墜落・転落○事故事例アーカイブ

2階の床張り作業中に転落、男性死亡(栃木県宇都宮市)

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家や建物の建築工事は、高所作業が多くなります。
高所作業は、墜落事故の危険といつも隣り合わせです。

トビさんや大工さんは、屋根の上や細い通路の上をスイスイ歩くので、見ているこっちが怖くなることもあります。本人さんたちは、平気そうなのですけども。高所でも臆せず、平気に作業される大工さんたちですが、どんなに慣れていても墜落事故がなくなることはありません。

墜落事故は、建設業の事故では最も多い事故。やはり常に危険と隣り合わせといえます。

栃木県宇都宮市の建築現場で、大工さんが2階から墜落するという事故がありました。今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討してみます。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

2階の床張り作業中に転落、男性死亡(平成27年11月17日)

宇都宮東署は17日、宇都宮市陽東3丁目の工事現場で、大工男性(40)が16日に、2階から1階基礎部分に転落し、搬送先の病院で死亡が確認されたと発表した。死因は脳挫傷。

同署によると、男性は16日午前11時ごろ、作業員6名で床張りの作業中に転落したという。同署で原因を調べている。

下野新聞(記事がなくなっているので、トップページ)

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「構造物(建物)」です。

この事故は、建築現場で起こりました。
1階はコンクリート打ちっぱなしの状態でした。1階の床より先に、2階の床張り作業が行われていたのです。
2階の床がないと、今後2階の作業がやりづらくなりますからね。

6人で2階の床張りの作業中、1人が墜落してしまいました。
2階の床は、3メートルくらいがあります。しかも落ちた先はコンクリートです。

墜落した作業者は、病院で亡くなってしまったのでした。

被災された方は40歳ということなので、それなりベテランだった可能性があります。
そのような方でも、事故にあってしまうのだといえます。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この事故の原因は、2階から墜落したことです。 作業の進め方に、問題があったと考えられます。

2階の床張りはあらかじめ決められていた作業手順だったのでしょう。
この時、足場が組まれていたのか、脚立で作業してのか、もしくは梁に乗って作業していたのかは記事からはうかがい知ることができません。

床を張り終えるまでの短い期間ですし、室内のことなので、足場を組むとまではいかなかったかもしれません。
十分に高所で作業するスペースが確保できていない場合、少なくとも安全帯を着けて作業しなければなりませんが、この事故では安全帯が使用されていなかったようです。

よく見かけるのが、安全帯を持っていますし、胴ベルトに付いているけれども、使っていないというものです。
おそらくですが、この大工さんたちも腰道具とともに安全帯もあったのではないでしょうか。 でもあっただけ、だったのかもしれません。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

足場などの作業スペースが作られていなかったこと。
安全帯を使用する親綱などがなかったこと。
安全帯を使用していなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

建物の外足場は組まれますが、内側に組まれることは少ないです。 脚立足場などを使われることも多いですが、安定性は劣ります。

2階以上の高さで作業する場合は、建物の内外を問わず、安全に作業する設備が必要になります。 理想は足場を組むことですが、短期間に作業内容が変わるので、現実的には組むのは難しいでしょう。

足場は組めなくとも、少なくとも墜落しないようにしなければなりません。
2階の床張りでしたら、まだ足元は不安定です。梁の上に座って作業せざる得ない場合でも、墜落を防止は工夫できます。

最も外してはいけないのは、安全帯の正しい使用じゃないでしょうか。
親綱を通し、それに安全帯を取り付けて作業する。万全の対策ではないかもしれませんが、床に激突することは防げそうです。

親綱を通すとき、とても大事なことは、1人に1本の親綱を使用することです。
1本に2人以上を使用していると、誰かが落ちた時、引っ張られます。むしろ危なくなるのです。

作業者の中には、安全帯を使用するのを嫌がる人もいます。いちいちフックを掛ける、移動するたびに掛け替えることが面倒に思ってしまう人がいます。
それは、今までの経験から墜落することはないだろうと考えていることと、落ちたらどうなるかの想像ができていないからです。

どんなに高をくくっていても、今回の事故のように2階から墜落すると、命を落とします。 安全帯は、命を守る最後の砦です。

落ちたらどうなるのか、それを我が身に置き換えさせ、想像させるのが安全教育です。
妥協してはならないポイントです。

対策をまとめてみます。

安全に作業する作業床を作る。
親綱を1人1本通す。
安全帯の使用を徹底させる。

保護具があるのに、使っていないと宝持ち腐れです。
この場合、宝とは保護具だけでなく、自分の命であるともいえます。

口を酸っぱくして伝えることは、事故が我が身にかかった時にどうなるのかというです。
我が事としてイメージさせることが最も効果的な安全教育といえますね。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第518条
高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合は、足場などの作業床を設けなければならない。
第519条
高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。
第520条
労働者は、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
第521条
高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合で、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

最も多い事故。墜落・転落事故の防止。

コメント

  1. みや~みや より:

    「作業者の中には、安全帯を使用するのを嫌がる人もいます。いちいちフックを掛ける、移動するたびに掛け替えることが面倒に思ってしまう人がいます」

    確かにご指摘の通りだが、作業者は制限された時間以内で作業を完了させなければならない。安全帯の掛け替えは工具や資材を持ちながら行うことが多いことから以外に時間がかかり、条件が悪いと1回1分以上かかる。1日60回なら1時間工程がロスする。更に安全帯の掛け替えによって作業ペースがかき乱されるために実際にはそれ以上のロスが発生する。私の経験では10回の掛け替えで30分の遅延になっていた。

    繰り返しになるが、作業者は制限された時間以内で作業を完了させ、その作業場を次の施工業者に明け渡さなければならない。
    作業の遅延は納期の遅延になる。更には発注者、元請業者、次の施工業者など取引先に多大な迷惑と損害を掛けることになる。

    我々のような一人親方は納期と安全のどちらかを優先させなければならない急遽
    の選択を強いられている。

    対策ははただ一つ、安全対策による納期遅延について、発注者及び元請業者の理解を得ることです。
    「安全第一」建設現場にによく掲げていますが、発注者の不動産会社の事務所には見かけないですね。

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