衛生管理石綿・アスベスト

建築物石綿含有建材調査者は今後の需要が見込まれる資格です

石綿に関する法令が改正され、主なものが令和3年4月1日から施行されました。
 
 
この法改正に伴い、今後は建築物の解体、改修などで事前調査する方には、「建築物石綿含有建材調査者」という資格が必要となりました。この有資格者による調査の義務化は、令和5年10月1日からですが、もう一部の自治体などでは、先行して調査者に調査させる動きもあるようです。
 
今回は、私も先日受けてきた建築物石綿含有調査者講習について、書いてみたいと思います。
法改正の内容については、また別の記事でも触れるかと思いますが、まとめると次のとおりです。
石綿はとても使い勝手のよい鉱物です。
主な主な性質として、耐火性、断熱性、耐摩擦性、耐絶縁性、耐酸・アルカリ性があり、繊維状のため混合が容易て吹付け材に少し混ぜると定着しやすくなります。そして安価でした。
私は薄っすらとした記憶ですが、子どもの時にアルコールランプで使っていたと思います。
 
用途範囲は広く、多くの場合は建物の建材に使用されていました。
 
しかし石綿には一つ欠点があります。
それが健康障害をもたらすというものでした。石綿は鉱物ですが、繊維状にほぐれ、その1本1本が髪の毛の1000分の1といった細さです。当然目に見えません。これが呼吸とともに体内に入り、肺の奥、肺胞まで達し、刺さります。
そして数十年後に、肺がんや中皮腫などを発症させてしまうのです。
致命的な欠点です。
 
この致命的な欠点のため、1975年くらいから少しずつ規制され、現在は全面禁止になったのでした。
 
石綿は、2006(平成18)年9月から、製造・輸入・使用等が全面的に禁止されています。そのため現在は、研究目的に製造したり、使われる程度です。
 
しかし使用をやめても、石綿を含む建材を使用した建物は、なくなったりしません。
まだかなり存在しています。依然として、その建物に住み、働いているのです。
試算では、今後解体等の対象となるビルやマンションは、約220万棟あるといわれています。
ビルなどだけでなく、一戸建て住宅や倉庫を含めると、その数は数千万棟です。
 
誤解がないようにすると、石綿含有建材を使用した建物で生活や仕事をしても、心配はあるでしょうが、健康被害が出る可能性は低いです。問題は、老朽化した建物を解体や改修などを行うとき、解体作業を行う人が石綿にさらされることです。
解体によって大気に飛散させると、周辺の住民にも吸い込むリスクが出てきます。
 
石綿を飛散させないためには、建物の解体や改修の前に、除去しなければなりません。
 
どの建材に石綿が含まれているのか、また石綿が含まれていないのかを判断するには、専門的な知識が必要です。
 
この専門的知識をもって、調査に当たるのが、建築物石綿含有建材調査者なのです。
 
建築物石綿建材調査者の責任は重大です。
なぜなら、石綿含有について判定を誤ると、大きな損害につながるからです。
 
石綿が入っているのに、石綿なしと判定した場合、作業者や周辺住民が石綿を吸入し、健康被害をもたらします。
逆に、石綿が入っていないのに、石綿ありと判定した場合、解体等の施工業者は多大な処分費をかけることになります。
調査後は、調査者の名前入りで報告書を出します。そのため、判定の誤りは、調査者の責任になるのです。
 
石綿調査は、大きく2つの段階があります。
 
1 書面調査
2 現地調査
 
書面調査では、建物の図面などを読み解き、石綿が含有する建材を見つけます。
年代、石綿がよく使用される場所、使用されている建材名などから石綿含有を可能性を見つけます。
 
現地調査では、書面調査の結果を踏まえて、全ての部屋、全ての建材を確認します。
部屋の中だけでなく、天井裏やエレベーターシャフト等も含みます。また壁紙や床を剥がしたりもします。
建物は改修を行っていることも多いので、書面にはない建材などもありますので、これも調べます。
石綿含有の判断が難しい場合は、一部資料を採取して、分析機関で分析もします。この時、調査者自身も石綿を吸い込むリスクがあることを忘れてはいけません。
 
調査者には、石綿に関する深い知識とともに、建物に関する専門知識、建材に関する知識などが必要となるのがわかるでしょう。
 
建築物石綿含有調査者講習では、これらについて学びます。
そして最後に試験を行い、合格したら、資格が得られます。
 
建築物石綿含有調査者の資格は3種類あります。
 
・一般
・特定
・一戸建て
 
一般は2日間の講習と試験です。解体・改修等を行う全ての建物の調査を行うことができます。
特定は一般を持っている人が対象となり、実地と口述試験などもあります。
一戸建ては1日間の講習と試験です。一戸建て住宅と共用住宅の居住空間のみ調査を行うことができます。
 
現在のところ、一般の特定の作業範囲に区別はありません。
今後法改正で、区別が出てくると思われます。
 
講習を行っているのは、次の団体です。今後は増えると思います。
中災防・安全衛生教育センター(大阪)※東京は今後実施予定です。
 
私は環境科学対策センターと中災防で受講しました。
 
中災防は資格+インストラクター講習です。そのため受講料は他の団体より少し割高になっています。
 
今現在、講習が募集されると、あっという間に満席になりますね。
私が環境科学対策センターで申し込んだ時、募集が始まって1時間も経たないうちに席が埋まっていました。
 
今後は、建災防や都道府県労働基準連合会などでも、実施される予定です。
 
ちなみに、私が所属する安全教育センターでも実施します。
8月に仙台で一戸建てと一般を実施します。
東日本、東北にお住まいの方で、受講される方はチェックしてください。
 
 
私もインストラクター試験を受けたので、どこかで講師をやることもあります。
 
講習の中身ついてはともかく、気になるのが試験についてではないでしょうか。
結論から言うと、結構難しいです。
しっかり勉強しなれば受からないということです。
 
私が受講した、環境科学対策センターは、2日間講習を受け、その翌日が試験でした。
講習から試験まで間がないのですが、その代わり予習を求められました。
 
講習中寝ていたら、受かりません。
技能講習のレベルで考えると痛い目にあいます。しっかり講習を聞いて、復習してください。
 
特に、建築に関する知識は苦手とされる方が多いようです。
防火、耐火の違いや建材の種類、図面の見方など、分析機関の方など、建築に関わっていない方には難しいです。
例えば「矩形図」は何と読むでしょうか?
これが読めれば図面も大丈夫ですね。建築関係の方以外には難問ですね。
(こたえ「かなばかりず」)
 
建築に関する知識は、調査に必要な知識です。苦手に立ち向かいましょう。
 
一方で、建築関係の方は、石綿の分析に頭を悩まされています。
X線回帰分析や偏光顕微鏡、電子顕微鏡など馴染みのない言葉も多数出てきます。
 
難しい試験を突破した先には、大きな市場があります。
石綿含有建材調査者資格はスタートしたばかりです。
 
※正確には国交省の石綿含有調査者資格が平成25年からスタートしてます。石綿含有調査者をお持ちの方は、法改正により特定建築物石綿含有建材調査者とみなされます。
 
石綿含有物件に対して、調査者が全然足りていません。
試算では、20~30万人の調査者が必要とのことです。
 
調査者が少ないので、調査義務は令和5年10月1日と、2年後です。
今はとにかく調査者を増やすことに力を注いでいる状況です。
 
石綿に関しては、市場としても大きいです。
2017年では、年間で石綿除去に関して、市場規模が約2300億になったそうです。
 
 
調査はこの一部ですが、仮に5%が調査としてもかなりの市場と言えるのではないでしょうか。
 
今後は、専門の調査会社もできるでしょう。
講習受講にあたっては、資格も必要ですが、義務化されるまでに取得し、ノウハウを蓄えることは、大きなビジネスチャンスになるのではないでしょうか。
 

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