粉じん則

粉じん障害防止規則。事業者がやるべきことは

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日本が戦後から高度経済成長期にかけて、急激に経済発展を遂げましたが、大きな代償も払うことになりました。
その1つが公害です。

4大公害の1つに、四日市ぜんそくというものがありますが、これは工場からの排ガスにより肺や気管支などの呼吸器が侵されたものです。この問題があった同時期には、幹線道路沿いでも自動車の排気ガスやスパイクタイヤによる粉じんなどにより、ぜんそくなどの健康被害がありました。

細かな粒子が肺に入ると、じん肺という症状になります。
近年問題になっているPM2.5も細かい粒子なので、呼吸器への被害が懸念されているのです。

今では大気汚染防止法などで工場排ガスや自動車の排気ガスなどには厳しい制限がかけらるようになりましたが、呼吸器への被害は大気汚染だけではありません。

仕事では、細かな粒子、粉じんを立てるものが少なくありません。
そしてそれらの仕事で隣り合わせる危険は、公害と同じぜんそくやじん肺、そしてもっと深刻になると肺がんになったりするのです。

これら仕事で粉じんによる被害を防ぐために制定されたのが、粉じん障害防止規則です。粉じん則は昭和54年に制定されました。
ほんの40年足らず前まで、呼吸器への被害は放置されたのです。そのため今も健康被害で苦しんでいる人もいます。

粉じんの被害はすぐには兆候は見られません。深刻になるのは、長い時間が経ってからなのです。
そのため危険がわかりづらいのです。

今回から、粉じん則についてまとめていきます。

【粉じん障害防止規則】

第1章 総則

(事業者の責務)
第1条
事業者は、粉じんにさらされる労働者の健康障害を防止するため、設備、作業工程
又は作業方法の改善、作業環境の整備等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 事業者は、じん肺法 及びこれに基づく命令並びに労働安全衛生法 (以下「法」という。)に
  基づく他の命令の規定によるほか、粉じんにさらされる労働者の健康障害を防止するため、
  健康診断の実施、就業場所の変更、作業の転換、作業時間の短縮その他健康管理のための
  適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

事業者は、労働者に粉じんを発生する作業を行わせる時、最も重要なことがあります。

事業者は、粉じんによる健康被害を防止するため、設備、作業工程、作業方法、環境の整備などの措置を講じる努力をしなければなりません。

粉じん則はこの1文が全てもいえます。
これ以降の条文は、この第1条の具体的な措置なのです。

労働者の呼吸器系の健康被害を防ぐために、粉じん則以外にも、法律があります。この法律にはじん肺法などがあるのですが、こちらには粉じんが発生する作業に従事する労働者の健康診断の実施や、就業場所の変更、作業の転換、作業時間の短縮などを行うようにとあります。
これらのことも守るようにしなければならないのです。

粉じんによる肺や呼吸器の被害をなくす。
これがこの法律の目的なのです。

(定義等)
第2条
この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

  1)粉じん作業、別表第1に掲げる作業のいずれかに該当するものをいう。
   ただし、当該作業場における粉じんの発散の程度及び作業の工程その他からみて、
   この省令に規定する措置を講ずる必要がないと当該作業場の属する事業場の所在地を
   管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)が認定した作業を除く。

  2)特定粉じん発生源 別表第2に掲げる箇所をいう。

  3)特定粉じん作業 粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるものをいう。

2 前項第1号ただし書の認定を受けようとする事業者は、粉じん作業非該当認定申請書(様式第1号)を
  当該作業場の属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)を
  経由して、所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

3 前項の粉じん作業非該当認定申請書には、当該作業場に係る次に掲げる物件を添付しなければならない。

  1)作業場の見取図

  2)じん肺法第17条第2項 の規定により保存しているじん肺健康診断に関する記録

  3)粉じん濃度の測定結果並びに測定方法及び測定条件を記載した書面
  (粉じんの発散の程度が低いことが明らかな場合を除く。)

4 所轄都道府県労働局長は、第2項の粉じん作業非該当認定申請書の提出を受けた場合において、
  第1項第1号ただし書の認定をし、又はしないことを決定したときは、遅滞なく、
  文書で、その旨を当該事業者に通知しなければならない。

5 第1項第1号ただし書の認定を受けた事業者は、第2項の粉じん作業非該当認定申請書
  若しくは第3項第1号の作業場の見取図に記載された事項を変更したとき、

  又は当該認定に係る作業に従事する労働者が、法第66条第1項 若しくは第2項 の
  健康診断等において、新たに、粉じんに係る疾病にかかっており、若しくは粉じんに係る
  疾病にかかっている疑いがあると診断されたときは、遅滞なく、
  その旨を所轄労働基準監督署長を経由して、所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。

6  所轄都道府県労働局長は、第1項第1号ただし書の認定に係る作業が、
  当該作業場における粉じんの発散の程度及び作業の工程その他からみて、
  この省令に規定する措置を講ずる必要がないと認められなくなったときは、
  遅滞なく、当該認定を取り消すものとする。

粉じん対策の規則を見ていくにあたって、用語などを確認するのが、この条文です。

粉じんが発生する場所や作業は別表1と2にまとめられています。

これらのリストは個々に上げると多すぎるので、別ページをご覧ください。

別表1は、「粉じん作業 」です。これは粉じんを発生する「作業」のリストです。
別表2は、「特定粉じん発生源」です。これは特定 粉じんを発生する「場所・箇所」のリストです。

別表3もありますが、これは第27条で関係してきます。

今後、粉じん則で別表と書かれていれば、この表になります。

さて第1項第3号に、「特定粉じん作業」とあります。
この特定粉じんとは「石綿(アスベスト)」のことです。アスベストの被害はニュースなどでも見かけるのではないでしょうか。
アスベストについては、別途石綿則などでもまとめられています。

さて中には、粉じんを発生されるけれども、「粉じん作業」には含まれないものもあります。
それが第1項の「ただし~」についです。

このただし書きによって除外される作業とは、簡単に言うと「都道府県労働局長が措置を講ずる必要がないと認定したものです」。
労働局の認定を受けるには、作業場の見取り図や作業工程などの資料を提出しなければなりません。審査の結果、これなら大丈夫と判断されて、除外認定を受けます。

しかしこれにも「ただし」と条件がつきます。
それは提出した資料から変更がないことです。もし変更があったならば、再度審査です。この審査で不適合の判定が下れば、認定も取り消しになるのです。

少なくとも日常的に粉じんを発生する作業であれば、しっかり粉じん対策は必要になるのは間違いありません。

(設備による注水又は注油をする場合の特例)
第3条
次に掲げる作業を設備による注水又は注油をしながら行う場合には、当該作業については、
次章から第6章までの規定は適用しない。

  1)別表第1第3号に掲げる作業のうち、坑内の、土石、岩石又は鉱物
   (以下「鉱物等」という。)をふるい分ける場所における作業

  2)別表第1第6号に掲げる作業

  3)別表第1第7号に掲げる作業のうち、研磨材を用いて動力により、
   岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する場所における作業

  4)別表第1第8号に掲げる作業のうち、次に掲げる作業

   イ 鉱物等又は炭素を主成分とする原料(以下「炭素原料」という。)を
     動力によりふるい分ける場所における作業

   ロ 屋外の、鉱物等又は炭素原料を動力により破砕し、又は粉砕する場所における作業

  5)別表第1第15号に掲げる作業のうち、砂を再生する場所における作業

粉じんの発生を防ぐために、非常に効果がある方法があります。
それは水や油をかけることです。

水中では、粉じんは立ちません。こういった方法がとれるならば、粉じんは抑えられます。
しかし常に水をかけられるかといと、そんなことはありません。
水かけが有用なのは、土石や鉱物破砕などになるのです。

水や油をかけて粉じんの発生を抑えられる場合は、別途の対策は不要になります。

具体的にどのような作業で不要になるかは、第1号から第5号にまとめられていますが、別表1ではこのような場所です。
→以降が、上記で水をかけることで、除外の条件になる作業です。

1.別表1の第1号~3号
  鉱物や土石の採掘場、トンネル内、鉱物などの破砕から運搬などでなふるい分けする場所

  → トンネル内で鉱物等をふるい分ける場所における作業

2.別表1の第6号
  岩石又は鉱物を裁断し、彫り、仕上げする場所

3.別表1の第7号
  鉱物又は金属を研磨剤などで研磨したり、金属を切断したりする場所

  → 研磨材を用いて動力により、鉱物や金属を加工する作業

4.別表1の第8号
 鉱物やアルミニウムなどを破砕、粉砕、ふるい分けなどをする場所

  →鉱物等又は炭素を主成分とする原料を動力でふるい分ける、または屋外で鉱物等又は炭素原料を動力により破砕し、又は粉砕する作業

5.別表1の第15号
  砂型を用いて鋳物を製造する場所

  → 砂を再生する作業

動力を用いたり、水を掛けることで大幅に粉じんの発生を防げる作業であることがわかります。
これらの作業では、次回からの対策は免除になるのです。

粉じんの被害は、すぐに症状に現れません。
知らず知らずのうちに進行していくのです。
痰が出る、咳が止まらないなどの症状から、悪化すると呼吸困難や肺がんにもなる恐ろしいものなのです。

この被害を防ぐためには、粉じんを体内に入れないこと、そして発生させないことです。
次章より、粉じん対策がまとめられています。

まとめ。

【粉じん障害防止規則】

第1条
粉じんにさらされる労働者の健康障害を防止するため、設備、作業工程又は作業方法の改善、作業環境の整備等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第2条
粉じんに関する言葉の定義のまとめ。
第3条
設備による注水又は注油をしながら行う場合には、第2章から第6章までの規定は適用しない。

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