墜落・転落○事故事例アーカイブ

重機ごと崖下転落、羽後町の男性死亡(秋田県湯沢市)

entry-483

ショベルカーなどの建設重機は、足回りがクローラータイプ、いわゆるキャタピラのようになっているものが多いです。
こういった足回りだと、舗装されていない場所でも自由に動き回ることができます。場合によっては、山の斜面で作業することもあります。

そういった整備されていない場所でも動くことができるのと、少々の斜面なども物ともしないので、崖や路肩ギリギリまで近づくこともできます。かなり無茶な使い方もできますが、当然限界もあるので、崖に車体をはみ出しすぎてしまうと、転落しかねません。

崖に落ちてしまうと、重機の車体は大きく思い分、救出は困難を極めてしまいます。

秋田県湯沢市では、重機が崖から落下するという事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。 重機ごと崖下転落、羽後町の男性死亡 湯沢の山林 (平成27年10月17日)

17日午後1時55分ごろ、秋田県湯沢市の山林で、作業道の造成、整地作業をしていた会社員が操縦していた重機ごと道路脇の崖下に転落した。斜面が急なため救出作業は難航、約23時間後の18日午後1時ごろ重機から救出したが、その後、死亡が確認された。死因は多発性外傷の疑い。

湯沢署によると、被災者は17日午前8時半ごろ、同僚6人と作業を開始した。被災者の乗っていた重機が見当たらなくなったため、同僚らが捜索。道路から約20メートル下の崖で、逆さまになった重機が立木で止まっているのをみつけ119番した。

消防などによる救出作業の途中、被災者を乗せた重機はさらに50メートルほど落下。18日午後1時ごろに重機から助け出した際、被災者 は既に心肺停止状態だった。同署が事故原因を調べている。

秋田魁新報社

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「地山(斜面)」です。

この事故は、山間部で作業道を作っていた時に起こりました
作業道作りですので、元々道がないところです。あるのは土と木だけです。そこを切り開き、道を均している最中の事故でした。

元々道無き道ですので、通行できる場所と崖との境界がはっきりしていなかったのかもしれません。 重機(おそらくショベルカーか不整地運搬車)は、限界まで崖に近づき、バランスを崩して崖下に落下してしまいました。

重機は木に引っ掛かっていたようですが、山の中で大きな車体を引き上げるのは困難を極めました。 救出作業中に、一度車体はさらに崖下へと落下してしまったのでした。

重機に乗っていた運転者は、救出された時には心肺停止状態で、その後死亡が確認されました。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この事故は崖から重機が落下したことです。
直接的な原因は、車体が崖に近づきすぎたことでしょう。ショベルカーや不整地運搬車の足回りは、不整地でも自由に動くことができます。その自由さが、場合によっては、危険ギリギリまでの接近を許してしまうのです。

実際のところ、クローラー(キャタピラ)の5分の1から3分の1までが道路からはみ出し、宙に浮いていても、動じません。もちろん地形や地面の状態などにもよりますので、過信できないのですけども。

過信か、目測を誤ったのか、いずれにせよ車体は崖にはみ出しすぎたのです。

この作業場では、これ以上崖に近づかないといった表示がなかったのかもしれません。また作業計画の段階で、走行ルートが定められていたり、崖に近づき過ぎないように監視する人を定めるなどの対策がなかったのではないでしょうか。

墜落や転落は、足場などの高所作業だけで起こるものではありません。
重機に乗っていても起こります。崖がすぐ側まで迫っている場所では、どこが限界線なのかを、はっきり示しておくことが大事です。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

重機で崖に近づきすぎたこと。
作業計画で走行ルートが定められていなかったこと。
崖に接近限界線の表示がなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

道と崖の境界が曖昧なところでは、どこまでなら近づいてもよいのか、はっきりさせる必要があります。

作業計画を作る段階では、現場を調査し、走行ルートを定めておきます。
計画を立てていても、現場では計画通り行かないことも多いです。そのため、現場でも崖に近づき過ぎないような対策を行わなければなりません。

現場でできることは、これ以上は進入してはならないという限界線を決め、運転者にも分かるようにしてやることです。
カラーコーンとバリケードを置いておくと、分かりやすいのではないでしょうか。

またカラーコンだけでなく、監視する人、合図する人を置いておくこともできます。
崖の方向に後進となると、どこが限界とかわかりづらいので、誘導したり合図する人は、大事です。

作業計画と現場での対応が、このような事故を防ぐために大事です。

対策をまとめてみます。

現地調査し、作業計画で走行ルートを決める。
崖の限界線を明示する。
合図者を決め、誘導させる。

土木工事は、厳しい環境や条件で作業することがあります。それだけ事故になりやすいともいえます。 崖に近づきすぎることは、転落するだけでなく、崖崩れも引き押しかねません。

どのような危険が現場にあるのかを事前に調査し、安全に重機を扱うにはどうすればよいかを考えることは、厳しい環境での作業では重要な事ですね。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第155条
車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、調査結果を元に作業計画を定めなければならない。
第157条
車両系建設機械を用いて作業を行うときは、転倒防止のための措置をとらなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。 安全に車両系建設機械を使用するための措置

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA