○安衛法と仲良くなる型枠支保工

型わく支保工を安全に行うための措置1(準備編)

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支保工とは、対象が崩れ落ちないように支え、形を保持するために行うものです。

掘削作業では、掘削断面が剥がれ落ち、土砂崩れを起こして、穴の中にいる作業者が巻き込まれないようにするために行います。

これを土の崩壊を防ぐ、土の進行を止めるので、土止め支保工と言います。

土以外にも、コンクリートの型くずれを防ぐための支保工があります。
これを型枠支保工といいます。

今回は、型枠支保工についです。

コンクリートは、今やあらゆる建築物、構造物に欠かせないものです。
ビルなどの建物はもとより、橋、トンネル、道路、河川の護岸、ダムなど、ありとあらゆる物はコンクリートで出来ています。

コンクリートは打設時にはドロドロとした流動状なのですが、時間が経つと固まります。
流動状なので、四角や丸、三角や柱状でも、任意の形に固めることができるのです。

コンクリートを形作るものは、型枠です。

型枠は、その名の通り、型にする枠です。
最終的な形に型を組み、その内部にコンクリートを流しこむことによって、特定の形にします。

コンクリートを打設する時には、注意が必要です。
型枠は堅固でなければなりません。

コンクリートによる内圧は、非常に強く、しっかり支えないとせっかく組んだ型枠は壊れ、コンクリートが流れてしまうこともあります。

こうなると、手のつけようがありません。
投げれでたコンクリートの回収に追われ、しかもそのコンクリートは固まるに任せざるを得ないのです。

どんあ小さな構造物でも、型枠を堅固に強力に組み立てる事が大切です。
そして、大きくなれば大きくなるほど、この型枠は堅固さが求められるのです。

大きな構造物や建物にコンクリートを打設する時、その内圧に耐えるために行うものが、型枠支保工です。
型枠を支えるための強力な仮設設備と言えます。

型枠支保工は、大量のコンクリートの圧力に耐える必要があるので、とても強い構造が求められます。
少しでも弱いと、大量のコンクリートが流出して、人が呑まれてしまうこともあります。

構造の基準がしっかり示され、守られないと危険な状態になるのです。

堅固な構造が求められる型枠支保工は、安衛則で規定されています。

型枠支保工は、大量のコンクリートを支えるものですが、必ず行う場所があります。
それは、天井、スラブを作る時です。

地につかない部分なので、下から支えなければなりません。
型枠支保工は、スラブを作る時には必ず行います。

それでは、安衛則の規定をまとめていきます。

【安衛則】

第3章 型わく支保工

第1節 材料等

(材料)
第237条
事業者は、型わく支保工の材料については、著しい損傷、変形又は腐食が
あるものを使用してはならない。

(主要な部分の鋼材)
第238条
事業者は、型わく支保工に使用する支柱、はり又ははりの支持物の
主要な部分の鋼材については、日本工業規格G3101(一般構造用圧延鋼材)、
日本工業規格G3106(溶接構造用圧延鋼材)、日本工業規格G3444
(一般構造用炭素鋼鋼管)若しくは日本工業規格G3350
(建築構造用冷間成形軽量形鋼)に定める規格に適合するもの
又は日本工業規格Z2241(金属材料引張試験方法)に定める方法に
よる試験において、引張強さの値が
330ニュートン毎平方ミリメートル以上で、
かつ、伸びが次の表の上欄に掲げる鋼材の種類及び同表の中欄に掲げる
引張強さの値に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値となるものでなければ、
使用してはならない。

鋼材の種類 引張強さ(単位 ニュートン毎平方ミリメートル) 伸び(単位 パーセント)
鋼管 330以上 400未満 25以上
400以上 490未満 20以上
490以上 10以上
鋼板、形鋼、平鋼又は軽量形鋼 330以上 400未満 21以上
400以上 490未満 16以上
490以上 590未満 12以上
590以上 8以上
棒鋼 330以上 400未満 25以上
400以上 490未満 20以上
490以上 18以上

(型わく支保工の構造)
第238条
事業者は、型わく支保工については、型わくの形状、
  コンクリートの打設の方法等に応じた堅固な構造のものでなければ、
  使用してはならない。
第2節 組立て等の場合の措置

(組立図)
第240条
事業者は、型わく支保工を組み立てるときは、組立図を作成し、
  かつ、当該組立図により組み立てなければならない。
 
  2 前項の組立図は、支柱、はり、つなぎ、筋かい等の部材の配置、
    接合の方法及び寸法が示されているものでなければならない。
 
  3 第1項の組立図に係る型枠支保工の設計は、次に定めるところに
    よらなければならない。
 
    1)支柱、はり又ははりの支持物(以下この条において「支柱等」と
     いう。)が組み合わされた構造のものでないときは、設計荷重
    (型枠支保工が支える物の重量に相当する荷重に、型枠1平方メートル
     につき150キログラム以上の荷重を加えた荷重をいう。以下この条に
     おいて同じ。)により当該支柱等に生ずる応力の値が当該支柱等の
     材料の許容応力の値を超えないこと。
 
    2)支柱等が組み合わされた構造のものであるときは、設計荷重が
     当該支柱等を製造した者の指定する最大使用荷重を超えないこと。
 
    3)鋼管枠を支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の
     上端に、設計荷重の100分の2.5に相当する水平方向の荷重が
     作用しても安全な構造のものとすること。
 
    4)鋼管枠以外のものを支柱として用いるものであるときは、
     当該型枠支保工の上端に、設計荷重の100分の5に相当する
     水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。

(許容応力の値)
第241条
前条第3項第1号の材料の許容応力の値は、次に定めるところによる。
 
    1)鋼材の許容曲げ応力及び許容圧縮応力の値は、当該鋼材の
     降伏強さの値又は引張強さの値の4分の3の値のうち
     いずれか小さい値の3分の2の値以下とすること。
 
    2)鋼材の許容せん断応力の値は、当該鋼材の降伏強さの値
     又は引張強さの値の4分の3の値のうち
     いずれか小さい値の100分の38の値以下とすること。
    
    3)鋼材の許容座屈応力の値は、次の式により計算を行って
     得た値以下とすること。
 
     l÷i≦Λの場合
 
      бc=〔〔1-0.4{(l÷i)÷Λ}2〕÷ν〕F
 
     l÷i>Λの場合
   
      бc=〔0.29÷〔{(l÷i)÷Λ}2〕〕F
    
     (これらの式において、l、i、Λ、бc、ν及びFは、
      それぞれ次の値を表すものとする。
 
      l 支柱の長さ(支柱が水平方向の変位を拘束されているときは、
        拘束点間の長さのうちの最大の長さ)(単位 センチメートル)
 
      i 支柱の最小断面二次半径(単位 センチメートル)
 
      Λ 限界細長比=√(π2E÷0.6F)
      ただし、π 円周率
 
      E 当該鋼材のヤング係数(単位 ニュートン毎平方センチメートル)
 
      бc 許容座屈応力の値(単位 ニュートン毎平方センチメートル)
 
      ν 安全率=1.5+0.57{(l÷i)÷Λ}2
 
      F 当該鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の4分の3の値の
        うちのいずれか小さい値(単位 ニュートン毎平方センチメートル)
 
    4)木材の繊維方向の許容曲げ応力、許容圧縮応力及び許容せん断応力の値は、
     次の表の上欄に掲げる木材の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に
     掲げる値以下とすること。
 

木材の種類 許容応力の値(単位 ニュートン毎平方センチメートル)
曲げ
圧縮 せん断
あかまつ、くろまつ、からまつ、ひば、ひのき、つが、べいまつ又はべいひ 1,320 1,180 103
すぎ、もみ、えぞまつ、とどまつ、べいすぎ、又はべいつが 1,030 880 74
かし 1,910 1,320 210
くり、なら、ぶな又はけやき 1,470 1,030 150

    5)木材の繊維方向の許容座屈応力の値は、次の式により計算を
    行って得た値以下とすること。
 
     lk÷i100の場合 
 
      fk=fc{1-0.007(lk÷i)}

  (lk÷i)>100の場合
 
    fk=0.3fc÷{(lk÷100i)2}

  これらの式において、lk 、i、fc及びfk は、
  それぞれ次の値を表すものとする。

   lk 支柱の長さ(支柱が水平方向の変位を拘束されているときは、
      拘束点間の長さのうち最大の長さ)(単位 センチメートル)

   i  支柱の最小断面二次半径(単位 センチメートル)

   fc 許容圧縮応力の値(単位 ニュートン毎平方センチメートル)

   fk 許容座屈応力の値(単位 ニュートン毎平方センチメートル)

型枠支保工はコンクリートに負けてはいけないので、堅固な材料、構造であることが求められます。

もし材料が損傷していたり、変形していたり、腐食していたら、本来の力が発揮できません。

型枠支保工の材料は、損傷、変形、腐食がないものを使用します。
組み立てる前に、材料の点検をしっかり行いましょう。

材料には一部木材も使用しますが、強い構造とするならば、鋼材を使います。
鋼材を使用する場合、特に腹起しや切ばりなどの主要部については、十分な強度を持ったものを使用しなければなりません。

強度については、材質ごとにJIS規格や引張強さなどを満たさなければなりません。
詳しい数値については、条文の通りなのですが、あまり深入りはしないでおきます。

材料だけが強固でも、構造が悪ければ、何にもなりません。
構造もコンクリートの内圧に耐えられるほど、堅固な作りとしなければなりません。

型枠支保工では、何よりもしっかりとした作りがもとめられるのです。

型枠支保工は、あらかじめ組立図を作らなければなりません。
この組立図を元に、現場では組み立てていくのです。

組立図は、要は設計図なので、切ばりや腹起し、支柱、つなぎなどの各部材を位置や寸法、接続方法などが事細かに記されている必要があります。

組立図通りに、現場で組み立てていくのですから、現場作業にあたって疑問や不明な点があってはいけません。
しっかりと、現場作業者が理解し、作業できるものを作りましょう。

組立図の設計段階でも、最も気にしなければいけないことは、堅固な構造にすることです。

堅固にするために、材料や組み立て方、材料の数などが決定されてます。
構造物の形や大きさ、コンクリートの量に耐えられる、支柱や切ばりの数、位置などを事細かに計算して、決めるのです。

この構造設計が元に、組立図になり、最終的に現場で形作られるので、非常に大事なものです。

特に応力の計算は、しっかり行い、許容値以下にすることは重要です。

応力とは、物体の内部に生じる力の大きさや作用方向を表現するために用いられる物理量だそうです。要するに、コンクリートの内圧ですね。

このコンクリートの内圧に負けないような材料や構造を設計しなければなりません。

繰り返しますが、何を差し置いても、型枠支保工に必要なのは、堅固さと言えますね。

さて、組立図ができたら、次は現場で、実際に組み立てていきます。

今回も長くなったので、組み立て時の措置については、次回にまとめていきます。

まとめ。

【安衛則】

第237条
型わく支保工の材料については、著しい損傷、変形又は腐食があるものを使用してはならない。
第238条
型わく支保工に使用する支柱、はり又ははりの支持物の主要な部分の鋼材については、JIS規格のものなど、十分な強度を持ったものを使用しなければならない。
第238条
型わく支保工については、型わくの形状、コンクリートの打設の方法等に応じた堅固な構造のものでなければ、使用してはならない。
第240条
型わく支保工を組み立てるときは、組立図を作成し組み立てなければならない。
第241条
材料の許容応力の値は、必要な値を満たすこと。