○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”未分類

猫井川、久々の現場にうち震える

entry-486

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第63話「猫井川、久々の現場にうち震える」
「猫井川、明日は現場に来てくれ。」

犬尾沢にそう言われたのは、猫井川がずっと倉庫の片付けでうんざりしてきた頃でした。

「はい!やった!ようやく倉庫から開放される!」

「おいおい、倉庫も大事な仕事だろうが。」

呆れ気味な犬尾沢をよそに、久々に現場に出られることに嬉しくて仕方がない猫井川なのでした。

「で、どこに行くんですか?」

「明日は古い倉庫の取り壊しだ。手が足らなくてな。」

「倉庫の片付けの次は、取り壊しですか。
 やっぱり倉庫からは離れられないんですね。」

「とりあえず、土間とかを壊すから、コンクリートハンマを用意しておいてくれな。」

「はい。ちゃんと整理したので、すぐに持ち出せますよ。
 持ってきましょうか?」

「そうか。よく整理整頓してくれたな。
 でも今すぐはいらないからな。明日はしっかり張り切ってくれ。」

そうして次の日。
猫井川は朝からちょっと張り切っていました。
仕事で張り切ることなど普段はないのですが、しばらく倉庫作業でうんざりしていたので、気分が一新していたのでした。

「猫井川、コンクリートハンマを車に積んでいおいてくれ。」

「はい。」

そう言って、先日整理したばかりの道具棚からコンクリートハンマを取り出し、トラックの荷台に載せました。

「それじゃ、行こうか。」

「倉庫の前は、ずっと羊井さんのところだったので、犬尾沢さんの現場に行くのは、久し振りですね。」

「そういえば、そうだな。
 でも、今日は臨時だから、まだしばらくは羊井のところに行ってくれよ。
 あっちもまだ数日は動きなさそうだけどな。」

「そうですか。まだしばらくは倉庫なんでしょうか。」

「まあ、他に仕事があれば頼むよ。今回みたいにな。」

「倉庫作業をやっていて思いましたけど、やっぱり現場に出るほうがいいです。」

「現場の責任者になったら、現場作業だけというわけにもいかなくなるよ。
 現場から帰ってきたら、事務作業というのも多いしな。」

「そういえば、犬尾沢さんは、俺が帰るときはまだ事務作業していますよね。」

「ああ、現場を抱えると事務ばっかり。俺だって現場に出るほうが好きだよ。
 お前も資格をとって、早く代わりをやってくれ。」

「えー、現場だけでいいです。」

「お前はまだ若いんだから、やっていけるよ。
 そのうち、現場を振ってやる。覚悟しておけ。」

「まじっすか。」

そんな話をしていると、現場に着いたのでした。

「よし、この倉庫を取り壊していくんだが、建物はブレーカーを使うとして、猫井川は土間コンを壊していってくれ。」

「今日は久しぶりの現場なんですけど、コンクリートハンマはブルブルするからあんまり好きじゃないですよね。」

「今回はちゃんと防振手袋を持ってきただろ?」

「ええ、一応持ってきました。」

「だったら大丈夫だろ?じゃあ、今回も前やってもらった時みたいに何箇所かあるから、よろしく。」

「はい。じゃあ、始めちゃいます。」

そうして猫井川は、手袋、防じんマスクとゴーグルを着けると、コンクリートハンマを構えたのでした。

ガガガッと大きな音を立て、コンクリートの土間が少しずつ削れていきます。
削れ、ヒビが入り、大きな固まりがゴロッと剥がれます。

「おう、あんまりブルブルしなくていい感じ。」

手袋のあるのとないのでは、体に受ける振動が大きく異なります。

「いいね。いいね。どんどんいけるね。」

作業が進むにつれて、調子に乗ってきます。

「よし、どんどん行こう。」

猫井川は、久々の現場で張り切っていたので、どんどん仕事を進めていきます。

早々に1つ目の土間を取壊すと、コンクリートハンマを担ぐと、2つ目の土間に向かった時でした。

「猫井川!危ない!」

犬尾沢の大声に、ハッとし、立ち止まる猫井川。
立ち止まる猫井川の直ぐ目の前を、ブレーカーのアームが通りすぎたのでした。

「バカ野郎!ブレーカーの近くを歩くんじゃない。
 周りをよく見ろ!」

「す、すみません。」

どうも、倉庫での一人作業が続いていたせいでしょうか、周りの様子が見えていなかったようでした。

「重機が側にあるときは、注意しなきゃダメだろうが。
 現場を離れていたら、そんな初歩的なことも忘れたのか!」

犬尾沢の説教が響きます。

「ああ、こういうのも久しぶり。」

久々の雷にシュンとしつつも、ちょっと嬉しい猫井川。
とはいうものの、一歩間違えれば、ブレーカーにひかれていたかもしれません。

そのことを思い返すと、ブルっと震えた猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は、猫井川が久しぶりに現場に行って遭遇したヒヤリ・ハットです。

猫井川はコンクリートハンマを使った作業が苦手です。どうも振動でブルブルするのが好きじゃないようです。
このエピソードは、こっちの話で書きましたね。

猫井川、コンクリートハンマにブルブルす

前回の反省をちゃんと活かし、防振手袋を装着しているので、もう大丈夫のようでしたが、思わぬミスがあったようです。
現場をしばらく離れていたからでしょうか、重機が側を走っていることが頭から離れていたようです。

現場を離れていたと行っても、1週間程度なのに、そんなに頭から抜けてしまうのか。
それだとあまりに猫井川が心配になってしまいます。

猫井川がブルっとしなくとも分かるように、重機に接触すると大怪我になります。
相手のほうが何倍も大きく重いからです。引かれてしまうと、死んでしまいます。

作業場では人と機械が動いていることが多いのですから、周りを見ることは基本中の基本と言えます。

それでは、ヒヤリハットをまとめます。

ヒヤリハット ぼんやりと作業所を歩いていたら、重機に接触しそうになった。
対策 1.作業場は周辺をよく見る。
2.誘導者がいれば、誘導者に従う。

猫井川も久しぶりの現場です。そろそろ倉庫作業から、現場作業に戻ってきてもよさそうです。

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