○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、転圧機がずるりする

entry635

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第84話「猫井川、転圧機がずるりする」
ようやく擁壁作業が完了し、一息ついた猫井川でした。
そんな中元請けの野虎と犬尾沢が何やら話し込んでいると思ったら、2人して猫井川に顔を向け、ニヤリとして、言いました。

「よろこべ、猫井川。次の仕事が決まったぞ。」

何やら、話がまとまったようです。

「次の仕事って、何ですか?」

猫井川が焦って聞きました。

「今度、野虎さんのとこの仕事を請け負っているんだけど、誰を代理人にしようかと考えていたんだけども。  野虎さんと話していたら、猫井川がいいんじゃないかとなってな。
 というわけで、お前やってみろよ。」

「えっえっ」

急な話に、状況が掴みきれない猫井川。
そんな様子に、鼠川が肩を叩き言いました。

「よかったな、猫井川。
 思った以上に、早く次の仕事が決まったな。」

まだ状況を掴みきれず、鼠川を見る猫井川。

「それで、どういうことでしょう?
 これで終わりということではないんですか?」

「つまりだな、次の現場が決まったということだ。
 今回と同じように現場代理人としてのな。」

「ああ、やっぱり聞き間違いじゃないんですね。」

「そういうことだ。
 それもお前が、今回の仕事を最後までやったからだぞ。」

犬尾沢がそう言うと、野虎が言葉を続けました。

「そうそう。今回は結構無理を言ったと思うんだけど、猫井川くんはきちんとやりきってくれたからね。
 特に舗装はかなり大変だったと思うけど、思った以上に早く終わらせてくれたし。
 だからもっと大きな仕事を任せても大丈夫だと思ったんだよ。」

「そう評価してもらうのはありがたいことだから、やってみろ。」

鼠川も言葉をつなぎ、猫井川を促しました。
3人から思いもよらぬ好評価をもらい、戸惑う猫井川でしたが、

「分かりました。やってみます。
 で、どんな仕事ですか?」

と返事し、受け入れることにしたのでした。

「ああ、次の仕事は建物の地業とコンクリート工だ。
 今回ほど大きな建物ではないけれども、同じようなものだ。
 担当はまた野虎さんだから、やりやすいだろう。

 それとまた鼠川さんもサポートお願いします。」

「ああ、わかっている。ちゃんと面倒を見るさ。」

鼠川は大きくうなずきました。

「まあ、詳しくは帰ってからな。
 とりあえず、今日はしまえ。
 俺も帰るよ。」

犬尾沢は、そう言うと野虎に挨拶し、現場を離れて行きました。
野虎も「次もよろしくね。」と言って、現場事務所に向かいました。

「さて、わしらも片付けるか。
 倉庫の片付けなければならないな。」

「そうですね。帰りましょうか。」

そうして、猫井川と鼠川は後片付けをすると、現場を後にしました。

現場から会社の事務所に帰ってくると、そのまま倉庫に向かいました。
倉庫には、まだ片付けられていない機械や材料が残っています。

「そういえば、昨日使った転圧機を置いたままだったな。」

「そうですね。おれ片付けておきますよ。
 モルタルとかお願いします。」

猫井川がそう言うと、転圧機を所定の位置に戻そうと天井クレーンを移動させていきました。
天井クレーンのチェーンを伸ばすと、転圧機の持ち手に巻いたロープに巻きました。

ロープは現場で吊って穴におろしたりするためにいつも巻いています。
このロープをショベルカーに吊ったりするのですが、今は天井クレーンのフックに掛けたのでした。

フックにロープに掛け、持ち上げた時でした。
ずるっとバランスを崩した転圧機が大きく傾いたのでした。

「うおっと。」

傾いた転圧機にビクッとしました猫井川です。
やや傾いただけで止まったので、それ以上は傾かなかったので、そのまま移動させました。

所定の位置まで移動させ、転圧機を下ろし片付けました。

天井クレーンのフックを外し、車に戻ってくると、鼠川も片付けが終わった様子です。

「いいか、今度の現場も吊りはあるけど、ああいう吊り方はダメだぞ。」

どうやらバッチリ見られていた様子。
少し恥ずかしさを感じる猫井川。

「次の現場もしっかり指導しないとだな。」

次の現場も厳しいものになると、げんなりする猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

どうやら猫井川の仕事は、高評価を得たようで、次の仕事につながっていきました。
といっても、仕事自体は会社として受けていたので、猫井川が受けたのは受けた仕事の責任者ですけども。

とはいうものの、猫井川の仕事っぷりなよかったためにつながったのは間違いありません。
よい仕事をすると、次につながる。仕事そのものが、プレゼンテーションになるという感じですね。

猫井川の次の仕事は建物の基礎土工、地業、基礎コンクリート工です。もっとたくさんの仕事になるので、また忙しくなりそうです。

そんな猫井川ですが、最後にポカリをやってしまいました。
これは以前にも似たようなヒヤリハットがありましたね。倉庫で天井クレーンをつっていたところ、吊り荷がずれてしまったというものです。
玉掛け、吊り方をいい加減にするとこんなことがありますね。
猫井川は次の仕事のことで頭がいっぱいになり、フワフワしていたのかもしれません。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 転圧機をクレーンで吊ったら、ずれてバランスを崩した。
対策 1.玉掛けを確実に行う。
2.地切りでバランスを確認する。

猫井川の次の仕事も決まってきました。
もっと大きな仕事になりそうですが、どんなヒヤリ・ハットも生まれてくるのでしょうか。

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