フォークリフト○事故事例アーカイブ

フォークリフトに「激突され」る事故2

entry-311-1

フォークリフトによって、ひかれる事故について、もう1つ紹介します。

今回も、厚生労働省労働事故事例を参考に、フォークリフトが人に衝突する事故、つまり「激突され」をまとめます。

労働事故事例

index_arrow 「激突され」ケース2 フォークリフトで運搬作業中、作業者に激突
本災害は、印刷工場において、製本された本をフォークリフトを用いて運搬している際に、バック走行で作業を行っていたため、運転者が進路上にいた被災者に気付かず、被災者がフォークリフトにひかれ、死亡したものである。

本災害の発生した事業場は、印刷工場内における本の結束や運搬、印刷用紙の運搬などを主たる事業としており、印刷会社から、これらの構内作業を請け負っていた。

(中略)

労働災害の発生当時、作業者Aは、フォークリフト(最大荷重1.8トン)を運転し、製本の終えた本を2階のエレベータからプラットホームまでバック走行で運搬していた。

一方、被災者Bは、現場パトロールを行っており、本のはい(高さ約2.5m)の脇からフォークリフトの走行路上に出てきて、その場所で、落としたカッターナイフを拾おうとしていたが、Aの運転するフォークリフトと激突し、フォークリフトの下敷きになり死亡した。

なお、Aは、最大荷重が1トン以上のフォークリフトの運転の業務に従事するために必要な技能講習を修了していなかった。

事故事例ファイルNO.547

この事故の型は「激突され」で、起因物は「フォークリフト」です。

フォークリフトをバックで走らせていた時に、進路上でカッターナイフを落とした作業者をひいてしまったという事故です。

この作業場にも事故を引き起こす原因があったようです。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

事故概要の最後に触れられていますが、自動車の運転免許と同様に、フォークリフトを運転するには資格が必要です。
積載荷重が1トンを境として、1トン未満の場合は特別教育を修了しなければなりません。
1トン以上の場合は、技能講習を受講しなければなりません。

フォークリフトは実は無資格で運転させている事業場も、少なくないのではないでしょうか。
以前、労働基準監督署の方の講演を聞いたところ、事業場巡回で無資格運転の発見は、非常に多いそうです。

フォークリフトは自動車を運転して、少し練習すれば乗ることができます。
資格をとるには、数万円の受講費と3日程度の講習が必要になります。
そのため、無資格運転が跡を絶たないようです。

この事故でも、運転者は無資格でした。

そして、事故が起こった状況から見てみると、フォークリフトの運行ルートと歩行者の通路が一緒になっていたことも、問題のようです。
少なくとも歩行者通路は分けておかないと、うかうか立ち止まることもできません。

さらに、運転者、歩行者ともに周囲への注意が不十分でした。
フォークリフトの運行には、作業指揮者に指揮させることになっていますが、指揮者も不在でした。

危険に対する認識が、不十分なままの作業が事故になったと考えられます。

それでは、原因を推測してみます。

歩行者通路とフォークリフト走行路の区別がなかったこと。
作業指揮者が不在だったこと。
安全意識が低かったこと。
運転者が無資格だったこと。

無資格運転などは、この事業者だけではないでしょうが、不適切な配置は事業者が責任を問われます。

index_arrow 対策の検討

フォークリフトなどと一緒に仕事をする場所では、接触事故を防ぐ対策が必要です。
その1つが歩行者通路を明確にすることです。

また、フォークリフトなどの走行路に入る必要がある場合は、周囲の確認をするのはもちろん、横断する箇所を決めるなどのルール付けも必要です。
予算があるなら、横断歩道を設け、信号をおいてもいいかもしれません。予算があればですが。

ルール付けと、徹底には予算はいらないので、こちらはどこでもできますね。

作業員の安全意識を高めるため、教育を行うことが重要です。
教育の中には、資格の取得も含みます。
さらに、フォークリフト運転時には、必ず進行方向の確認するなど、細かく明文化して、理解させることが大切です。

またフォークリフトの運行には、作業指揮者を設けなければなりません。
人と機械が激しく行き交う場所では、全体を把握する人が必要です。
指揮者は、安全な運行を行なうために必要になるのです。

対策をまとめてみます。

作業者とフォークリフトの通路を区分する。
安全教育を行い、安全ルールを定め、徹底する。
作業指揮者に指揮させる。
フォークリフトは有資格者が運転する。

フォークリフトは、事務仕事でなければ、かなり身近な機械です。 ちょっと練習すれば、すぐに乗れてしまいます。

しかし事故の大きさは、自動車と同様に酷いものになりかねません。

資格を取らせるのは、それなりに理由があります。 中には「資格なんて協会の利権だ!」などと、反発する気持ちも分からなくはないですが、正しい理解は事故防止になるのも事実。

身近なものほど、危険意識は薄くなりますが、実は恐いのだと理解しておく必要があります。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。 上記に出ている文は、割愛。

【安衛則】

(特別教育を必要とする業務)
第36条
特別教育を必要とする、有害業務は次の通り。

5)最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転

こちらの条文の解説は、こちら。 安全衛生教育と有資格作業1 「特別教育」

第151条の3
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、あらかじめ作業場所を調査し、作業計画を作成し、作業すること。
第151条の4
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、作業の指揮者を定めて、指揮させなければならない。
第151条の7
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、接触するおそれのある場合は、誘導者を指名し、誘導させる。
第151条の8
車両系荷役運搬機械等について誘導者を置くときは、一定の合図を定めなければならない。

これらの条文の解説は、こちら。
安全に荷役運搬機械を使用するための措置

【安衛令】

(就業制限に係る業務)
第20条
就業制限のある業務は、次のとおりとする。

11)最大荷重が  1トン以上のフオークリフトの運転の業務

こちらの条文の解説は、こちら。 安全衛生教育と有資格作業2 「就業制限のある業務」

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