○安衛法と仲良くなる酸欠危険作業

潜函作業。高圧で、酸欠危険の作業場

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地上で仕事する場合気にしないことでも、場所が変われば注意しなければならないこともあります。

トンネルの中や地下室、ボイラーの内部などは閉鎖された特殊な作業場といえます。
このような場所では、酸素が不足するなどの危険がつきまとい、その対策を行わなければなりません。

このように特殊な作業場の1つに、潜函があります。

潜函とは、地下水の多い地中や水中で作業を行うための、作業空間のことです。
地中や水中にぽっかり穴を開けることになるのですから、常に浸水する危険があります。

浸水しては作業になりません。
そのため、作業場をコンクリートの壁で囲い、内部は高い圧力をかけます。
内から外への圧力によって、作業場に水が浸水しないようにしているのです。
つまり、潜函とは、地中や水中で行う、高圧力下の作業のことです。

潜函は、ビルや橋などの基礎工事で行われます。

潜函は、高圧力下での作業なので、人体への影響は大きいです。

最も注意すべきことは、潜函病と呼ばれるものです。
これは潜水病と似たようなもので、高圧状態から急に地上に出ると、体調不良を起こしてしまうものです。

そのため潜函作業では、減圧室などが設けられ、圧力に体をならしてから、作業場の出入りを行います。

このように潜函作業では、注意すべきことがあり、そのためのきまりもあるのです。

規定については、安衛則にまとめられています。

【安衛則】

第3款 潜函内作業等

(沈下関係図等)
第376条
事業者は、潜函又は井筒の内部で明り掘削の作業を行うときは、
潜函又は井筒の急激な沈下による労働者の危険を防止するため、
次の措置を講じなければならない。

  1)沈下関係図に基づき、掘削の方法、載荷の量等を
   定めること。

  2)刃口から天井又ははりまでの高さは、1.8メートル以上と
   すること。

潜函作業は、コンクリートですっぽりと蓋をする形になります。
ちょうどコンクリートのコップをひっくり返したような形です。

注意しなければならないのは、常に上からコンクリート部屋の荷重を受けているので、急激に沈んでしまうことです。

そのため、コンクリートの急激な沈下を防ぐための措置をとらなければなりません。

急激な沈下を防ぐために、掘削作業の方法や荷重などを決めます。
地質によって、荷重を受けて、どれくらいの沈下があるかの資料を用い、これらの事を決めます。

仮に沈下が起こった場合にも備えるように、コンクリートの底から天井までの高さは、1.8メートル以上は確保しておきます。

ほんの少々、男性の平均身長より高いくらいのものなので、実際は2メートル程度は、高さを確保してくのがよいでしょう。

(潜函等の内部における作業)
第377条
事業者は、潜函、井筒、たて坑、井戸その他これらに準ずる
建設物又は設備(以下「潜函等」という。)の内部で明り掘削の
作業を行うときは、次の措置を講じなければならない。

  1)酸素が過剰になるおそれのあるときは、酸素の濃度を
   測定する者を指名して測定を行わせること。

  2)労働者が安全に昇降するための設備を設けること。

  3)掘下げの深さが20メートルを超えるときは、当該作業を
  行う箇所と外部との連絡のための電話、電鈴等の設備を設けること。

2 事業者は、前項の場合において、同項第1号の測定の結果等に
  より酸素の過剰を認めたとき、又は掘下げの深さが20メートルを
  こえるときは、送気のための設備を設け、これにより必要な量の
  空気を送給しなければならない。

潜函内部の作業では、安全に作業ができる措置を取らなければなりません。

圧気工法での作業なので、最も注意すべきは高圧への対処です。
これは、高圧則などで別途規定されているので、ここでは割愛されています。
安衛則に書かれていないから、気にしなくてもよいというものではないので、注意して下さい。

潜函内部は、閉鎖されて空間なので、圧力の他に気にすべきことは、酸素です。
常に酸素濃度が18%を越える状態でなければなりません。

そのため、酸素濃度の測定を行うものを指名し、責任をもって測定に当たらせます。

潜函は地下や水中ですので、地上より下っていかなければなりません。
昇り降りするためには、昇降設備が必要ですので、これを安全に行えるものを備えます。
ハシゴや階段だけでなく、深い場所であれば、エレベーターも使われます。

地下での作業なので、もし何か事故や怪我人が出た場合は、すぐに地上に連絡が取れるようにしておきます。
地下20メートルを越える深さで作業を行う場合は、電話などの連絡設備を設けます。

酸素濃度の測定を行い、これに異常があった場合の備えも必要です。
酸素濃度が21%よりも高くなったりすると、それはそれで危険になります。人体だけでなく、発火しやすい状態になるのです。
また20メートル以上深い場所では、空気の自然循環は期待できません。
こういった場合は、必要な措置が必要なのです。

酸素濃度を調整するためには、適切な送風設備を設けます。
これによって内部で、仕事ができる環境を整えてあげることが重要なのです。

(作業の禁止)
第378条
事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、潜函等の
内部で明り掘削の作業を行なってはならない。

  1)前条第1項第2号若しくは第3号又は同条第2項の
   設備が故障しているとき。

  2)潜函等の内部へ多量の水が浸入するおそれのあるとき。

危険な面もある潜函作業では、場合によって作業の禁止も行わなければなりません。

まず設備に故障など不具合があれば、対応するまで作業は禁止です。
これは第377条で規定されている設備の内、1つでも不具合があった場合になります。
つまり、昇降設備、外部との連絡設備、送風設備が正常に稼働している場合のみ、作業ができるのです。

また圧力をかけているにもかかわらず、内部に水が侵入する場合です。

水が流れ込んでは、仕事になりませんし、溺れてしまいます。
即刻中止して、避難させなければなりません。

作業は、これらの状態が解消してから再開になります。

潜函作業は、特殊な作業場になるので、注意すべきことが多々あり、最大限の準備が必要です。

特に圧力と酸素に関しては、細心の注意を必要とします。

長い時間作業はできません。
適度に休憩をはさみながらの作業です。

このような場所なので、しっかりとした対応が求められるのです。

まとめ。
【安衛則】

第376条
潜函又は井筒の内部で明り掘削の作業を行うときは、潜函又は井筒の急激な沈下による労働者の危険を防止するため、必要な措置をとらなければならない。
第377条
潜函、井筒、たて坑、井戸その他これらに準ずる建設物又は設備の内部で明り掘削の作業を行うときは、安全に作業できる措置をとらなければならない。
第378条
潜函内に水が溜まっている等の場合は、の内部で明り掘削の作業を行なってはならない。