○現場の安全

職長と安全衛生管理者の役割を整理しよう

entry-678

先日、職長の能力向上教育の講師をする機会があったのですが、私の中でも少し整理が必要なことがあるなと思ったため、ちょっとまとめます。

私は建設業にいますので、全ての現場で職長を必要とします。職長教育を受講した作業者も多数いて、私の会社にも半分の従業員が職長教育を受けています。

職長の役割は、安衛法で規定されているくらいですから、現場の安全を管理するためにいます。
そして大規模な事業場で職長は、多くの場合安責者、つまり安全衛生責任者を兼任することが多いようです。

小規模な事業場では、現場代理人が安責者を兼ねることが多いようです。

職長と安責者の職務を兼ねるといっても、この両者にはどんな違いがあるのか。
きちんと整理して理解できているでしょうか?

職長も安責者も現場の安全を守ることが任務です。
しかしその職務は同じではありません。一応の違いはあります。

ポイントは職長は作業単位に配置されます。
安責者は小規模事業場での作業場、または関係請負人、下請け業者で必要になります。大規模な元請けでは、統括安全衛生責任者などが配置されます。

では職務をまとめます。

index_arrow 職長の職務

まずは職長の職務から。
安衛法では、このように規定されています。

【安衛法】

第60条
事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくとこととなった
職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、
次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行わなければならない。

 1)作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。
 2)労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。
 3)前2号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令でさだめるもの

簡単にまとめると、作業者が安全に作業することが重要な職務です。
作業者の安全のためには、次のようなものです。

適正な作業方法を決め、適正な作業者配置をすること。
作業者の指導や監督をする。
その他労働災害の防止することです。

職長は、全ての業種で必要というものではありません。
これは安衛令で規定されています。

【安衛令】

第19条
法60条の政令で定める業種は、次のとおりとする。
 1)建設業。
 2)製造業。(ただし次に掲げるものを除く。)
  イ. 食料品・たばこ製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。)
  ロ. 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。)
  ハ. 衣服その他の繊維製品製造業
  二. 紙加工製造業(セロファン製造業を除く。)
  ホ. 新聞業、出版業、製本業及び印刷加工業
 3)電気業
 4)ガス業
 5)自動車整備業
 6)機械修理業

必要となる業種は、建設業や製造業、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業の6業種です。
製造業も幾つかの種類のみに限定されています。

林業や運送業、また第三次産業などで、職長は不要です。

職長は職長教育を受講しなければ、就任することができません。
職長の職務は、職長教育の内容を確認するとより内容が深まるではないでしょうか。

【安衛則】

(職長等の教育)
第40条
法第60条第3号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

  1)法第28条の2第1項 の危険性又は有害性等の調査及び
   その結果に基づき講ずる措置に関すること。
  2)異常時等における措置に関すること。
  3)その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること。

2 法第60条の安全又は衛生のための教育は、次の表の上欄に
  掲げる事項について、同表の下欄に掲げる時間以上
  行わなければならないものとする。

教育内容 教育時間
法第60条第1号に掲げる事項
  1)作業手順の定め方
  2)労働者の適正な配置の方法
2時間
法第60条第2号に掲げる事項
  1)指導及び教育の方法
  2)作業中における監督及び指示の方法
2.5時間
前項第1号に掲げる事項
  1)危険性又は有害性等の調査の方法
  2)危険性又は有害性等の調査の結果に基づき講ずる措置
  3)設備、作業等の具体的な改善の方法
4時間
前項第2号に掲げる事項
  1)異常時における措置
  2)災害発生時における措置
1.5時間
前項第3号に掲げる事項(時間2時間)
  1)作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法
  2)労働災害防止についての関心の保持及び
    労働者の創意工夫を引き出す方法
2時間

3 事業者は、前項の表の上欄に掲げる事項の全部又は
 一部について十分な知識及び技能を有していると
 認められる者については、当該事項に関する教育を
 省略することができる。

作業方法や配置、また指導や監督についても学びますが、それ以外の災害の防止方法なども学びます。
特に危険性、有害性の調査とはリスクアセスメントのことです。職長が中心となって、現場の
リスクアセスメントを行うことも求められているのです。

安全な作業方法を決め、作業者の安全を確保することが何よりも重要なのです。

では次に安責者の職務をまとめます。

index_arrow 安責者の職務

安責者については、安衛法で次の通りまとめられています。

【安衛法】

(安全衛生責任者)
第16条
第15条第1項又は第3項の場合において、
これらの規定により統括安全衛生責任者を選任すべき
事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、
安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との
連絡その他の厚生労働省令で定める事項を
行わせなければならない。

2  前項の規定により安全衛生責任者を選任した
  請負人は、同項の事業者に対し、遅滞なく、
  その旨を通報しなければならない。

統括安全衛生責任者を選任しない作業場では、安全衛生責任者を選任します。
どのような職務かというと、安衛則にまとめられています。

【安衛則】

(安全衛生責任者の職務)
第19条
法第16条第1項 の厚生労働省令で定める事項は、
次のとおりとする。

  1)統括安全衛生責任者との連絡

  2)統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の
   関係者への連絡

  3)前号の統括安全衛生責任者からの連絡に係る
   事項のうち当該請負人に係るものの実施に
   ついての管理

  4)当該請負人がその労働者の作業の実施に関し
   計画を作成する場合における当該計画と
   特定元方事業者が作成する法第30条第1項第5号
   の計画との整合性の確保を図るための
   統括安全衛生責任者との調整

  5)当該請負人の労働者の行う作業及び
   当該労働者以外の者の行う作業によって生ずる
   法第15条第1項 の労働災害に係る危険の有無の確認

  6)当該請負人がその仕事の一部を他の請負人に
   請け負わせている場合における当該他の請負人の
   安全衛生責任者との作業間の連絡及び調整

簡単にまとめると、統括安全衛生責任者も別の安責者との連絡が職務と言えます。

各項目をまとめると、次の通りです。

1)統括安全衛生責任者との連絡
2)統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への連絡
3)統括安全衛生責任者からの連絡を受けた事項の内、自社に関係することについての実施の管理
4)自社に関係する作業計画、機械や設備の配置について、特定元方事業者が作成した計画との整合性を確保するために、統括安全衛生責任者との調整
5)自社の労働者の作業、及び自社以外の労働者の作業で労働災害が起こらないかの確認
6)他の会社に仕事の一部を請け負わせている場合は、その会社の安全衛生責任者との連絡調整

連絡と調整。
これが安責者の職務です。

では、なぜ連絡と調整が安全衛生に関係するのでしょうか。

建設業などが特に顕著なのですが、1つの作業場に数多くの下請け業者が入ります。
そして多種多様の仕事が行われます。作業者の人数も多くなります。

自分勝手に作業を進めていると、別の業者とバッティングすることもあります。
クレーン作業のすぐ近くで、バックホウで掘削しているなどをしていると、よほど注意をしなければ、接触する危険があるのです。

いつどこで、どの業者が何の作業をするかを把握することが重要です。そのためには元請けや他の下請け業者と連絡しなければなりません。

つまり安全に作業をすすめるためには、現場の作業者を適正に管理監督し、周囲の作業にも注意を払う必要があるのです。

役割で区別すると、職長は社内的な役割、安責者は体外的な役割となります。つまり職長は自社の作業者を取りまとめるリーダーです。そして安責者は会社の代表、顔となるのです。

そのような区別で見ると、役割は明確ですね。

職長は安責者を兼ねることが多いですが、それは仕事をまとめるだけでなく、対外的な打ち合わせもやってくださいねということなのです。

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