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大型クレーン横転、72歳男性が海へ?行方不明(兵庫県尼崎市)

Chantier du stade

港湾では多くの荷物がタンカーと岸壁との間を行き来します。
それらの荷物を運ぶのに使われるのが、クレーンです。

港湾作業でのクレーンは、一定の範囲内で荷物を運ぶ固定式のものもあれば、移動式のものもあります。

数多くのクレーンが働く作業場ですが、そのいずれもがコンテナなどの重量物を運ぶため、常に危険と隣り合わせともいえます。

兵庫県の尼崎市で、クレーン車が転倒する事故があります。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

大型クレーン横転、72歳男性が海へ?行方不明(平成28年2月1日)

1日午前10時ごろ、兵庫県尼崎市東海岸町の岸壁で、男性から「船の上の大型クレーンが横転した」と119番があった。クレーンを誘導していた作業員の男性が海に投げ出されて行方が分からなくなっており、兵庫県警などが付近を捜索している。

県警尼崎南署によると、岸壁に係留していた台船の上で大型クレーンを移動させていたところ、クレーンが倒れ、一部が海に落下。クレーンを運転していた男性は肩に軽傷を負ったという。

現場は尼崎港内で、周囲に工場などが立ち並んでいる。

この事故の型は「転倒」で、起因物は「クレーン車」です。

尼崎港内で事故が起こりました。
岸壁に係留していた台船の上で移動していたというのですから、船の上に移動式クレーンだったと思われます。

大型クレーンはオペレーターが運転していましたが、このクレーンを誘導する人もいました。
何かしらの原因でクレーンは倒れ、誘導していた人が事故に巻き込まれ、海に投げ出されてしまいました。この記事では行方不明となっていますが、5時間後発見され、死亡が確認されました。

クレーンを運転していたオペレーターは肩に怪我を受けたのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この事故の直接的な原因は、クレーンが倒れたことです。
そしてこのクレーンは船の上にあり、移動していました。

まず気になるのが、当日の天候です。風は強かったのか?波は高かったのか?などが気になるところです。
海が荒れていて、波が高かったならば、船の傾きで倒れた可能性はあります。

船の上での作業は、岸壁に比べて、不安定さはあります。とはいうものの、岸壁に係留されていましたし、移動面が平だったので、全く不安定だったわけではなかったはずです。

悪天候であれば、作業は中止されたはずなので、天候は荒れていなかったはずです。
作業途中、急に荒れてきた可能性はありますが。

多少なりとも、不安定な作業場ですので、作業に先立って作業場の危険箇所などの調査を行い、作業計画を作っておく必要があります。
またこの事故でも配置されていましたが、誘導者も必要になります。

誘導者も配置され万全のように見えるのですが、事故は起こりました。
クレーンが風に煽られたのか、もしくはクレーンが何かの障害物に乗り上げたのか、ぶつかったのか、バランスを崩してしまったのでした。障害物に乗り上げてしまったのならば、誘導ミスの可能性はあります。

事故が起こり、クレーンが倒れてしまったのですが、誘導者が立っている位置が事故の被害を大きくしてしまいました。そう考えると、誘導者が誘導する位置も生死を分けてしまいます。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

障害物に乗り上げた、ぶつかったこと。
誘導が適切でなかったこと。
クレーンが倒れた位置に誘導者が立っていたこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

天候が悪い時は、クレーン作業はやってはいけません。この事故の時は、それが直接的な原因かは不明です。

船の上での作業のため足場は不安定だったはずですが、そういった不安定さに対応するための作業計画や誘導者の配置などで対策されていました。
どんなに対策していても事故が起こるのです。

誘導者はクレーンが安全に移動し、作業するための責任があります。運転しているオペレーターは、360°見渡したり、足元まで注意を払うことは困難です。これは誘導者とオペレーターが協力していかなければなりません。

また誘導者が誘導する位置取りも重要です。周囲が見渡せるとともに、オペレーターから見える位置で、さらに何か事故があった時に避難できるのが理想です。
少なくとも、進行方向に立つのは避けたほうがよいかもしれません。

対策をまとめてみます。

強風が吹いているときは、作業を中断する。
誘導者は障害物など確認し、誘導する。
誘導者は避難できる位置で誘導する。

誘導者がいるからといって、必ずしも事故が防げるわけではありません。
これが安全対策の難しいところです。

法律を守ることで、かなりの危険を防ぐことはできますが、残念ながら100%ではありません。
作業場、天候、環境に合わせた対応も考える必要があるのです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【クレーン則】

>第66条の2
事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行うときは、危険防止のための作業方法を決めなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

移動式クレーンに関わる規定 現場作業編1

第74条
事業者は、移動式クレーン労働者に 危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
第74条の3
事業者は、強風時は、移動式クレーンの作業を中止にすること。
第74条の4
事業者は、強風時に移動式クレーンの転倒を防止する措置をとらなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

移動式クレーンに関わる規定 現場作業編2

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