○今月の安全大会

重機は作業計画書とともに

私の会社は、主にプラント施設の機械設備や電気設備の工事を行っています。
この関係の仕事で使用頻度が高い重機と言えば、移動式クレーンです。

中でも、ユニック車などの積載型トラッククレーンはポンプを運んだり、撤去や据付などと、大活躍です。
これがなければ仕事になりません。

私の会社では欠かすことができないように、積載型トラッククレーンを毎日のように使用されている会社の少なくないのではないでしょうか。

先日のことですが、積載型トラッククレーンによる事故があった現場に安全パトロールに行きました。

事故調査と再発防止対策について、労働基準監督署に書類を提出し、ようやく作業も再開したという段階でした。
幸い死亡者は出なかったものの、大きな事故だったので、再発防止に努めることが求められる現場でした。

この時に事故は、簡単に紹介すると次のようなものです。

建物基礎の鉄筋工事のため、鉄筋工事業者が材料の搬入する時に事故が起こりました。
鉄筋は積載型トラッククレーンで搬入しました。
搬入と荷降ろしの作業者は1人でした。

材料の仮置きは、基礎の掘削穴内で、1メートル程度の段差があります。
クレーンからの距離は約0.8メートルです。
クレーンのアウトリガー設置場所には鉄板が敷かれています。

作業者は、玉掛けとクレーン操作を1人で行っていました。
クレーンの操作は、リモコンで行っていました。

鉄筋の束を順に下ろし、最後の束を降ろす時に事故が起こりました。
この時の吊り荷は約1.5トンで、定格荷重オーバーになっていました。
さらに、トラッククレーンの荷台は空なので、重心はクレーン側にあったのでした。

作業者は、リモコンで操作していました。
作業中、吊り荷を背にして、しゃがみ込みました。この時リモコンに手が触れ、不意にジブが動いてしまいました。

そのため、吊り荷がずれてしまい、鉄筋が背中に当たったのでした。
もし荷物が完全に落下し、下敷きになったいたら、1.5トンの重量を体に受け、命に関わっていた可能性があります。

不幸中の幸いだったのが、背中に当たっただけで済んだことです。
ただ、肋骨と腰骨が骨折してしまったのでした。

この事故の原因は、1つではありません。
様々なことが重なり発生したのでした。

例えば、こんなことです。
・搬入作業は、当日急に行うことになった。
・搬入だけだったので、新規入場者教育なども行っていなかった。
・1人作業だった。
・最後の吊り荷が、定格荷重オーバーだった。
・荷台が空だった。
・吊り荷作業中に、荷物から目を離した。
・リモコンのスイッチに触れてしまった。
・クレーンの旋回範囲内にいた。退避していなかった。
・次の段取りのため、急いでいた。
などです。

事故が起こる時は不思議なもので、いくつもの偶然が重なります。
これを「スイスチーズモデル」などと言ったりします。

トムとジェリーに出てくるような、大きな穴がボコボコと開いているチーズをいくつも並べたとき、たまたま穴の位置が重なり、1つのトンネルのように貫通する状態のことです。

事故も1つ1つの要素は些細なものです。しかしそれがいくつも重なると大きな事故になるのです。
そして、この事故の時、通常だったら行うはずの、作業計画も実施していなったのでした。

事故調査では、作業計画の有無の確認があります。
もしなければ、法令違反となります。(クレーン則第66条の2)

何より事故が起こった時、事前にしっかりと安全作業を計画しておけばと痛感する羽目になります。

では、作業計画にはどんな内容を盛り込むのでしょうか?
なお、作業計画作成の前には、地盤や地中埋設物の有無、架空電線の位置などの事前調査を行っておきます。

クレーン則の第66条の2には、

1)移動式クレーンによる作業の方法
2)移動式クレーンの転倒を防止するための方法
3)移動式クレーンによる作業に係る労働者の配置及び指揮の系統

とあります。
より具体的には、次の内容を盛り込みます。

・使用機械の性能
・玉掛けワイヤー
・作業に必要な資格と有資格者
・役割り(クレーンオペ、玉掛け者、合図者など)
・クレーンの配置場所(図面などの上に描き込むとわかりやすい)
・作業者の配置
・立入禁止範囲
などです。

書類の様式は、各社様々ですが、少なくともこれらの内容は盛り込まれています。

これらの内容を盛り込んだ計画書は、作業関係者が全員把握することが必要です。

上記の例は移動式クレーンですが、ショベルカーやブルドーザー、コンクリートポンプ車 などの車輌系建設機械、フォークリフトなどの荷役運搬機械も作業計画が必要なので、同様に作成しましょう。

作業計画は、日々作業内容が変わる建設現場では、毎日作成しなければなりません。
かなりの負担になるのですが、KYとともに習慣化していきたいものです。

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