○コラム○現場の安全

事故防止で大切なことは、まず出来ることから徹底的に

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平成27年度は、労働災害において、1つの成果をあげました。
統計をとり出してから、初めて労働災害による死亡者が1000人を割ったのです。

平成27年度の死亡者数は972人。一昨年の平成26年度は1,030人でした。
安衛法が成立してから約40年ですが、当時の年間死者数は5000人以上でした。法整備や設備、機械の改善、安全衛生意識の変化などが伴い、徐々に労災数は減少し、今に至ったのでした。

大台を割ったとはいえ、まだまだ年間で1000人近くの人が亡くなっていることには違いありません。
数字上は少なくなっていますが、1人1人は、その家族や友人、同僚にとって、がかけがえのない人です。

個別の事例で見ると、労災による被害の大きさは計り知れないものがあるのです。

事故を防ぐ対策には、事業場を上げて行うものもありますが、作業者一人一人が出来ることも少なくありません。
作業時にほんの少し気をつけること、不安全行動を控えるだけで、避けられる事故も少なくないのです。

先日、岩手日報でこんな記事がありました。

死亡労災、過去20年最多 二戸労基署が非常事態宣言(岩手日報  平成28年6月25日)

今年も半分が過ぎてきたので、こういった記事もちらほらと見かけるようになります。
この記事は岩手県の二戸労働基準監督署が労災事故が増えてきたため、啓発を行っているものです。
二戸管内で、5件の死亡事故が起こっており、ここ20年で最も多い件数だそうです。

岩手県全体でも昨年度より多くの死亡事故が発生しているようです。

事故は様々な不運が重なり、発生してしまいます。
誰も事故になってやろうと思っている人などいません。

しかし記事を読んでみると、もしかしたら防げたかもしれない事故ではないのかと思ってしまいます。

記事にはこう書かれています。

ヘルメットの未着用など不安全な行動や環境が原因とみられる労災事故が多く、作業に潜む目に見えない危険の予測力の育成が急がれる。

さらに署長はこんなコメントを出しています。

「要因の一つとして、安全に対する意識の希薄化が考えられる。痛恨の極みと言わざるを得ない状況に歯止めをかけねばならない」

どうやら、原因とし安全意識の低さもあるようです。

index_arrow 安全意識と事故防止

現在はかなり事業者も作業者も安全意識が高くなり、建設業の現場であればヘルメットは必ず着用しています。
もしヘルメットなしで現場をうろついていたら、おそらく追い出されます。
特に公共工事であれば、ほぼ100%の着用率ではないでしょうか。

しかしこれが民間工事になると、状況は変わります。
住宅の建築現場を見ると、たまに頭にタオルを巻いただけの人が足場にいたり、中にはくわえタバコで丸のこを扱っているのを見たりします。

おそらく二戸労基署での事故もこのような状況だったのではないでしょうか。

公共工事でヘルメットなどの着用率が高いのは、厳しい監視、指導も一因です。もしヘルメットなしで高所作業などしていたら、次から仕事をさせてもらえません。

しかし住宅、住宅メーカーが施工しいている物件は別ですが、個人が発注している現場では監視はありません。指導もありません。
そのため作業者は、手を抜きがちなのです。

作業者にとって、保護具とは自分の身を守るものではなく、言われるから着けるものという意識があるのではないでしょうか。
これは私の身近なところでも見られ、民間から依頼を受けた工事では、ヘルメットなしで作業している姿を見かけます。この傾向は、高齢の作業者によく見られる気がします。

なぜ保護具を着けないかというと、危機感がないからでしょう。

大きな事故の経験がないので、自分は事故にあわないと思ってします。そうなると保護具は暑いし、作業の邪魔になる、身につけなくとも自分は事故にあわないと思ってしまうのではないでしょうか。

もちろん、この主張には根拠はありません。
むしろ事故にあった全ての人は、この根拠を持っていたのではと想像されます。

事故は監視や指導の目があろうが、なかろうが起こります。
自分は事故にあわないなんてことは、ありません。

作業者が保護具を着けるなどの安全に作業をさせるのは、事業者の責任であり、義務です。
ヘルメットなんてかぶろうと思えば、数秒でかぶれます。
この数秒のことをやらないから、事故になったり、大怪我をしたりするのです。

事業者が口を酸っぱくして指導し、現場でも見つけたら直ちに是正させることを繰り返して、ようやく意識が変わってくるものです。

逆に事業者自身が、ヘルメットなんて別に要らない、なんてことを言っていると作業者もそれに従います。

ヘルメット着用などの改善には時間がかかりますが、不安全行動に陥るのはあっという間です。
水は高いところから、低いところに流れやすいのです。

二戸労基署長が言われるように、安全意識の希薄化が事故を招きやすくなります。
意識の変革は、一朝一夕ではできません。時間がかかります。

そのことは、飲酒運転に対して厳しくなっているのにも関わらず、今だに後を絶たないことを見ると分かります。

作業者の事故防止は、事業者の責任です。
事業者とは会社の経営者、上司、現場管理者などです。
常に現場に目を光らせ、改めるは改めさせることが、短期的にも長期的にも事故を防ぐことになるのです。

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