○コラム○現場の安全

事故のない現場はたまたまの結果か、意図した結果か

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公共工事を請け負う建設業者にとって、年明けから年度末は最も忙しい時期ではないでしょうか。
官公庁が年度末が節目になるので、必然的に年度末に工事の工期というものが多いのです。

そのため2月から3月は、工事の竣工検査のラッシュになるのです。

私も昨年の夏から担当していた工事が、先週ようやく竣工を迎えました。
この工事は小規模ながら、土木、建築、電気、配管、設備とバラエティに富んだ内容でした。私の会社は主に機械設備や電気設備の工事なので、工期のほとんどは機器の製作期間で、現場に入る期間はほんの短期間です。

しかし土木や建築は、毎日少しずつ進んでいきます。
機械工事などのように、製品を運びこんで、ちゃちゃっと据え付けるのとは違います。

(当たり前ですが)ずっと現場に入っていなければなりません。

普段、そんなに現場に入り浸らない私にとっては、ハードでした。

そんな現場もようやく終わり、ほっとしました。
幸い何もなく、無事故で終わりました。

何も起こらなかったというのは結果ですが、ただ「何もなくてよかったね」というだけで満足していいのかと考えてしまいます。

以前、安全教育センター所長の佐々木登さんに、

安全管理とは、「何も起きなかった」のではなく、「何も起きないようにする」という言葉を教えてもらったことがあります。

これは、警察官僚で、危機管理評論家として活躍された佐々淳行さんが、サミットなどでの警備についておっしゃった言葉だそうです。

このエントリーでも書いています。

無事故という結果は、安全だったといえるか?

サミットでテロなどが起こらなかったのは、運が良かったというのではなく、何も起こさないという意図と行動が、何もなかったという結果になったのです。

もし仮に「きっと何もないだろう」と高をくくっていると、テロリストの来襲を招いたことかもしれません。

確固たる意図が、結果を作り出すのです。

工事現場が無事故で終わるというのは、珍しくありません。
むしろほとんどの現場が無事故で終わります。

しかしそれは、意図して実施したのか、漫然としていたけれどもそうなったのか、結果は同じに見えますが、結構違うものではないでしょうか。

ちなみに、私の現場では、無事故を意図して、あれこれ策を弄したりしました。

index_arrow 事故が起こらないようにする

今回の現場で弄した策は、あまり功を奏したと言いがたく、今後の課題となるものが多いです。
どんなことをやって、どのような結果だったかを簡単にまとめてみます。

1.熱中症自覚のための平均台

ここでも記事を書いたものですが。
現場で実践!今年の夏の熱中症対策

夏の炎天下に屋外にいると、自覚症状がないまま熱中症になっていることもあるはず。熱中症が進行すると足元が覚束なくなります。
まっすぐ歩こうとしても、フラフラしてしまうのではと思いましてた。

そのために準備したのが、簡単な平均台です。これは、幅30センチ、長さ1メートル程度で、厚さ5ミリのコンパネを2枚重ねたものです。カラーは暑さを一層際だたせる黄色にして、現場に持ち込んだのでした。

こんな感じのです。
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結果は2、3度使ってそれっきりになりました。

休憩明けにこんなのやってられないとの意見が多数で、封印されてしまいました。そのため効果があったのかは、分からずじまいです。

この平均台より、熱中症アプリやタニタが出している携帯式の熱中症計が注意喚起としては、役立ちました。

平均台が受け入れられなかったのは、休憩の都度板を引っ張りだして、セットするのが手間だったのかもしれません。休憩所から出た所に置きっぱなしで、いつでも渡れるようにしておくと、作業者全員ではないにしても、遊び間隔でやってもらえたかもしれません。

安全に関するものは、身構えさせるものは、受け入れ難いようです。

2.2時間おきKY

これも以前書いたことがあります。
2時間おきKYにチャレンジ。やってみると、課題も見えてきた。

1日の作業でも、午前は掘削、午後はコンクリートというように内容が変わります。

通常のKYの盲点は、危険と対策を最終的に1つにしぼり行動目標にするため、他の作業での危険が意識されなくなることです。

例えば、掘削作業でショベルカーとの接触に注意しましょうという目標を立てた時、掘削作業以外での安全目標は抜け落ちる可能性があるのです。

もちろんKYで安全目標にないからといって、無茶なことはしないでしょうが、優先順位は低くなるのではと思ったのでした。

その問題を解決しようとしたのが、2時間おきKYです。
これは始業時、10時休憩、お昼、3時休憩を区切りとして、次の2時間は何に注意するのかをはっきりさせるものです。
つまり目先の危険を意識して、対応しようという試みでした。

意図は明確、意気込みは立派だったかもしれませんが、大きな欠点がありました。

その欠点とは、2時間おきにKYを書くのがかなり負担になることです。
KYを主体的に進めるのは、作業者です。下請け業者のリーダーが中心となります。この人たちから軒並みブーイングをもらいました。

最後まで続けたものの、結局朝全ての時間帯のKY目標を書いていました。

書くのは各時間帯1行程度まで、簡易化し
たのですが、書くということが負担なのは変わりないようです。

このことは、よい教訓になりました。
工事の書類としては、安全管理は相当用意します。
しかし安全管理とは実効性が重要です。
安全=書類ではありません。書類はあくまでも記録です。

書類作りは、竣工検査や社内規定で必要かもしれませんが、ただ書類を揃えることだけを目的になっているならば、本末転倒です。
何より現場で作業する人にとっては、このような書類作り、(それが簡単なものでも、)結構な負担になるのです。
そのためどんなに良かれと思ったことでも、いたずらに負担を増やすようならば、上手くいきません。

負担を増やさず、記録にも使えるものが、有効なのでしょう。

3.現場でのリスクアセスメント

リスクアセスメントについて学んだので、現場に活かそうと思い実施してみました。

まず今回行う作業内容をなるべく細かくしていきます。
例えば、「掘削した穴の中に、脚立で降りる」といったレベルにまでしました。

途中で心の底から嫌になってきましたが、何とか分解しました。
そして想定される危険とその見積もり、対策を検討しました。

やってみて気づいたのは、抜本的な対策がうちにくいというものです。
これは建設業にかぎらず、工場などでも同じでしょうが、大掛かりな設備や作業方法を替えるのは、予算も時間もかかります。
工場などであれば年単位で計画を立て計画するでしょうが、建設業の現場は数ヶ月から1年未満がほとんどです。すぐに新しい重機に変えるのは困難です。重機が新しくなる前に、工事が終わります。

そのため、対策としてできるのは、管理的対策、保護具の着用、法令遵守が中心になります。
割りと抜本的で斬新なものは出てきにくかったです。

ただし、リスクアセスメントを安全教育で行うのは有効です。
作業状況の写真を見せて、どんな危険があるかを話しあったり、平面図の上にショベルカーやクレーンなどのイラスト図を配置して、どこが危険かを話しあわせたりしました。

作業者にああしろ、こうしろと指導するだけでなく、お題を与えて話してもらうのは、主体性を持ってもらいます。
また、自分たちで立てた対策は、守ろうという意識が芽生えます。
つまり、自分の発言に責任をとるようになるのです。いわゆるコミットするというものですね。

KYも元は自分たちで危険防止をコミットするものでした。
自発的に安全を確保するようにするのが、安全管理の大きな目標といえそうです。

その他にも、安全クイズを作るや手作り掲示物をあちこち貼るなどをやりました。
いずれも劇的に効果があったとは言いがたいですが、何はともあれ無事故で工事は完了しました。

今回の工事では、私やるのだから安全には力を注ごうと思いました。
その結果無事故であったものの、これは珍しいことではありません。

どんなに安全管理を徹底していても、残念ながら事故が起こるときには起こります。
しかし漠然と過ごすより、きっちりと無事故を意図いている方が、確率は下がるはず。

安全に限りませんが、トライ・アンド・エラーは次の一手に繋がるはず。
私は今回の工事で気づくことも多々ありました。これらの結果を踏まえ、今後の安全管理に活かしていくネタを手に入れたはずだと、工事を総括してもみるのでした。

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