はさまれ・巻き込まれ○事故事例アーカイブ

旋盤作業中に巻き込まれて男性死亡、メーカー書類送検(群馬県太田市)

entry638

工場の機械は、短時間で大量の加工を行うものが多いです。そのため家庭では決してお目にかかれないような巨大で強力な機械も少なくありません。
巨大で強力な機械であるので、それだけ危険も伴います。

一方で、それに対応する安全装置も備えられています。安全装置があることで、安心して作業ができるのです。 しかしもし安全装置に異常があれば、安心に作業はできません。危険と隣り合わせの状態で作業しなければならなくなります。

機械の取扱いは、安全装置が正しく働くことが前提なのです。
安全装置が故障したまま、または取り外されいたために起こる事故。そのような事故が群馬県太田市で起こりました。

この事故では、事業者(会社と社長)が書類送検されました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

作業中の男性死亡、メーカー書類送検(平成28年4月14日)

群馬労働局太田労働基準監督署は14日、労働安全衛生法違反の疑いで、太田市の機械製造業と同社の男性社長を前橋地検太田支部に書類送検した。 同社では1月8日、機械部品のバリを取る作業をしていた男性が旋盤の回転軸に巻き込まれて、死亡する事故が起こった。 同署は、回転軸が露出し、労働者に危険を及ぼすおそれがあったにもかかわらず、回転部分に覆いや囲いなどを設けなかったとしている。 同法違反の罰則は6月以下の懲役、または50万円以下の罰金と規定されている。

この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「旋盤」です。

この事故は、旋盤を使って機械部品のバリ取りをしているときに起こりました。
本来旋盤は、回転部分に囲いや覆いといった安全装置があります。安全装置によって、回転軸に体が接触しないようにするのです。

しかしこの工場では、旋盤の安全装置はありませんでした。

被災者は安全装置のない回転軸に巻き込まれてしまったのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この事故の原因は旋盤の安全装置、囲いや覆いがなかったことにあります。
安全装置は故障してたのか、それとも意図的に取り外されていたのかは不明ですが、非常に危険な状態で作業させていたことに違いありません。
事業者は安全装置がない機械を使用させてはいけないのです。

このような状態なので、当然点検などもされていなかったことでしょう。
そして作業手順を作っていたり、十分な安全教育がされていたとも考えにくいです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

安全装置が取り外されていなかったこと。
作業手順が定められていなかったこと。
点検などが行われていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

工場で使用する機械に限りませんが、機械には安全装置というものがあります。
この安全装置は正しく備えられ、そして正しく機能してこそ初めて意味があるものです。

安全装置の例を挙げると、いわばカバーのない扇風機のようなものです。
カバーがないと、ハネがむき出しですよね。
扇風機程度だと、ハネもプラスチックですし、回転も早くありません。指を入れても痛いですが、断されるほどではないでしょう。

しかし旋盤機は、扇風機どころの速度ではありません。回っているものも固い金属です。
巻き込まれた時、痛いでは済まないのです。

安全装置が常に正しく働き、作業者を守るようにしておくことは、事業者の義務です。
作業者に取り外させてはいけません。もし故障していたら、修理するまで使ってはいけません。
今は修理代がないから、しばらくは安全装置なしの状態で使わせよう。これはダメなのです。

機械の異常を確認するためには、定期的、作業前の点検が大事です。
そして安全の機械の使用のために、作業手順を定め、作業者に安全な作業の進め方を教育しなければなりません。
安全教育では、安全装置の重要性も教えます。

安全装置の軽視が、事故を招くのです。

対策をまとめてみます。

安全装置を取り外さない。異常があれば直ちに修理する。
点検を行う。
作業手順を作り、安全教育を行う。

安全装置は、作業の妨げになることも少なくありません。
カバーなどで、作業範囲が減少するなどがあるからです。
しかしそれには理由があるのです。
不意にも体に接触することで事故にならないなどの目的があるのです。

安全装置がなぜあるのかを知らないと、軽視されます。
だから教育の際には、作業方法だけでなく安全装置の効果、意味を教えなくてはいけません。

また会社は機械が正常に稼働するように、予算を組み修理しなければなりません。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】

第117条
回転中の研削といしが労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、覆いを設けなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

工作機械の危険防止 その2。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA