○コラム○現場の安全

足場の点検に資格は必要か

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昨年(平成27年)7月より、足場に関する法改正が施行されました。

この法改正では足場の組立て解体作業を行う作業者も特別教育を修了しなければならなくなりました。足場の組立て解体作業の特別教育は、講習時間が6時間です。

しかし法改正以前から足場作業を行っていた人については、2年の間は短縮で3時間の講習でもよいとの特別措置があります。来年の7月以降に受講する場合は、経験に関係なく6時間講習になります。経験者の方は、お早めに受講してくださいね。

私も特別教育の講師をさせていただくのですが、毎回たくさんの方が受講されています。100人を超える受講生の方の前で話すことも少なくありません。

今回の法改正では、組立て解体作業する作業者は特別教育が必須になったでけでなく、足場の点検についても規制が強化されました。
足場の点検について、従来では組立てたり変更した業者による点検は欠かせませんでした。また作業前には職長などによる点検も必須でした。

法改正では、足場の実務を行う事業者だけでなく、注文者、元請業者も点検することが義務付けられたのです。
点検を行うタイミングは、組み立てた後、変更や一部解体などした後です。また悪天候後も実施する必要があります。

つまり足場の維持管理について、使用する業者任せにするのではなく、注文者、元請業者も責任を持って管理しましょうということなのです。

足場を組み終えたら、注文者がしっかり点検しなければなりません。
点検内容は、組立図通りに作られているかもですが、手すりや壁つなぎなどが、法規定通りに作られていることなども確認します。
多くの場合は、チェックシートがあると思うので、それに従って行っていけばよいと思います。

ところで足場の点検ですが、これを行うには資格は必要なのでしょうか?

足場の組立て解体作業には特別教育が必要です。作業主任者になるには、技能講習が必要になります。点検のみとなると難しいものです。

結論からいうと、点検のための資格というものはありません。(平成29年3月2日修正)

足場の知識もなんにもない人が点検をするのは無理がありますので、こんな通知があります。

足場等の安全点検の確実な実施について 

本文の中に、点検資格として、足場の点検実務者講習を受講したものというがあります。

工事管理を行う方で、実際に足場の組立て解体作業を行わない人は、こんな講習も受けてみるとよいと思います。

足場の点検実務担当者研修

建災防などでも講習はありますが、ここは出張講習もしてくれます。

足場の点検も、気を抜いていると不備な点を見過ごしてしまいます。確かにチェックシートがあれば、どこに注目すべきかは分かります。しかし状態の善し悪しの判断は、素人がチェックシートの項目だけで判断するには、厳しかったりします。
ある程度しっかりとした知識が必要になるのです。

また知識がなければ、改善方法の指導もできないのは明白ですね。

点検するにも、知識が必要なので、足場を取り扱う現場管理者は、講習などを活用することをおすすめします。

ところで、すでに足場の技能講習を受けていても、いつ受けたのかは重要な問題になってきます。

index_arrow 足場の知識は日々更新される

足場の技能講習は昔からある法定講習です。受講された方は、しっかり足場の組立て方や安全対策なども学ばれ、最終的に試験に合格されているはずです。

しかし足場は度々法改正されています。足場の構造は10年前と、大きく変わったところもあるのです。
特に平成21年の改正では、構造が大きく変わりました。手すりなどの墜落防止設備が強化された他、物の落下防止対策のために、巾木やメッシュシートが必須になったのもこの時からです。

何十年も足場の作業を行ってきたベテランさんが、「昔はこんなの必要なかった。」と嘆き、主張しても、全く通じなくなっているのです。

ここで問題があるのは、こういった法改正以前に技能講習を修了した人です。
法定講習は受講されているので、作業主任者になる要件はクリアしています。ところが、足場の知識が古いままということもあります。

もし極端な話しになるますが、古い知識のまま更新されていない作業主任者が足場を組んだら。
墜落防止対策が不十分な足場になる可能性もあるのです。また組立後の点検で指定され、一から作りなおしということも考えされます。

足場の決まり事は、この10年で大きく変わっています。作業主任者はその流れに付いて行く必要があります。

足場の知識をブラッシュアップするために、足場の能力向上講習というものがありますので、ぜひこちらを受講してください。

足場の組立て等作業主任者能力向上教育

特に平成21年以前に技能講習を受けられた方は、受講するといいです。
ゼネコン等の現場では、能力向上講習を受けていないから、作業主任者になっちゃダメという現場もあるそうですよ。

足場は頻繁に法改正されるので、こういった機会を作ることが大切なのではないでしょうか。

実は、安全パトロールであちこちの現場に行くと、足場の点検には資格は必要なのか等の質問を受けたりします。
元請業者は現場管理を中心に行っているので、実務に関わる講習を受けていない方も少なくありません。そのため点検するのも、本当に正しくチェックできているのかが不安になるのだそうです。

今回は現場で、そのような質問があったので、講習についての紹介でした。

コメント

  1. ss より:

    点検者に資格が必要ないと書いてありますが、それは間違いです

    労働基準局から各団体に向けての連絡で、上記にもあります能力向上教育・足場点検実務研修の受講者、労働安全コンサルタントなどと明記されていますよ

    1. itetama より:

      ご指摘ありがとうございました。

      件の通知を確認し、修正しました。

    2. Takasaki より:

      足場の点検で、能力向上教育や点検実務者教育修了者に行わせるというのは
      法令ではなく行政指導です(より安全にという取り組み)。
      またそれらは「教育」の受講であり資格取得ではありません。

      何が言いたいかというと、足場の点検に資格はいらないという事です。

  2. katsuazuma より:

    足場組立が終了し、注文者点検を行い異常を見過ごしトラブルが発生した場合。その時点検を行ったさ作業員への罰則はあるのでしょうか?

    1. itetama より:

      コメントありがとうございます。

      注文者点検は事業者責任になるので、所長の責任と考えた方がよいと思います。
      もちろん実際には、所長が指示して点検させることになります。

      指示されたのに、実際には見回らず、チェックシートだけ書いたなど、よほど故意に見過ごしたなどのケースは作業員にも責任はありそうです。
      その場合でも、所長など事業者責任はあります。

  3. sn より:

    足場組立等作業主任者技能講習を取得したてで能力向上を受講していない者は点検者とするのは不適切となるのですか?

    1. itetama より:

      コメントありがとうございます。

      他の方がコメントに残されているものも参考にすると、不適切とまでは言えないのではないでしょうか。
      ただし、能力向上等の教育を受講した人が点検するのが望ましいです。

      特に平成21年の法改正では、足場の構造が大きく異なりました。
      そのため、それ以前に足場の作業主任者を受講された方は、能力向上教育の受講は強くお勧めします。

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