康と安全を守るための重要なステップであり、今後は欠かせないものとなるはずです。

当センターでは、石綿含有建材の正確な調査方法を学び、安全かつ適切な対応を行うためのトレーニングを提供しているのはもちろん、少人数からの講習にも対応しているため、ぜひ気軽にお問い合わせください。