○安衛法と仲良くなる高所作業・足場

通路と足場 その2。危険な場所の足場といざという時の避難路。

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普段の職場、工場や事務所などの通路は、障害物などがない限り、危ないこととは少ないです。

しかし、場所によっては、一歩足を踏み外すと危険な場所に通路を設けなければならないことがあります。

蜀の桟道というのは知ってますでしょうか?
今から2000年ほど前、中国の三国時代に蜀の諸葛孔明が、魏に侵攻するために設けた道です。
岸壁に沿って何百キロも道を作る。途方も無いことです。

とてつもない人員と時間をかけて、参道を作ったのは、戦略上もありますが、他に迂回路がなく、道を作らなければならなかったからでしょう。

時として、危険な場所を通行しなければならないこともあるのです。
蜀の桟道が作られてから、2000年経た今の仕事でも、同じ状況があるのです。

今回は危険な場所の通路と、危険な場所での足場と避難通路についてです。

引き続き、安衛則からです。

【安衛則】

(作業踏台)
第545条
事業者は、旋盤、ロール機等の機械が、常時当該機械に係る
作業に従事する労働者の身長に比べて不適当に高いときは、
安全で、かつ、適当な高さの作業踏台を設けなければならない。

工場で使用する機械で、旋盤やロール機など、回転体に人を巻き込んでしまう恐れのある場所を通行する場合のことです。

機械によっては、背の高いものがあり、作業者の目線の位置に回転体があるものがあります。
このような機械では、材料を持ち上げて、機械に取り込むなどを行わなければなりません。

持ち上げる作業は、負担になりますし、見上げる視線や、持ち上げ時に目線を遮ることがよろしくありません。

そのため、なるべくなら目線は下にして、作業姿勢も楽な方が安全です。

そのため、背の高い機械付近で仕事をする場合は、適当な高さの作業踏台を設けます。
作業者の負担や危険を防がなければなりません。

(危険物等の作業場等)
第546条
事業者は、危険物その他爆発性若しくは発火性の物の製造
又は取扱いをする作業場及び当該作業場を有する建築物の
避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)には、
非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる
2以上の出入口を設けなければならない。

2 前項の出入口に設ける戸は、引戸又は外開戸でなければならない。

通路は普段の仕事の時に、使用するものばかりではありません。
普段は使わないけれども、他の通路と同様に物を置かない、常に使える状態としなければならないものもあります。

それは、避難通路です。

避難通路なので、火事や地震などのいざという時に使う通路です。

ホテルや旅館など、宿泊施設では必ずどこが避難路、つまり非常口かの案内はありますよね。
これは宿泊客向けのものです。

ホテルなどと同様に、職場の作業者のための避難路も確保することが義務付けられています。

特に、危険物や爆発物を扱う、発火しやすいものを扱う場合は、火事や有毒物の充満などがあるので、避難通路を確保しなければなりません。
そして、1階の避難口は、2つ以上の出入口が必要です。

出入口の扉に関しても規定があります。
引き戸若しくは外開き戸としなければなりません。
引き戸は分かりますが、開く方向にもきまりがあるんですね。

なぜ外開きなのでしょうか?
それは、避難時急いでいる時の行動ですから、外開きだと、扉を開くと同時に外に出るアクションが取れます。

仮に内開きだと、扉を開けるスペース確保のため、一度体を後ろに引かなければなりませんね。
これはタイムロスです。
緊急事で、このタイムロスは命取りになります。
また人がたくさん押し迫っていたら、身を引くスペースを確保することもできないかもしれません。

避難通路の確保は、緊急時に命を守ることになるので、とても大切ですね。

第547条
事業者は、前条の作業場を有する建築物の避難階以外の階に
ついては、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の
直通階段又は傾斜路を設けなければならない。
この場合において、それらのうちの1については、すべり台、
避難用はしご、避難用タラップ等の避難用器具をもって
代えることができる。

2 前項の直通階段又は傾斜路のうち1は、屋外に設けられた
  ものでなければならない。
  ただし、すべり台、避難用はしご、避難用タラツプ等の
  避難用器具が設けられているときは、この限りでない。

避難路についての補足です。

もし火事など避難する必要が出た時、1階にいたならば、すぐに外に出れますよね。
しかし、2階やそれよりも上の階にいた場合は、そう簡単にはいきません。

火事や地震では、エレベーターも機能しないこともあります。
だからといって、窓から飛び降りるわけにもいきませんね。

2階以上の階では、1階への直通の階段や傾斜路などの避難経路を2つ以上設けなければなりません。

傾斜路とは何でしょうか?
わかりやすいのは、窓から地上へとつなぐ滑り台ですね。
避難訓練などで見たことがあるのではないでしょうか?

もしくはハシゴやタラップなどがあります。

しかし滑り台だけ、ハシゴだけというのはダメです。
必ず1箇所は、非常階段がなければなりません。

非常階段は、よく建物の外についていますね。

これらの避難設備ですが、非常階段はともかく、高層マンション等になると、窓から滑り台というのは不可能です。かといって、タラップなどを備えたとしても、落下する危険性があります。

この対策として、ワイヤーロープに繋がれたベルトを着用して地上まで降りる緩降機というのもあるそうです。

高層ビルでは、ほぼエレベーターでの縦移動のため、防災設備については、細心の注意が必要ですし、そこで働く人も、緊急時にはどのように避難するのかは意識しておかなければなりません。

第548条
事業者は、第546条第1項の作業場又は常時50人以上の
労働者が就業する屋内作業場には、非常の場合に関係労働者に
これをすみやかに知らせるための自動警報設備、非常ベル等の
警報用の設備又は携帯用拡声器、手動式サイレン等の警報用の
器具を備えなければならない。

これも緊急時の設備です。
避難させることは大切ですが、何かが起これば、まず知らせることが大切です。

危険物や爆発、発火性の物を扱う場所や常時50人以上が働いている場所では、有事の際、すべての人に知らせるための自動警報設備や、非常ベルを設けます。

火災警報器などは、家庭でも設置しているので、馴染みがあるのではないでしょうか?

避難させるためには、まず知らせること。
この設備は非常に重要なのです。

(避難用の出入口等の表示等)
第549条
事業者は、常時使用しない避難用の出入口、
通路又は避難用器具については、避難用である旨の表示をし、
かつ、容易に利用することができるように保持して
おかなければならない。

2 第546条第2項の規定は、前項の出入口又は通路に
  設ける戸について準用する。

非常口や非常階段、避難器具などは、普段は気に留めなくとも、いざという時にはっきりと分かるものでなければ、効果がありません。

非常口や避難器具の保管場所は、それがはっきりと分かるように表示して、常に使える状態を保たなければなりません。

非常口などは、緑に照明で転倒していますよね。
あの表示は、一般の電気系統から切り離されて、電池で光っています。
火事などで、電気の供給が止まっても、灯り続けるようにです。

もし電池が切れたりしたら、すぐに交換しなければなりません。
電灯が消えたままにしておくと、必要な時に、わからなくなりますよね。

避難時、多くの人はパニックになっています。
普段なら足元のちょっとした障害物や段差は避けられても、非常時はそんな余裕はありません。

避難路が塞がっていたら、救える命も失わてしまいます。

雑居ビルなどで、お店の備品を非常階段に置いていたところ、火事の時、避難できずに多数の客が亡くなったという事故もありました。

お店であれば、お客さんの安全の確保も大事ですが、同様に授業員の避難も大事なのです。

事業者は、緊急事態に備えておく義務があります。

有害物の漏えいや、火事、地震はいつ起こるかなど、誰にも予測ができません。

有害物や発火物、引火性の高いものを扱っている職場では、常にすみやかに安全に避難ができるようにすることが大事です。

備えあれば、多少は憂いを軽くできる。
損害は出てしまうかもしれませんが、少なくとも作業する人たちの命は確保しなければなりません。

まとめ。

【安衛則】

第545条
旋盤、ロール機等の機械作業に従事する労働者の身長に比べて不適当に高いときは、安全で、適当な高さの作業踏台を設けなければならない。
第546条
危険物その他爆発性若しくは発火性の物の取扱いをする作業場には、非常出口を2以上設けなければならない。
第547条
前条の作業場を有する建築物の避難階以外の階については、地上に通ずる2以上の直通階段又は傾斜路を設けなければならない。
第548条
常時50人以上の労働者が就業する屋内作業場には、非常ベル等の警報器具を備えなければならない。
第549条
常時使用しない避難用の出入口等は、避難用である表示をし、容易に利用することができるように保持しなければならない。