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成田空港で点検作業中の男性感電死(千葉県成田市)

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電気が通っている電線や経路のことを活線といいます。
電気作業では、場合によって活線を取り扱う作業を行ったり、近接して作業することがあります。

こういった作業で、最も注意しなければならないのが、感電です。

通常の電線であれば、電気が流れていたとしても絶縁被覆のおかげで感電しません。
しかし接続部の金属や高圧の電線などに接触したり、絶縁被覆が破れていたりすると、感電することがあるのです。

充電部分に一瞬接触するだけでも、感電は起こります。
活線を取り扱う作業では、十分に感電に注意が必要なのです。

成田空港で、感電による事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

成田空港で点検作業中の男性感電死 成田空港署 (平成28年6月18日)

18日午前1時35分ごろ、成田空港の照明変電所内で、ケーブルの保守点検作業をしていた作業員男性が、点検作業中に感電した。男性はすぐに成田市内の病院に搬送されたが、死亡が確認された。成田空港署で事故原因を調べている。

同署によると、男性はケーブルにラベルを張る作業中で、同署員が駆け付けた時点ですでに心肺停止状態だったという。

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この事故の型は「感電」で、起因物は「配電線」です。

この事故は、成田空港の照明変電所内で、点検保守作業を行っていた時に起こりました。
成田空港の変電所ですから、かなり大規模な設備であると思われます。

ケーブルにラベル、おそらくケーブルの仕様や行き先を書いたものを張っている最中に、事故にあいました。
ケーブルのラベルは変電設備の付近や、中継所などに張られます。ラベル張りのために停電にするとこはありません。

どこで感電したかが不明ですが、変電設備の充電部、つまり接続箇所などの金属部分に触れてしまったのではないかと思われます。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

事業所内に設けられる変電設備はキュービクルといって、金属の箱でできています。
この金属の箱のなかに変圧器や各種ブレーカーなどがあるのですが、多くの場合数千Vの高圧を引き込んでいます。高圧の電気に接触すると、高い確率で致命傷になります。

ラベル張りの作業はこのキュービクルる接続しているケーブルに張っていたのではないでしょうか。
そのためにはキュービクルに体を入れ、作業する必要があります。

キュービクルなどの充電部分は通常、直接触れられないようにカバーが付けられています。作業時にはこのカバーが外されていたのかもしれません。
そのため、体の大勢を変えた時などに、充電部分に接触してしまった可能性があります。

カバーを取り外した時、別途保護カバーを設けたり、保護具を使用していなかったことも感電を防いでくれなかったのかもしれません。

また充電部以外で感電したのであれば、ケーブルの被覆が破れ、漏電していた可能性はあるのですが、これが原因ならケーブル取替になるので、今回のケースには当てはまらないかもしれません。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

充電部に接触したこと。
充電部に絶縁の囲いや覆いを取付けなかったこと。
絶縁保護具を使用していなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

活線、特に高圧活線で作業する場合は、接触したり近づき過ぎないようにすることが重要です。
充電部分に一瞬接触するだけでも、命を落としてしまいます。

そのためまずは接触しない、一定の距離を保つことが重要です。
接触防止のためには、カバーや覆いをとりつけることが重要です。元々変電設備に付いていたカバーを外したなら、これに代わるものを取付けます。
これを作業前に行う必要があります。

この作業時は絶縁保護具を着けて行います。高圧用の保護具はゴム手袋など限られていますが、感電防止のために装着しましょう。

作業時には充電部に接触しないことが重要です。カバーがあるとはいえ、ほんの少し体を動かした拍子に接触するおそれもあるので、体の位置も作業計画や手順書に書いておくほうがよいです。

作業前には、作業計画書や手順書が重要です。
合わせて感電に関する安全教育も重要です。

対策をまとめてみます。

充電部に絶縁カバーや覆いを取付ける。
絶縁保護具を身につける。
作業計画、手順書を作成し、安全教育を行う。

電気の取扱は、感電の危険が伴います。
本作業の前には、必ず安全対策を行うことが大切です。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第341条
高圧の充電電路の点検、修理等を行う場合は、絶縁用防具、保護具、活線用器具や装置を適切に子羽させなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

感電防止 その4。 高圧電気が通っている電線の取り扱い。

コメント

  1. akio より:

    数千Vの高圧線に、ラベル張りの作業
    キュービクルに、接続しているケーブルにラベル張り作業
    キュービクルに体を入れ作業する事を、ひとりで作業していた

    キュービクルなどの充電部分は直接触れられないようにカバー設置義務がある
    作業時にカバーが外されていた、そのカバーは何処に有った、設置されている様な設置部分が無い
    体の一部が、充電部分に接触した、数千Vでは弾かれる引き込まれる恐れがあり、作業者は数千Vと知って作業をしていたのか

    カバーを取り外した時、別途保護カバーを設けたり、保護具を使用していなかったことも感電を防いでくれなかったのかもしれません。

    作業マニュアル、知識がない者が作業をしていたとすると、管理責任者の重大な責任があると思います。

  2. オスカー より:

    これはキュービクルじゃないのでは?
    成田空港の照明変電所内とのことですから、恐らく滑走路の航空灯火システムの変電施設のことではないかと予想。
    上空からでも視認できる光度の、何千個もの灯火に電力を供給する設備なので、しっかりした建物になっています。

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