30分間の安全衛生教育レシピ

KYマンネリ化を見直そう

KYは基本的な安全管理なので、どのようなものかは知っている、そして行っていると思います。
誰もが知っている、行っているKYですが、改めて何のためにやっているのでしょうか?
 
KYは「危険予知」です。
今日行う、または今から行う作業について考え、どこにどんな危険があるのか洗い出し、その対策を検討し、確認するというものですね。
つまり、作業に着手する前に、作業の危険を予知し、危険に遭わないようにするための安全衛生活動です。
 
現場作業を行う時は、毎日行うKYですが、提出されたものを見ていると、効果はいかほどのものか、考えてしまいます。
ただ書類の作成だけになっていて、作業時の注意喚起になっているのでしょうか。
 
一番、基本的な安全衛生活動のKYです。このKYの問題点を洗い出し、対策を検討していきましょう。
 
今回の教育の目的

KYを実際の作業とあったものとし、具体的で使える内容とする。

作業内容とKYで検討した危険や対策が適合しているのか見直す。
曖昧な危険や対策でなく、実効性のある具体的行動を対策として考えるようにする。
教育で使用するもの
1.記入済みKY(会社、グループごと)

2.作業手順書(その日実施している作業)

(教育実行者が、事前に準備する)

今回の教育の
大事なポイント

(この教育の目標)
1.書いたものを見直す機会を作る
2.本日の作業がどんな作業をするのか、細かく分解する
3.作業手順書を使う
導入
開会の挨拶を行った後、今回のポイント、教育の流れを説明。
 
管理者の方であれば、毎日KYをチェックしていると思います。
気になる点などを1~2個を話しましょう。
 
私は安全パトロールの際に、多くの会社のKYなどを見ていますが、共通している点は次のとおりです。
 
・内容が曖昧。
 作業内容「荷下ろし」、対策が「手元足元注意」といったものも少なくない。
 
・マンネリ
 同じ内容がずっと続いている。
 
管理者の指摘もないので、KYは書いて提出で終わってしまっている現場も少なからず有ります。
この傾向を現状の問題点、課題として挙げるのもよいです。
 
今回のポイントは、KYの見直しと改善です。
・今まで書いたものを見直す、改善点を探す
・内容を具体的に、実行できるものにする。
 
1.自分たちのKYを見直す。【演習と説明】
(演習)
各社(各グループ)で、それぞれが書いたKYを見返してもらう。(時間は2~3分。10日程度。)
 
見直してもらうった後、グループごとで気になった点、問題点を話し合わせる。(3分程度)
資料2の「メモ」の書いてもらう。
 
1人、2人に問題点を発表させる。(1分程度)
 
 
ここでのポイントは、見直しです。
自分たちが書いたものを見直して、問題点を考えさせます。
 
資料2
 
発表するのは、メモを書いている人にするとその後の進行がスムーズになります。これもテクニックです。
中には「何も問題ない」との意見も出てきますが、その場合は気づいた点を指摘しましょう。
 
2.問題点の弊害を確認【演習と説明】
(演習) 
先ほどあがった問題点は、どのような弊害があるのか考えさせる。(2~3分)
資料3のリストを参考に、資料4の空欄に書き加える。
 
1人、2人に問題点を発表させる。(1分程度) ※ 時間の都合で、省いてもよい。
ここでは、現状のKYに改善点があることを自覚してもらうことです。
発表を組み込んでいるのは、当事者の口から問題点を出してもらい、自覚を促すことが目的です。
 
今回は、資料3の弊害リストを用い、マンネリに話を持っていきましょう。
例えばこんなことを言ってみるのも有効です。
 
資料3
 
資料4
 
「どうしても、同じ作業が続くと、内容がマンネリ化してくるように思いますが、どうですか?
 書くネタがないとか、ありませんか?
 マンネリ化すると、どうしても注意しなくなると思いますが、どうですか?」
 
マンネリ化によって、KY対策の実効性が下がるようなことを言って、まとめましょう。
 
3.マンネリ化する理由の確認【説明】
書くことがないのは、作業を大雑把に、そして一辺倒に捉えているから。
つまり今日の作業という大枠で捉え、個々の作業まで検討が及んでいないから。
曖昧な状況設定では、出てくる危険も対策も少ない。
結果、同じことを書き続けることになる。
 
少々強引な論理展開ですが、内容の具体化、マンネリ解決のために、こんな説明をしてみます。
 
つまり、「曖昧な作業状況設定」→「曖昧な危険特定」→「曖昧な安全対策」となっている。
 
マンネリ解決のためには、同じ作業でも様々な観点から注目することが重要です。
例えば、グラインダ作業でも、「点検時」、「試運転時」、「研磨時」、「と石交換時」等で危険が異なるはずです。
このように作業内容を大枠から、ステップごとに細かく分解することで、いつもとは異なる危険が見えてくるということです。
 
「具体的な作業状況の設定」→「その状況で発生する具体的な危険」→「具体的な安全対策」
 
次回は、別の作業状況に注目することで、別の危険や対策を見つけられるので、少なくとも毎日同じ内容ではなくなるはずです。
 
問題点を確認するために、時々KYを見直す機会を設けることも重要です。
 
4.KY具体化のための対策【説明】
具体的な作業状況の設定のためには、「今日やる作業」を細かく分解する必要があります。
また、作業場所を移動するならば、その条件も加えます。
午前と午後で作業内容が変わるならば、それらも考えてもらいます。
場合によっては天候や気温も検討材料に加えることも出来ます。
 
細かくし過ぎる必要はないですが、「いつ」「どこで」「どんな作業」という内容までは思い描いてもらいましょう。
 
そして、作業時の危険の洗い出しでは、3つのキーワードを入れてもらいます。
 
資料5
 
「~するとき」(作業内容)
「~なので」(原因。危険性又は有害性の要因)
「~になる」(結果。事故)
 
建災防の職長・安全衛生責任者教育では、KYの説明でこの内容が書かれています。
私も職長・安全衛生責任者教育の際に教えているので、使いました。
 
この3つのキーワードを使ってKYを書いてもらうようにしましょう。
中でも大事なのは、「~するとき」です。具体的な状況設定がなければ、危険性などはイメージできません。
 
1つ具体例を挙げるもの有効です。
 
5.作業手順書を使う。【演習と説明】
作業を具体的にイメージするのに役に立つのは、作業手順書を参考にすることです。
 
資料6
 
(演習)
 
各社(各グループ)で、それぞれの手順書を見て、KYと整合性があるかを確認してもらう。(時間は1~2分。)
 
作業手順書は、あらかじめ提出してもらっていると思います。また現場で活用されていると思います。それらを使いましょう
最近は手順書にリスクアセスメントを盛り込んでいるものも増えてきましたので、リスクアセスメントも使います。
 
今日やる作業について、手順書のステップではどんなことが書かれているでしょうか。
急所やリスクアセスメントは、今まで書いてきたKYに反映しているでしょうか?
 
それぞれで、確認してもらいます。結果について、挙手で聞いてみるのも有効です。
 
挙手の質問
◯反映していた
◯反映していない 
◯手順書がない 
 
反映していない場合は、その理由を考えてもらいましょう。反映ポイントを
場合によっては、手順書に手直しが必要な場合もありますので、今後の課題にしましょう。
 
手順書がない場合は、作ることが課題ですね。
 
6.締め、管理者(元請け等)として協力すること。【発表と説明】
(質問と発表)
 
今後のKYはどのようにしていくか、1~2人に聞く。
 大事なことは、「自分たちで、どのようにするか」を口に出させることです。
多くの人は、自分で言ったことを反故にすることに抵抗を感じます。天に唾するようなものだからです。言ったことをやらなければ、引け目を感じるのです。
 
言ったことを実行する。これをコミットと言います。
コミットを取りましょう。
 
コミットを取った上で、管理の立場として協力できることを伝えましょう。
例えば、KYを添削するとか、資料を渡すなどです。
 
一方的にやらせるのではなく、協力する姿勢が大事です。
 
お互いにKYの改善をコミットして、最後は大事なポイントをおさらいします。
 
 
 
KYのマンネリ化を解決すための大事なポイント
 
1.(時々)書いたものを見直す機会を作る
2.本日の作業内容がどんな作業を行うのか、細かく分解する。
3.作業手順書を使う。
以上で、30分くらいになると思います。
 
30分を1時間にするためには。
演習時間を増やしましょう。
 
1.見直しを5~10分
2.弊害検討を5分
6.手順書の見直しを5分
7.最後に、本日のKYを書き直す 10分
 
最後に3つのキーワードを入れた、KYを作ってもらい発表をしてもらうと、効果的です。
 
実際にやってみての感想
実際にやってみての感想
 
演習時間を上手にコントロールしないと、30分超えてしまいます。
3と4は少々強引かと思いますが、勢いで乗り切って下さい。
 
意見が出てこないなどの場合は、ある程度一般論で攻めてもいいかと思います。
 
最後に今回使用する資料とレシピのPDFも公開します。
自由にダウンロードしていただいても構いません。
 
 
 
なお今まで書いたもののうち、関連するは次のものです。参考にして下さい。
 
 
ただこの教育を実施される場合は、コメントに報告やご意見をいただけると、今後の励みなりますので、ぜひお願いします。

コメント

  1. 建災防のテキストの危険予知の部分は内容が甘すぎで実際役に立ちません。
    予測が甘すぎます。
    危険要因は3つ押さえて事故の型で言い切ることが必要です。
    KYTもプロとして指導していますが、世の中のKYは甘すぎです。
    本質を知るには1日かけても足りないくらいです。
    KYセミナーも行いますが最低3時間無ければ正しく伝わらないでしょう。
    KYはPDCAです。
    必ず振り返りが必要なのですが、みんなやりっぱなしですね。

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