飛来・落下○事故事例アーカイブ

鉄パイプ落下 男性死亡(東京都港区六本木)

entry-796

今日起こったこの事故は、とても大きなものです。
都心でビルの新築、解体、補修工事をする時、そのすぐ側を数多くの歩行者が行き交います。

その距離は、1メートルにも満たないこともあります。
外壁に沿って建てられた足場の側を、工事関係以外の人がいる状況なのです。

工事では、作業者自身もですが、歩行者などの第3者に怪我を負わせることがあってはなりません。
そのため、工事現場や足場では、物が道路に飛んでいかないように、シートや囲いで覆っているのです。

東京の六本木で、歩行者を巻き込む事故がありました。

足場の解体作業中、落下した鋼管が歩行者に当たってしまったのです。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

鉄パイプ落下 男性死亡 現場で叫び声何度も (平成28年10月14日)

14日午前9時50分ごろ、東京都港区六本木のビルの外壁工事現場から鉄パイプ(長さ約1.8メートル、太さ約3センチ)が1本落下し、歩道を歩いていた人の頭部に刺さった。搬送先の病院で間もなく死亡が確認された。一緒にいた妻はけがはなかった。警視庁麻布署が業務上過失致死容疑で関係者から事情を聴いている。

同署によると、11階建てビルの10階部分で足場の解体作業が行われていた。落下物を防ぐためのパネルが設置されていたという。工事はマンションやビルの改修工事を行う会社が請け負っており、現場には数人の作業員がいたという。

毎日新聞

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「足場鋼管」です。

ビルの外壁工事で、足場の解体作業中に事故が起こりました。
解体した足場の材料である鋼管(鉄パイプ)が、地面まで落下しました。そしてその鋼管は、歩道に向かい、歩行者に当たりました。
鋼管は縦に落ちたのでしょう。歩行者に突き刺さってしまいました。

写真を見ると、落下防止の防護棚(通称、朝顔)は設置されていました。
シートは外されていたようです。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

事故現場の写真を見ると、防護棚はあるものの、ビル全面ではありません。
間に2メートルくらいの隙間があるようです。
そしてブルーシートで囲われ、現場検証 を行っている様子を見ると、鋼管はこの隙間から落ちたのではないかと思われます。

作業状況がわからないのですが、この隙間は荷物を降ろす通路として使用してたのかもしれません。
解体した材料をロープなどで縛り、吊り降ろしてのではないでしょうか。

この事故現場は、六本木で人通りが多かったと思われます。
そして歩道の広さも限られているので、通行止めにすることはできません。

現場検証のため目隠しされているので伺えませんが、開口部の真下は立ち入り禁止されていたかが重要になります。
さらに、歩行者を開口部に近づかせない誘導員がいたのかもわかりません。

何が原因で鋼管を落としてしまったのかは不明ですが、仮に手を滑らせても地上に落下しないようにする作業計画を検討しておくことも必要だったのではないでしょうか。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

落下防止措置が完全ではなかったこと。
立入禁止、誘導員の配置がなかったこと。
作業計画の検討が十分でなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

都心の人通りの多い歩道で作業する時、特に注意が必要になるのが、第3者事故です。
足場の防護棚やシートは、材料などが飛び散らないようにするための安全設備です。

しかし組立てたり解体する時、安全設備も解体してきます。
隙間ができると、そこは危険箇所になってしまうのです。

ロープなどで吊り降ろす通路を確保するため、防護棚を一部解体するのであれば、それに代わる安全設備の検討が必要です。
可能であれば、ネットを張ることも可能だったかもしれません。

少なくとも、防護棚がない部分に関しては、立入禁止が必要です。
さらに作業範囲に歩行者が入らないように誘導員を配置します。

さらに作業手順として、解体してロープなどを縛る手順も検討できたのではないかと思われます。
1人がロープをくくる間は、別の作業者が支えておくといった案も検討できたかもしれません。

作業人数にも限りがあり、手順書も細かいところまで記入しないことも少なくありません。
しかし事故は取り返しのつかないこともあります。後から後悔しないために、事前の検討は重要です。

対策をまとめてみます。

防護棚に代わる墜落防止のネットを張る。
開口部は立入禁止とする。
作業手順は細かく記入する。

人通りの多い場所での作業は、歩行者などへの被害がないようにしなければなりません。
可能な限り、被害が及ばないようにする努力が、事業者には求められるのです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第564条
足場の組立解体の作業を行なうときは、適切な措置をとって行わなけれればならない。

 

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

通路と足場 その6。足場の組立解体と点検

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA