建設従事者の安全と健康

エイジフレンドリーとは? |高齢労働者が活躍できる取り組みを解説

現代社会では、高齢労働者が安心して働ける環境作りが求められています。エイジフレンドリーとは、年齢に関係なく、すべての労働者が健康で安全に働ける職場を目指す取り組みです。特に高齢労働者に対しては、適切な職場環境の整備や安全教育の充実が重要となります。
 
本記事では、エイジフレンドリーの定義やその取り組み、背景となる社会的要因、事業者および労働者に求められる対応について詳しく解説します。また、エイジフレンドリー補助金の条件や、安全教育センターで実施する研修についても紹介します。

 

エイジフレンドリーとは?

高齢労働者とは、労働安全衛生法においては中高年労働者の定義はありません。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、高年齢者の年齢を55歳以上、中高年齢者の年齢を45歳以上と定めています。この定義に従い厚生労働省では55歳以上を高齢労働者としています。ただし実際の現場では、55歳はまだまだ現役、65歳以上の方も働かれているのが実情です。建設現場では、65歳以上の方について高齢労働者届けを求めていることが多いです。
 
エイジフレンドリーとは、年齢に関係なく全ての労働者が健康で安全に働ける職場環境を整備することを指します。特に高齢労働者に配慮した取り組みが重要です。
 
これには、作業環境の改善、安全衛生管理体制の強化、適切な労働時間の設定などが含まれます。エイジフレンドリーな職場は、高齢労働者がその経験や知識を活かしながら長く働ける環境を提供し、企業の生産性向上や人手不足の解消にも寄与します。

 

エイジフレンドリーへの取り組みには、補助金がある

エイジフレンドリーな職場環境を整備するための取り組みには、政府や自治体からの補助金制度が利用できます。これらの補助金は、高齢労働者が安全で快適に働ける職場作りを支援するために設けられており、企業が負担するコストの一部を軽減する助けとなります。
 
具体的には、以下のような取り組みに対して補助金が提供されることがあります。
 
職場環境の改善
高齢労働者に配慮した作業環境の整備に対して補助金が出ます。例えば、段差の解消や手すりの設置、照明の改善などです。これにより、高齢労働者が安心して働ける物理的な環境を整えることができます。
 
安全衛生管理体制の強化
安全衛生管理体制を強化するための設備導入や、専門家によるコンサルティング費用が補助対象となることがあります。これには、安全装備の導入や危険箇所の改善などが含まれます。
 
教育訓練の実施
高齢労働者を対象とした安全衛生教育やリスキリング(再技能習得)プログラムの実施に対する補助金があります。これにより、労働者が最新の知識と技術を身につけ、より安全に働けるようになります。
 
健康管理支援
高齢労働者の健康管理を支援するための取り組み(定期健康診断の強化や健康相談の実施など)に対しても補助金が提供されることがあります。
 
これらの補助金を活用することで、企業はエイジフレンドリーな職場環境を効果的に整備することができ、高齢労働者の安全と健康を守ることができます。
 
企業がこれらの補助金を活用する際には、申請手続きや条件を十分に確認し、適切に対応することが重要です。自治体に相談するか、もしくは補助金に詳しい方にご相談されると確実です。これにより、より効果的にエイジフレンドリーな取り組みを推進することができます。

 

エイジフレンドリーが求められている社会的背景

エイジフレンドリーな取り組みが求められる背景には、深刻な人手不足と高齢労働者の増加が挙げられます。少子高齢化により、労働人口が減少し、特に製造業やサービス業での人手不足が深刻化しています。さらに、高齢労働者の割合が増加し、彼らの経験や知識を活かすことが重要となっています。また、高齢労働者の労働災害も増加傾向にあり、安全な職場環境の整備が不可欠です。

 

深刻な人手不足

日本は少子高齢化が進行しており、労働人口の減少が深刻な問題となっています。特に製造業やサービス業では、若年労働者の確保が困難であり、人手不足が顕在化しています。このため、多くの企業が労働力の確保に苦労しており、生産性やサービスの質の低下が懸念されています。この状況に対処するためには、新たな労働力の確保が急務ですが、即戦力となる若年労働者の数は限られています。
 
そこで、高齢労働者の雇用が注目されています。高齢労働者は豊富な経験と知識を持っており、企業にとって貴重な戦力となります。高齢者の活用は、人手不足を補うだけでなく、企業の競争力を維持するためにも重要です。エイジフレンドリーな職場環境を整備することで、高齢労働者がその能力を最大限に発揮できるようになります。
 
また、高齢労働者の雇用促進は、社会全体の労働力不足の解消にも寄与します。高齢者が働き続けることで、年金や医療費の負担軽減にもつながり、持続可能な社会の実現に貢献します。企業はこのような社会的背景を理解し、高齢労働者が安心して働ける環境を整備することが求められています。これには、安全衛生管理体制の強化や職場環境の改善が含まれます。人手不足の問題を解決するためには、企業全体でエイジフレンドリーな取り組みを進めることが必要です。

 

高齢労働者の割合が増加している

日本の労働市場では、65歳以上の高齢労働者の割合が年々増加しています。この背景には、少子高齢化による労働人口の減少と、定年後も働き続けたいという高齢者の意欲が影響しています。総務省の統計によると、2023年には65歳以上の就業者数が過去最高を記録しており、今後もこの傾向は続くと見られています。
 
高齢労働者の増加は、企業にとって大きなメリットがあります。彼らは長年の経験と知識を持っており、これを活かすことで企業の競争力を高めることができます。特に、若年労働者にはない実践的なスキルやノウハウを持つ高齢労働者は、職場の教育や指導役としても重要な存在です。
 
しかし、高齢労働者の増加に伴い、職場環境の整備が求められます。高齢労働者が安心して働ける環境を提供するためには、物理的な作業環境の改善や柔軟な勤務体系の導入が必要です。具体的には、作業場の段差をなくし、手すりを設置する、視力に配慮した照明を設けるなどの対策が考えられます。また、健康管理の支援や定期的な健康診断の実施も重要です。
 
高齢労働者が増加する中で、企業はエイジフレンドリーな職場環境を整備し、彼らがその能力を最大限に発揮できるようにすることが求められます。これにより、高齢労働者が長く働き続けることが可能となり、企業全体の生産性向上や持続可能な成長に貢献することができます。
 
参考)厚生労働省:令和4年 高年齢労働者の労働災害発生状況

 

労働災害における高齢労働者の死傷者数が増加している

高齢労働者の増加に伴い、労働災害における高齢労働者の死傷者数も増加しています。これは、高齢労働者が身体的な衰えや健康状態の変化により、事故やケガのリスクが高まるためです。厚生労働省の統計によれば、60歳以上の労働者における労働災害の発生率は他の年齢層と比較して高く、特に死傷者数が増加傾向にあります。
 
この問題に対処するためには、事業者企業が高齢労働者に対して特別な配慮を行う必要があります。
 
事業者には、作業環境などへの配慮など、様々な取り組みを通じて、高齢労働者が安全に働ける環境を整備し、労働災害のリスクを最小限に抑えることが求められます。エイジフレンドリーな職場作りを進めることで、高齢労働者の安全と健康を守り、企業全体の持続可能な成長に寄与することが期待されています。

 

事業者に求められる取り組み

事業者は高齢労働者が安心して働ける環境を整備するため、以下の取り組みが求められます。まず、安全衛生管理体制の強化としてリスクアセスメントや安全装備の提供を行います。次に、職場環境の改善としてバリアフリー化や適切な照明の設置、休憩スペースの充実を図ります。また、健康状態に応じた柔軟な勤務体制や健康管理支援も重要です。最後に、安全衛生教育を徹底し、全労働者の安全意識を高めることが必要です。

 

安全衛生管理体制の確立等

高齢労働者が安心して働ける環境を作るためには、まず安全衛生管理体制を確立することが必要です。これには、職場内の潜在的なリスクを把握し、適切な対策を講じることが含まれます。
 
リスクアセスメントの実施
定期的にリスクアセスメントを実施し、職場に潜む危険箇所を特定します。高齢労働者に特有のリスクを考慮し、適切な予防策を講じます。例えば、足元の段差や滑りやすい床など、高齢者がつまずきやすい場所の改善が必要です。
 
安全設備・保護具の提供
働きやすい環境を作るために通路に手すりをつけるなどの設備改善を考えます。また安全靴なども、軽量でトゥーアップ(つま先が上向き)のものを提供するなども準備するとよいでしょう。
 
定期的な安全点検
作業現場の定期的な安全点検を実施し、危険箇所を早期に発見・改善します。これにより、労働災害のリスクを最小限に抑えます。

 

職場環境の改善

高齢労働者が快適に働ける職場環境を整えることは、安全性を高めるとともに作業効率を高めることになります。
 
バリアフリー化
施設内の段差を解消し、手すりやスロープを設置するなど、バリアフリーな環境を整備します。特に、足元への配慮を行います。
 
適切な照明の設置
足元までしっかり見えるように、作業エリアの照明を明るくします。法令では普通な作業では150lx以上の照度が必要なので、それを目安にするとよいでしょう。
 
休憩スペースの充実
休憩時間にリラックスできるスペースを提供し、労働者が疲労を回復できる環境を整えます。

 

高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応

高齢労働者の健康や体力の状況を常に把握し、個々の状態に応じた対応を行うことが重要です。
 
定期健康診断の実施
高齢労働者の健康状態を把握するため、定期的に健康診断を実施します。健康診断の結果を基に、適切な職務内容の調整を行います。
 
健康相談の提供
専門の医師やカウンセラーによる健康相談を提供し、労働者が健康上の不安を解消できるようサポートします。これにより、労働者の健康管理が強化されます。
 
体力作りの促進
高齢労働者の体力維持を支援するため、始業前に体操を行うようにするとよいでしょう。腰痛防止体操なども効果的です。

 

安全衛生教育の実施

高齢労働者を含む全ての労働者に対する安全衛生教育を徹底することが、職場の安全性を高める鍵となります。教育は高齢労働者だけでなく、管理者や一緒に働く作業員にも行い、理解を深めていくことが目的です。
 
定期的な教育訓練
労働者に対して定期的に安全衛生に関する教育訓練を実施し、最新の安全対策やリスク管理についての知識を提供します。
 
ポスターや掲示
作業場に段差などの注意事項を掲示するなどして、注意喚起します。注意表示は一目で分かるように、イラストと大きな字を用いるとよいでしょう。

 

労働者に求められる取り組み

労働者自身も安全で健康な職場環境を維持するために積極的に取り組む必要があります。まず、自分の健康状態を常に把握し、定期的な健康診断を受けることが重要です。また、安全衛生教育をしっかり受けることが必要です。
 
さらに、職場での安全ルールを厳守し、異常を感じた場合は速やかに報告することも大切です。

 

エイジフレンドリー補助金の条件とは?

エイジフレンドリー補助金は、高齢労働者が働きやすい職場環境を整備するために提供される政府の支援制度です。この補助金を受けるためには、いくつかの条件があります。
 
まず、補助金を申請する企業は、高齢労働者を一定数以上雇用していることが必要です。具体的な数は制度によって異なりますが、通常は65歳以上の労働者が一定割合を占めていることなどが条件となります。また、補助金の対象となる取り組みとしては、安全衛生管理体制の強化、職場環境の改善、教育訓練の実施などになります例えば、作業環境のバリアフリー化や、高齢者向けの安全装備の導入、健康診断や健康相談の提供などが対象です。

 

安全教育センターは出張講習による安全衛生教育を実施しています

高齢労働者が安心して働くためには、労働災害のリスクを正しく理解することが重要です。しかし、現場で働く多くの方は基本的な安全対策は理解しているものの、具体的なリスク管理や予防策については十分に知らない場合が多いです。そのため、現場で働く方だけでなく、管理職や監督者も労働災害のリスクについて深い理解を持つことが重要です。
 
なお、安全教育センターでは、安全衛生に関する教育を実施しています。
 
まずは、お気軽にご相談いただければと思います。労働災害のリスクを低減し、全ての労働者が安心して働ける職場環境を共に作り上げましょう。
 
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