○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、コンクリートのハネが目にピシャんする

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第72話「猫井川、コンクリートのハネが目にピシャんする」
猫井川が任されている擁壁工事は無事スタートをきりました。
保楠田と鼠川とともに現場入りし、早速掘削作業から始めたのでした。

保楠田がショベルカーにに乗り、擁壁を作る場所を掘っていきました。掘る深さは、約1メートル。
大体の深さまで掘ると、深さの確認を行い、目的の深さにしていきます。

「保楠田さん、この足元をあと5センチくらい。」

保楠田はその指示を受けて、ショベルカーの爪の先でほんの少し土を掻きます。
そうしてもう一度深さを確認すると、

「OKです。それくらいで大丈夫です。」

と、指でOKサインを出して指示をしました。
一旦、ショベルカーを停止させてから出てきた保楠田は、床を均している猫井川に、

「それじゃ砕石を入れる?」

と、聞きました。

「そうですね。お願いします。」

その後作業は順調に進みました。
その日の内に砕石を敷き、均しコンクリートを打ち込みました。その翌日には、最初の区画分の型枠の組立も終わり、明日は本体のコンクリートを打ち込むところまで進んだのでした。

型枠を組んでいる間は、次の区画分の掘削は進め、次の作業の準備も平行して進めていたのでした。

「いよいよ明日は、最初のコンクリート打設ですね。
 無事進んでいったのでよかったです。」

順調に仕事が進んでいることに、ほっと一息つきながら、鼠川に話しかけました。

「まあそれほど難しい仕事ではないから、順調じゃないと困るがな。」

「そうなんですけど、俺の現場なのでこうやって順調なのは嬉しいですよ。」

「自分が担当している現場だとそう思うな。わしも最初に任された現場では同じ気持だったよ。
 でもいつも順調とは限らんぞ。」

「そうですね。
 犬尾沢さんがたまにトラブルになって、苦労しているのも見てますし。」

「うん。わしも何度泣かされたことか。
 現場が始まると、何かうまくいかないことがあるんだよな。
 設計と違っていたり、工程が遅れたりな。」

「今回は運がいいんですかね。
 慣れてなくて、苦労しましたけど、工程も順調ですし。」

「あとは天気がよければ、予定通りに終わるな。」

「天気だけは、どうしようもないですね。
 雨にならないで欲しいです。」

「それで、明日は何時にポンプ車が来るんだ?」

「朝いちで頼んだんすけど、9時くらいになりそうです。」

「9時か。今の時期は寒いけど、夕方くらいには均し終えられるだろうな。」

「そんな時間までかかっちゃいますか。」

「気温が低いと仕方ない。」

「他の仕事もやりつつですね。」

「だな。今日はこれでしまうか。」

「そうですね。また明日ですね。」

翌日、3人は朝からコンクリート打設の準備をしていました。

「バイブレーターは準備出来てるか?」

「大丈夫です。もう準備しています。」

「後は、ポンプ車が来るのを待つだけだな。」

「9時前には来ると思うんですけど。」

「じゃあ、来るまで待ってるか。」

保楠田がショベルカーに乗り、コンクリートを入れるバッカンを付けたまま、待っています。

しばらくすると、ポンプ車が到着しました。

ポンプ車から運転手が降りてくると、

「遅くなりましたか?」

と聞いてきました。

「大丈夫ですよ。それじゃあ、早速お願いします。」

猫井川は答え、いよいよコンクリート作業の開始です。

保楠田がショベルカーを動かし、バッカンの中にコンクリートを流し込みました。

ズドドドとコンクリートがバッカンに入ると、流しこみを止め、ショベルカーはバッカンを吊り上げました。
吊り上げたまま、打ち込む場所まで移動していきました。

打ち込み場所では、猫井川と鼠川がスタンバイしていました。
バッカンが所定の位置まで来ると、猫井川がバッカンを開き、コンクリートを流し込みました。

ボトボトボトとコンクリートが型枠の中に流れ込みます。

バッカンを閉じると、ショベルカーとまたコンクリートを受けに行きました。
猫井川はバイブレーターを持つと、コンクリートに差し込み振動させ、隅々まで行き渡らせていきます。鼠川はハンマーで型枠の外側をコンコンと叩いて空気を抜いています。

それぞれが役割の作業を行い、順調にコンクリートは打ち込まれていきました。

何度目かのコンクリートを流しこんだ時でした。
バイブレーターを差し込んだ猫井川が、急に体を仰け反らせました。

「どうした?」

「いや、思いっきり目に入ってしまいまして。」

鼠川が猫井川の顔を見てみると、顔中にコンクリートの飛沫をつけていたのでした。

「お前は顔を近づけ過ぎだな。顔中に飛沫が跳んでるぞ。
 水道に行って、目と顔を洗って来い。」

「はい。すみませんが、お願いします。」

そう言うと、猫井川は目を押さえ、走って水道まで行ったのでした。

水道で目を洗い、帰って来ると、そこには先程の猫井川と同様に顔中にコンクリートの飛沫をつけた鼠川の顔がありました。

「鼠川さんも、顔中飛沫だらけですよ。」

「あれだな。このバイブレーターは飛沫が跳ねやすいな。
 ともかくだ、お前替われ!」

そう言うと、猫井川にバイブレーターを渡したのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

猫井川の現場も順調に進んでいるようです。
擁壁はいくつかの区画に分けて、作ることになったのですが、まずは最初の区画のコンクリート工まで進みました。

コンクリート工事では、型枠の中にコンクリートを流し込むだけですが、いい加減にやっていると出来栄えが悪くなるのです。
型枠の隅々までコンクリートを送り込むために、バイブレーターという細かく振動する機械を使うのですが、振動させる関係上、表面ではハネがとぶこともあります。

コンクリートの性質はアルカリ性です。手についたりすると、結構手がガサガサに荒れます。
そんな性質なので、目に入るとよくありません。

でもコンクリート作業後は、顔に飛沫が飛んでいる人も多いですけどね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット コンクリートが目に入った。
対策 1.顔を近づけすぎない。
2.バイブレーターはコンクリートの表面で振動させすぎない。

作業も本格的になってきましたが、今度はどのようなヒヤリ・ハットがあるのでしょうか。

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