墜落・転落○事故事例アーカイブ

作業員転落、2人死亡 外壁に足場設置中(栃木県宇都宮市)

平成27年に足場に関して、法改正がありました。
詳細については、別の記事でも書いていますので、そちらも参考にしてもらいたいのですが、1つ大きなポイントとして、特別教育があります。

従来の足場の資格は、作業主任者の技能講習がありました。
足場を組んだり、解体するために資格はなかったのですが、法改正で変わりました。

組立解体などの作業を従事する全ての人が、特別教育を受けなければならなくなったのです。
これは経験、年齢、性別、国籍関係なしです。足場業務に携わる人全員が対象です。

足場組立解体時の事故があった場合、特別教育を受けていたかは、捜査ポイントになるでしょう。

栃木県宇都宮市で、足場組立中に事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

作業員転落、2人死亡 外壁に足場設置中(平成29年3月16日)

16日午後2時半ごろ、宇都宮市のビル4階部分で、外壁補修工事の足場を組んでいた足利市、会社員男性と、ベトナム国籍の技能実習生男性(36)が高さ約11メートルから転落し、全身を強く打ち間もなく死亡した。

宇都宮中央署によると、2人はビルの外壁補修工事作業をしており、事故当時は2人を含め男性4人で工事用の足場を組む作業をしていた。2人が転落した際、別の1人は近くの鉄パイプにつかまり、もう1人も転落を免れた。

同署は2人がどこから転落したかなど詳しい状況を調べている。

下野新聞

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「足場」です。

ビルの外壁補修のために、4名で足場を組み立てていたところ、作業者2名が墜落したという事故です。
墜落した高さは、ビルの4階付近、約11メートルからでした。

墜落したのは2名ですが、1名は単管に掴まって、転落を免れたようなので、何か大きなトラブルがあったと考えられそうです。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

少なくとも3名が墜落の危険に巻き込まれたので、作業者たちは、近接して作業していたことが考えられます。
その特に、全員を巻き込む何かしらトラブルがあったと考えられます。

記事からは伺えないのですが、足場全体が傾いたか、作業床が外れてしまったか、ネットを張り付けていた時、バランスを崩したかなどでしょうか。
事故後の写真を見ると、足場は自立していたので、足場ごと倒れたということはなさそうです。

足場全体は崩れなかったとはいえ、壁つなぎなどの補強が不十分で、揺れたり傾いたりした可能性もあるので、組立手順が適切でなかったのかもしれません。

そして墜落してしまったということは、作業中に安全帯などの墜落防止が不十分だったと考えられます。

足場の高さは少なくとも11メートルの高さはあったので、作業主任者が指揮をとらなければなりません。
作業主任者の職務には、安全帯などの保護具の使用状況の監視があるので、十分に果たせていなかったと思われます。

作業手順、作業中の墜落防止対策など管理体制に事故の原因があるのではないでしょうか。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

補強材設置の順番など、作業手順が
作業主任者の指揮が不十分だった。
安全帯の使用がされていなかった。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

足場は完成するまでは、不安定なものです。
不安定な場所であっても、補強材などを取付け、可能な限り安定させていくことが重要です。
補強材としては、足元の根がらみ、筋交い、壁つなぎなどがあります。これらの取付け順序を作業計画や手順書で確認しておくことが必要です。

作業前には、組立図や割付図に加え、作業手順や取付け手順も作っておくのがよいでしょう。

高さが5メートル以上の足場では、作業主任者を選任しなくてはなりません。
作業主任者は、安全に作業するための指揮監督を行います。作業者が安全帯を使用しているかの監視も職務になるのです。

作業者自身も安全帯を使用して作業するなどを徹底しなければなりません。
最終的に自分の身は自分で守る意識が大事なのです。

対策をまとめてみます。

作業手順や組付け順序を表した、作業計画を作成する。
作業主任者は、作業状況を監視する。
安全帯をする。

冒頭に特別教育について書いたのですが、特別教育でも保護具についての内容があります。
安全帯の不使用は教育内容が実行されていなかったとも考えられそうです。

また特別教育は、作業に従事するのであれば、外国籍の方も受講しなければなりません。
実際に私もベトナム籍や中国籍の受講生に足場の特別教育を行ったことがあります。幸い、話し言葉としては、日本語の理解があったので、日本語で講習は行いました。

教育機関によっては、英語や中国語で教育を行っているところもあります。
外国人実習生などを使用している会社は、このような機関の利用も検討してください。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第521条

高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合で、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

最も多い事故。墜落・転落事故の防止。

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