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井戸に転落、点検中の2人死亡…気分悪くなり、助けようと(広島県三次市)

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閉鎖された場所、例えばピット内や古井戸の内部などでは、地上とは違う危険に注意する必要があります。
どのような危険かというと、酸欠です。

閉鎖された場所などでは、酸素濃度が低下している事があります。
酸素濃度が低下している環境では、人は活動できません。

基準になる濃度は18%以上です。これ以下になると体に影響が出始め、15%以下になると命に関わります。

広島県三次市で、井戸の点検中に気分が悪くなっての事故がありました。
原因として、酸欠または有毒ガスを吸い込んだことなどが考えられそうです。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

井戸に転落、点検中の2人死亡…気分悪くなり、助けようと 広島・三次 (平成28年5月23日)

広島県三次市高杉町の木材会社で22日午後、男性従業員2人が資材置き場にある井戸を点検中に転落し、死亡していたことが23日、三次署などへの取材で分かった。

三次署と地元消防によると、ポンプでくみ上げる井戸で、深さ約10メートル。点検中に気分が悪くなったといい、2人に目立った外傷はなく、死因や詳しい状況を調べている。

22日午後3時25分ごろ、水の出が悪かった井戸の中を点検するため、20代の従業員がはしごを掛けて下りようとしたところ気分が悪くなり、たまっていた水の中に転落した。助けようと続けて入った30代の従業員も落ちたという。

 2人は心肺停止の状態で救助され、搬送先で死亡が確認された。

産経新聞

この事故の型は「有毒物等との接触」で、起因物は「有害物」です。

この事故は、ポンプで水を汲み上げる井戸で起こりました。
井戸の中に、点検のため入ったところ気分が悪くなり墜落、助けに行こうとした人墜落してしまったというものです。

おそらく井戸の中は低酸素または有毒ガスが発生したのではないでしょうか。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

井戸の内部は通気が悪いため、ガスがたまりやすい環境です。特にメタンガスなどが発生しやすいようです。発生したガスは、空気よりも重いため、井戸の中から排出されません。またガスが充満することで、どうしても酸素濃度も低下しがちです。

ガスが溜まっていることや、酸素濃度が低下していることは目で見てもわかりません。
一見、問題なさそうな井戸の底も、実は人が入ることができないことも少なくないのです。

酸素濃度やガスの測定を行わないと内部の状態はわかりません。
測定せずに立ち入ったことが問題でした。

また井戸に入る前に換気など行わず、呼吸用保護具も備えていなかったことも事故につながりました。

さらに救助に向かった人も被害になってしまいました。救助の際の体制や保護具がなかったことも問題かと思われます。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

井戸に入る前に点検しなかったこと。
換気を行わず、呼吸用保護具の用意がなかったこと。
保護具を使用せず、救助に向かったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

井戸やピットなどの中に入る前には、必ず酸素濃度や有毒ガスの測定を行います。この時、検知器は必ず穴の底まで降ろしましょう。有毒ガスは床にたまるので、上部だけ測っても、十分ではないのです。
測定の結果、問題がなければ中にはいるようにしなければなりません。

またこのような酸欠のおそれのある場所では、送風機などで換気して、空気を入れ替えてやる必要があります。換気が出来ないのであれば、呼吸用保護具を準備します。
呼吸用保護具は、防じんマスクなどではダメです。給気式のものにします。給気式には、自分でボンベを背負うタイプや外部から空気を送るタイプがあります。

また二次被害を防ぐため、もし井戸などの中で人が倒れてもすぐに救助に向かってはいけません。
井戸に入る前に酸素濃度などの測定を行ったり、呼吸用保護具を着けてからです。
無防備に助けに行くと、自分も被害に逢うこともあるのだと覚えておきましょう。

対策をまとめてみます。

井戸などに入る前には、酸素濃度等の測定を行う。
作業前には換気する。呼吸用保護具を準備する。
救助の前には、保護具を着ける 。

酸欠状態や有毒ガスは目に見えません。そのため危機感を煽らず二次被害まで拡大させてしまうのです。
井戸やピットなど通気の悪い場所では、測定と保護具です。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【酸素欠乏症等防止規則】

第3条
酸欠等の危険がある場所での作業では、作業前に測定を行わなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

酸欠作業。 異常環境下での仕事は細心の注意を。

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