○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川 電気ドラムからの異臭にビクリする

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第75話「猫井川 電気ドラムからの異臭にビクリする」

雨は数日続きました。
しばらく作業は中断してしまいましたが、雨が上がったので、擁壁作り工事は再開となりました。

「やっと工事できますね。」

数日間の工事ストップが堪えたのか、伸びをしながら、言いました。

「わしもこの数日対して動いていなかったから、体が鈍ったぞ。」

鼠川は雨で作業がストップしていたこともあり2、3日休んでいたのでした。彼も同じく腰を回して、ストレッチしています。

「鼠川さんは、休んでる間は何をしていたんですか?」

猫井川も腰を回しながら、聞きました。

「家のこととかだな。後は嫁さんの店に行ったりして、のんびりしてたぞ。」

「あの店の料理うまいですもんね。また行きたいです。」

「いつでも来ていいんだぞ。金をいっぱい持ってな。」

ハハハは笑いながら、2人は今日乗って行くダンプまで歩いてきました。

「あれ?どこ行ったんだろ?」

ダンプの荷台を覗き込んだ猫井川が声をあげました。

「ん?どうしたんだ?」

「あ、いえ、電気ドラムがないなと思って。確か載せたままにしていたのですけど。」

「わしも荷台に乗っていた記憶があるぞ。
 確かにないな。

 誰かが持って行ったのかもしれないな。」

「もう!こっちも使うのに勝手なことして!」

「ないものは仕方ない。別のを持って行こう。」

「まあ、仕方ないですけど。
 うちの会社ってドラムはあまりないんですよね。

 まだ残ってるかな?」

プリプリと怒りながらも猫井川は、倉庫に電気ドラムを取りに行ったのでした。」

倉庫の中に入り探すと、電気ドラムは1つありました。
でも何だかほこりっぽい感じがします。

「1つありましたけど、大丈夫ですかね?」

猫井川がドラムを見せると、鼠川は

「ま、それしかないと仕方ない。
 とりあえず持っていくか。」

と返しました。
そうして2人は、そのドラムをダンプに積むと出発たのでした。

数日ぶりの現場に到着すると、しばらく続いた雨にも関わらず、現場はそれほど荒れていませんでした。

「そんなに水たまりもないな。ここは結構は水はけがいいのかもしれないな。
 それじゃ始めるか。」

鼠川がそう言うと、早速別の車に乗ってきた保楠田がショベルカーに乗り、掘り始めました。

ショベルカーで土を掘っていくと、土に染み込んでいた雨水がどんどん湧き出してきました。

「さすがによく水が溜まってるなー。
 猫ちゃん、水ポンは持ってきてる?」

ショベルカーの運転席から顔をひょいと出し、保楠田が言いました。

「ええ。すぐ持ってきます。」

猫井川はそう言うと、ダンプの荷台から、水中ポンプを取り出してきました。
ホースを伸ばし、水中ポンプを穴の底まで下ろすと、発電機に持ってきた電気ドラムからコードを伸ばし、プラグを挿し込みました。発電機から水中ポンプまでの距離はそれほど離れていなかったので、コードのほとんどはドラムに巻かれたままなのでした。

水中ポンプのケーブルをドラムに挿すと、発電機をスタートさせ、ポンプを動かし始めました。

穴に溜まった水は、どんどん吸い上げられていきます。そして先程まで、泥水に覆われていた穴底が見えてきました。

「まだまだ水は出てきそうだから、今日はずっと水中ポンプを動かし続けておこう。」

そうして、ポンプを動かしたまま、放置していたのでした。
水がなくなると、穴底を均し、砕石を敷いていきます。水中ポンプの周りだけ、砕石がない状態です。

砕石を敷き終えると、次は均しコンクリートの準備をしていくことになりました。
均しコンクリートのためには型枠を作らなければなりません。

前の区画で使用した型枠では、少し寸法が足らなさそうだったので、新たにコンパネを切る必要がありました。
猫井川は、電動ノコギリを準備をしました。
そして、ノコギリのケーブルを電気ドラムにつなぎました。

電動ノコギリのスイッチを入れると、ギュイーンと音を立て、ノコギリの歯はコンパネを切っていきました。
1枚、2枚と切り分けていき、型枠の材料を作っていきます。

3枚目を切ろうとしたときでした。

「あれっ!?なんか焦げ臭い。」

猫井川が妙な臭気を感じ、ノコギリを止め、当たりをキョロキョロ見回しました。

「ドラムから煙が上がってる!」

保楠田と鼠川が同時に声を上げました。

猫井川も驚いてドラムを見ると、黒い煙が上がっています。

保楠田は急いで発電機を止め、鼠川はドラムに駆け寄ると水中ポンプのプラグを抜いたのでした。

一応の電気を止めると、鼠川はドラムを調べました。

「どこが燃えているですかね?」

駆けつけてきた猫井川が聞きました。保楠田も駆け寄り、見守っています。
ドラムからケーブルを引き出していくと、途中でケーブルが溶けたところがあったのでした。

「何ですか、これ?」

その様子を見ていた猫井川が聞きました。

「うーん、どうもここのケーブルが溶けてるみたいだ。
 古そうなものだから、被覆がダメになっていたのかもな。」

「そんなことあるんですか?」

「電気屋がドラムのコードは巻いたまま使うと熱を持つから、全部引き出して使えとか言うからな。
 ケーブルも古くなっていたから、穴が開いていたのかもしれないな。」

「このドラムは使えそうにはないですね。」

「そうだな。電動ノコギリは発電機近くで使えるとしても、
 水ポンは使いたいけども、仕方ない。」

「均しコンクリートを打つときまでに、新しいのを持ってきましょうか。」

「ああ、頼む。コンパネはわしが切るから、取りに行ってきてくれ。
 ついでに、残土も持って行ってくれ。」

「わかりました。でも別のはあるのかな。
 犬尾沢さんに聞いてみよ。」

そうして、猫井川はダンプに乗ると、焦げ臭さが残る現場から離れていったのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回も水中ポンプが登場です。
水中ポンプは100Vや200Vで動きます。一般的な家庭用電気でも使用ができます。
工事現場などで使うには、近くにコンセントがないことも多いので、発電機を持ち込みます。

発電機と水中ポンプなどの電気機器を使う場所は離れているので、延長コードを使います。延長コードも1メートルや2メートル程度では使いものになりません。数十メートルは必要です。

そのため電気ドラムを使うのてす。電気ドラムはかなり長いケーブルを巻くことができます。

この電気ドラムも電気製品なので、使い方を誤ると感電する恐れがあるのです。
電気ドラムはコードの中を電気が通ります。

電気はコードの中の銅線を伝うのですが、漏電しないよう銅線を絶縁性の被覆で覆っています。
絶縁とは、電気を通さないということです。

被覆が破れたり、薄くなったりすると、絶縁が低くなり、電気が漏れやすくなります。
また電気ドラムは巻いたままで使用すると、コードが熱を持ちやすくなります。今回のヒヤリハットのように、コードが劣化していると、そこから火が出ることもあるのです。

また家庭でも1つのコンセントから、大量のタコ足配線をすると危険なように、電気ドラムから電気をとり過ぎると発熱して危険ではあります。
もしいくつもの電気機器を接続する場合は、コードを引き出して使用するのがよいようです。

コードはドラムに巻いたままで使う場合は、15Aまでが目安のようです。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 古い電気ドラムを使っていたら、コードから煙が上がった。
対策 1.電気ドラムは使用前に点検する。
2.ドラムからコードを全て引き出して使用する。

さて、猫井川の重力式擁壁工も、再開です。ここから一気に完了に向けて加速していきます。

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