○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

保楠田、ポケットの中のレバーに驚く

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第122話「保楠田、ポケットの中のレバーに驚く」

初日、牛黒との連携でほんの少しゴタゴタしたことはありましたが、それ以外は問題なく終わりました。

片付けを行いながら、猫井川が

「鼠川さんは大丈夫ですかね?」

と、誰に言うとはなく、言いました。

「そうだよね。」

それに答えて、保楠田が言いました。

「本人は大丈夫と行ってますけど、ちゃんと病院に行ったんでしょうか?」

「あの人は病院とか好きじゃなさそうだもんね。
 でも、奥さんが許さないんじゃないかな。」

保楠田が苦笑いしながらいいました。

「帰ったら一度、電話してみますよ。」

猫井川がそう言いいつつ、片付けを終え、現場を後にしていくのでした。

事務所に戻り、事務処理を済ますと、猫井川は鼠川に電話をかけました。

コール音は5度、6度と繰り返し、留守番電話になりました。
猫井川は、まあいいかとも思い、メッセージを残さず、電話を切ったのでした。

電話を胸ポケットにしまうと、事務所を出ました。

その後、1人帰途を歩いていると、着信がありました。
携帯を見てみると、鼠川からでした。

「もしもし、お疲れ様です。」

猫井川が電話に出ました。

「電話もらったみたいだが、どうしてた?」

鼠川の声が受話器が聞こえてきました。

「ええ、どんな調子かなと思いまして。」

「そうか、帰ったら嫁さんに病院に連れて行かれたよ。
 骨とかには異常はないようだが、しばらくは安めと言われたよ。」

「そうなんですか。怪我とかではないんですよね。」

「ああ、それは大丈夫らしい。
 年だからな、したたか腰を打ったから、回復するのにも時間がかかるみたいだ。」

「そうですか。じゃあ、しばらく休みですね。」

「すまんが、そうなるな。
 ところで、牛黒はどうだ?」

「うーん、まあ大丈夫です。」

「そうか、あいつも悪いことはないんだが、少しうかつなところがあるからな。
 よく見ておくことだな。」

「そこまで、問題も起こらないと思いますよ。」

「まあ頑張れ。休みはするが、何かあったら電話してくれ。
 ワシもしばらくしたら、行くからな。」

「そうですね。今はゆっくり休んでおいて下さい。」

「ああ、わざわざ電話ありがとう。
 またうちの店に飯食いに来いよ。」

「ええ、また行きます。」

こうして猫井川は電話を切り、帰宅にしたのでした。

翌日、現場に行くと、すでに保楠田や牛黒が到着していました。

2人は、昨日電話したこと、鼠川がやはりしばらく休むことを伝えました。

「そうなんだ、病院には行ったんだね。」

「ええ、また店に来いと行ってましたよ。」

「また行きたいね。」

こんな話をしながら準備を進めるのでした。

今日の作業も昨日と同じです。
外構のためにすき取りをして、土を運び出すことでした。

保楠田がショベルカーを運転し、猫井川と牛黒が地均しをするのでした。

朝礼やミーティングを終えると、作業を開始しました。
保楠田は、寒さにジャンパーの前をぐいとつかみ、ショベルカーの暖気をしているのでした。

十分にエンジンが温まり、動かし始めます。
しかし運転席はまだ寒さが残っているのでした。

牛黒は昨日の反省から、必要以上にショベルカーに近づきません。

ショベルカーのバケットで土をすき取り、ダンプに載せ、運び出されていくのでした。

ショベルカーの中は、最初のうちは寒かったのですが、時間が経つに連れ、暖房が効いてきました。
むしろ暖房が効きすぎるくらいです。
このショベルカーは暖房の調整がいまいちで、効きすぎるか、効かなすぎるかです。うまい具合に、快適な温度にはなりません。

外で土を均している2人比べたら、快適なのかもしれませんが、これはこれで頭がぼんやりするのでした。

保楠田はジャンパーを脱ごうと、ファスナーを開けました。
その時、またダンプが来ました。

ジャンパーを脱ぐ暇もなく、またレバーを操作するのでした。
土を運び入れると、またしばらくダンプ待ちです。

その間に改めてジャンパーを脱ごうとしたところ、猫井川が何か伝えようと、車体の横から運転席に近づいてきました。

「なに?」

保楠田が振り向いた時でした。
レバーがジャンパーの内側に入ってしまい、意図せず動かしてしまったのでした。

レバーが入った瞬間、バケットが急に旋回します。

その様子に猫井川は驚き、後ずさりしました。
保楠田は焦って、レバーを元に戻しました。

バケットは、2メートル程動いて、止まったのでした。
猫井川には届きませんでしたが、硬直していたのでした。

「あぶないですよー」

ようやく猫井川が声を出します。

保楠田は、エンジンをオフにすると、運転席のドアを開けて

「ごめん、大丈夫?」

と聞きました。焦った様子です。

「焦りましたー。」

猫井川がゆっくり近づき始めながら、言いました。

「ごめん。ごめん。」

保楠田は、原因となったジャンパーを脱ぎながら、猫井川に誤ったのでした。

猫井川は、運転席まで行くと、この後の予定を伝えました。

「昨日に引続き、今日も焦った。」

鼠川、牛黒、保楠田と微妙に嫌なことが続いていることに、ため息をつく猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回も重機に関するヒヤリ・ハットです。

ショベルカーなどの運転席には、暖房がついています。
場合によっては、防寒具が暑くなるくらいです。

この時に起こってしまうことが、ボケットなどにレバーが入ってしまい、動かしてしまうことです。
コントロールしていない状態なので、すぐに止めることができません。

近くに作業者がいると、跳ね飛ばしてしまうこともあります。

ブカブカの服などは、引っかかりやすいので、注意が必要ですね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット ジャンパーにショベルカーのレバーが引っ掛かり、旋回させてしまった。
対策 1.レバーが引っ掛からない服を着る。
2.車外の人と会話をする時は、エンジンを切る。

重機の意図しない動きは、危険を招きます。
そのため、コントロールを手放すような服装も注意が必要になるようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA