○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

保楠田、寝不足でうっかり

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第114話「保楠田、寝不足でうっかり」

「ただいま。」

保楠田が帰宅すると、ベッドで休んでいた母が目を覚ましました。

「おかえりなさい。」

母は身を起こしながら、こたえました。

「ああ、起きなくてもいいよ。」

「ご飯は食べてきた?」

「いや、これから作るよ。
 お腹減った?」

「私は大丈夫。」

いつも家に帰ると、同じやり取りをします。
保楠田の母は体調が悪く、1日のほとんどをベッドで寝ている生活です。

保楠田は独身ですが、その理由の1つが母の介護もあったのでした。

一通りやることをやって、腰を落ち着ける頃には、母はまた眠ってしまっていました。

保楠田は、テーブルの上に発泡酒を置くと、テレビを付けました。

液晶バネルが明るくなると、バラエティ番組が流れていました。
発泡酒を飲みながら、ぼんやりと眺めて入るものの、内容は頭に入ってきませんでした。

保楠田は、もう何度も考えてしまうことがあります。
今は母と2人暮らしで、結婚も期待しないようにしています。

「このまま独身だろうな。」

将来のことをあれこれ考えるものの、毎度こんな結論になるのでした。
そしてこのことを考えた日は、寝付きが悪くなるのでした。

翌日、保楠田は眠い目をこすりながら、現場に向かいました。

現場に着くと、そこには猫井川がいました。

「おはようございます。」

「おはよー。ふぁ〜。」

挨拶もそこそこに大きなあくびを1つ。

「寝不足ですか?」

猫井川が聞きました。

「ん?ああ、ちょっと遅くまでテレビ見ててね。」

高校生のような理由を口にしたのでした。

今日の作業は、犬尾沢が担当している現場です。

朝礼やKYなどを終え、作業にかかります。

保楠田は、いつもはショベルカーに乗るのですが、今回は別の人が運転するので、猫井川と一緒に掘削穴の中に入り、床均しなどをするのが仕事でした。

ショベルカーが、穴を掘っている間は、少し離れた場所で、立ってぼんやりと作業の様子を見ていました。
やはり睡眠時間の短さは、生あくびを起こし、体の怠さを招いてます。
ショベルカーの結構な騒音もどこか遠くに聞こえたのでした。

「・・・保楠田さん!」

声を掛けられ、ハッとしました。

「どうしんたです?体調悪いんですか?」

どうやら掘削が終わったところの床均しを始めるようでした。

「ああ、大丈夫。」

そういうと、ジョレンを持って穴に近づくのでした。

掘削穴は、2メートルほどの深さになっています。
穴の出入りには、はしごを使って出入りしています。

猫井川と保楠田は穴の側にジョレンを置くと、はしごで穴の底に降りていきました。

ジョレンで不陸を均すと、またはしごで穴の外まで出て待機になりました。

この一連の作業を何度か繰り返しました。

保楠田の頭のぼんやりは晴れません。

また床均しのために、穴の中に入ろうとしたときでした。

保楠田ははしごで足を滑らせ、そのまま穴の底まで落ち、転んでしまいました。

「大丈夫ですか?」

猫井川は穴底に覗き込み、聞いてきました。

「だ、大丈夫。」

保楠田は、弱々しく答えました。

「朝から体調悪そうでしたけど、少し休んでいたらどうですか?
 これくらいなら、俺1人でもできますし。」

「いや、平気だよ。」
保楠田はゆっくり立ち上がりながら、答えます。

「でも、顔色悪いですよ。
 後は任せて、休んでてください。」

猫井川は、有無を言わさず、保楠田を穴から引きずり出し、休憩所まで追いやりました。

休憩所の椅子にどっかり座り、保楠田はうなだれます。

機能の寝不足がたたっているのは間違いありません。
若い時なら多少寝不足でも平気でしたが、40歳を超えると疲労が勝ってしまいます。

「ダメだな。」

保楠田の寝不足の原因は、一朝一夕で解決するものではありません。
そして、今後もこの寝不足になる日も続くかもしれないの予感に、不安が抱くのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は保楠田のヒヤリハットでした。
保楠田は、仕事では比較的明るく場を盛り上げる人ですが、その背景には抱えるものもあるのです。

その悩みは時として、睡眠不足を招いてしまいます。

睡眠不足は体に大きな影響を与えてしまいます。
体の怠さ、頭がはっきりしない、集中力の低下なども引き起こします。

しっかりとした睡眠は、健康維持のためにも大切です。

そのため、朝礼時には健康状態についての確認も行うことが重要です。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 寝不足で仕事していたら、階段から落ちて転んだ。
対策 1.朝礼で体調確認する。
2.体調不良の時は、休憩する。

最近は健康KYということも進められています。
健康KYには、食欲、睡眠、体調の確認を行いますが、これを取り入れ作業者の体調確認を行うのが重要ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA