墜落・転落○事故事例アーカイブ

足場から25メートル下に転落、男性作業員が死亡(東京都杉並区)

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昨日の事故事例でも足場からの墜落について書いたのですが、今回の事例も足場からの墜落です。

足場はビルやマンションなどの外壁に接して建てられることをよく見かけます。
作業するための床があるとはいえ、所詮は仮設設備です。
コンクリート製の床のように丈夫ではありませんし、壁もありません。

体を支えてくれるものは、厚さ数ミリの床と手すりや筋交いなのです。
手すりの隙間は体がすんなりと通る広さはあり、墜落に至ってしまうのです。

東京の杉並区のマンション工事で、足場から墜落する事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

足場から25メートル下に転落、男性作業員が死亡 東京都杉並区のマンション (平成28年10月11日)

11日午前11時半ごろ、東京都杉並区のマンションで、耐震補強工事用の足場から50代の作業員の男性が約25メートル下の地面に転落。病院に運ばれたがまもなく死亡が確認された。

警視庁杉並署によると、男性は午前8時半ごろから計7人で足場を解体する作業をしており、13階建てマンションの9階付近の位置から転落したという。同署で身元の確認を進めるとともに、転落防止措置が取られていたか調べている。

産経新聞

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「足場」です。

マンションの耐震補強工事ですのです、すでに入居されているマンションでの作業だったと思われます。
耐震補強のため、外壁などで作業する際、足場を使用していました。

事故はマンションの9階付近、高さが約25メートルから墜落してしまったというものです。
記事では、転落防止措置がとられていたかを調べるとありますが、手すりなどの設備が正しく設置されていたかも、重要になりそうです。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

高所で作業する際、足場を設けなければなりません。
この足場ですが、決まった構造があります。

構造の最小構成は作業床と支柱になります。しかしこれだけでは不十分です。
筋交いや壁つなぎといった補強材も必要ですし、手すりや中さん、下さん等といった墜落防止の設備も必要になるのです。

しかし壁に対しての作業では、場合によっては手すりなどが邪魔になることもあるのです。
そして邪魔になった手すりは、一時的にせよ取り外されることも少なくありません。

この事故現場でも、もしかすると手すりなどが取り外されていたのかもしれません。

また普通に床の上で作業している分には、余程のことがない限り、墜落することはありません。
墜落する可能性がある作業とは、足場から身を乗り出すといったものです。

手すりを外す、足場から身を乗り出しての作業時には、安全帯が必要ですが、おそらく使用されていなかったようです。

作業時のルールについて、作業計画等で決められていなかったのではないでしょうか。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

手すりなどの墜落防止設備がなかったこと。
安全帯を使用していなかったこと。
作業計画が作られていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

足場の手すりなどは、原則的に取り外してはいけません。
仮に作業一時的に外すことがあれば、安全帯を使用しなければなりません。

手すりなどは、最低限設けなければならないものですが、これ以外にも建物と足場の間にネット(層間ネット)を張っておくと、地面への激突を防止できます。
外周を覆うメッシュシートは物が落下したり、飛んでいったりすることを防ぐ目的ですが、墜落防止にもなります。

このような墜落や落下防止の設備を備えておくことが重要です。

作業床から、身を乗り出す作業などがあれば、安全帯を使用するなどのルールは作業計画書で明確にしておく必要があります。s

対策をまとめてみます。

手すりなどを取り外さない、層間ネットを張る。
作業床から身を乗り出すときは、安全帯を使用する。
安全帯使用などのルールをまとめ、作業計画で明記する。

外壁工事の作業者は足場を使うことも多く、慣れてしまい、危険意識が薄くなることもあるようです。
しかし墜落したら命に関わるのは、分かるはずです。

そしてマンションなどでこのような事故が起こると、瑕疵になります。
住民としてみれば、人が亡くなった場所に住みたくないから、引っ越しを希望される方も出てくるかもしれません。
こういった費用などは、事故を起こした会社の負担することになるのです。

作業者の命を守るための安全対策は、広い目で見ると会社自身を守ることでもあることをしっかり自覚して、指導するのがよいのではないでしょうか。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

第519条
高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。
第520条
労働者は、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

最も多い事故。墜落・転落事故の防止。

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