○安衛法と仲良くなる高所作業・足場

通路と足場。作業場の通路を安全に

汚部屋というものがあります。

部屋の中が物やゴミがごちゃごちゃと積み重なり、文字通り足の踏み場もないことを指します。

このような部屋だと、衛生的にどうかというのはありますが、単純に危ないですよね。
積み重なった服の下にハサミがあったり、割れたプラスチックケースがあったりすると、踏んだ時に怪我をしますね。
また物につまづいたり、滑ったりして、転けたりもします。

自分の部屋なのに、危険がいっぱいなのは、なんとも安らげない空間になってしまいます。

これは、仕事場でも同じなのです。

物が雑然としている、通路に物があふれているなどという仕事場は、ぶつけたり、転けたり、切ったりしやすいですし、場合によっては、もっと危険な事故を引き起こしたりします。

建設業や製造業、その他の業種にとっては、足元が雑然としていると、命にかかわることもあります。

実は、事故で最も多いものは「転倒」なのです。
転んで怪我というケースが非常に多い。

そして死亡事故で最も多いのが「墜落・転落」です。
これは高いところから落ちて亡くなるというものです。

どちらも、作業時の足元の不安定さ、不安全さが原因と言えるでしょう。

安全な作業を行うには、まずは足元から確保です。

これから何回かに分けて、通路や足場についての条文を取り上げていきます。

今回は、まずは通路の安全についてです。

通路や足場については、安衛則に規定されています。

【安衛則】

第10章 通路、足場等

第1節 通路等

(通路)
第540条
事業者は、作業場に通ずる場所及び作業場内には、労働者が
使用するための安全な通路を設け、かつ、これを常時有効に
保持しなければならない。

2 前項の通路で主要なものには、これを保持するため、
通路であることを示す表示をしなければならない。

何よりも大切なこと、全ての原則になることが、この条文です。

作業者が安全に行き来ができる通路を備えなければなりません。
そして、常に安全な状態を保持しなければなりません。

これは屋内であっても、屋外であっても同様です。

工場や倉庫であれば、作業する場所と通路ははっきりと区別します。
屋外の工事現場であれば、仮設で通路を設け、車両は立ち入らせないようにします。

特にここは導線となりますといった、本流の通路などは、掲示や看板を立てて、特に通路を空けておくようにします。

イメージは、道路です。
道路上に、障害物があると、車は走れなくなりますし、事故や渋滞を引き起こしますよね。

作業者、労働者の通路も同様なのです。

通路には物を置いたりしてはいけません。
ほんのちょっとの時間だから、という理由でもダメです。

常に何もない状態。これが大切なのです。

(通路の照明)
第541条
事業者は、通路には、正常の通行を妨げない程度に、
採光又は照明の方法を講じなければならない。
ただし、坑道、常時通行の用に供しない地下室等で通行する
労働者に、適当な照明具を所持させるときは、この限りでない。

これも安全な通路を確保するために大切なことです。

どんなに通路にものがない状態でも、真っ暗で見えなければ、歩くことさえままなりませんよね。

そのため、通路には通行するのに十分な照度、つまり明るさを確保しなければなりません。

明るさを確保するためには、窓から光を取り入れる、照明をつけるなどします。

ただし、普段使わないような場所で、その都度、懐中電灯などを使う場所では、特に必要ありません。

(屋内に設ける通路)
第542条
事業者は、屋内に設ける通路については、次に定めるところに
よらなければならない。

1)用途に応じた幅を有すること。

2)通路面は、つまずき、すべり、踏抜等の危険のない
状態に保持すること。

3)通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かないこと。

屋内、つまり工場や倉庫、事務所などで、通路を設ける場合には、特に注意しなければならないことがあります。

まず、通路の幅を確保すること。人が横向けで歩くようなのは通路とは呼べません。
人がすれ違えるだけ、少なくとも人一人が何もぶつからないで歩くことができる程度は確保しましょう。

つまづき、すべり、踏み抜きの危険がない状態にすること。
通路なのですから、常に障害物がない状態にしましょう。
屋内だと、通路にも物を置きがちですが、通路は通路として確保しましょう。

高さ1.8メートル以内に障害物は置かないこと。
物を空中に浮かして、1メートルから1.5メートルの間だけ、荷物を置くのは無理ですね。

これは物を置かないことはもちろんのこと、通路外の荷物もはみ出させないようにすることです。
ダンボール等を何段も重ねて、3段目くらいのが通路にはみ出すというのもダメですよということです。

(機械間等の通路)
第543条
事業者は、機械間又はこれと他の設備との間に設ける
通路については、幅80センチメートル以上のものと
しなければならない。

工場などでは、機械のすぐ側に通路があり、稼働しているすぐ横を歩くこともあります。
完全に接していると、機械によっては、通路を歩いているだけなのに、巻き込まれてしまうおそれもあります。

特にコンベアーなど回転体があると、怖いですよね。

通行時に巻き込まれないために、機械とは必要な距離を取ります。
距離を取るために、通路の幅は少なくとも80センチ以上としなければなりません。

機械を操作する人も、通行する人も安心して歩ける距離感が大切ですね。

(作業場の床面)
第544条
事業者は、作業場の床面については、つまづき、すべり等の
危険のないものとし、かつ、これを安全な状態に
保持しなければならない。

通路は常に安全に歩けなければなりません。
ここ言う安全にとは、恐る恐るではなく、何も心配なく歩けることです。

雪の日で、所々凍っているような場所を、一歩ずつ足場を確保しながら歩くようなことであってはならないということです。

そのためには、通路は常に障害物をなくし、ツルツルさせないようし、つまづいたり、転んだりしないような状態を維持しましょう。

職場での転倒事故を防ぐことは、通路の確保が重要です。

通路には1つも荷物を置かない状態とすることは、大切です。
もし1つ荷物が置かれ、これを許してしまうと、どんどん荷物に侵食されます。
最初の1つを防ぐことが大切なのです。

そして、通路は清掃し、清潔にすること。
つまづいたり、滑ったりする原因は、みんなで排除です。

4Sというのを聞いたことがあると思いますが、職場の中で通路は4Sが徹底されなければならない場所なのだと意識し、今一度自分の職場ではどうかなと確認してみてくださいね。

まとめ。

【安衛則】

第540条
作業場に通ずる場所及び作業場内には、安全な通路を設けなければならない。
第541条
通路には、正常の通行を妨げない程度に、照度を保たなければなららない。
第542条
屋内に設ける通路については、安全に保たなければならない。
第543条
機械間、または機械の側に通路がある場合は、幅80センチメートル以上のものとしなければならない。
第544条
作業場の床面については、つまづき、すべり等がないように保持しなければならない。