○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、死角からの危機に焦る

entry-525

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第69話「猫井川、死角からの危機に焦る 」
猫井川は初めての現場を任されることになり、張り切っていました。
今までは、どんな現場でも、犬尾沢が仕切り、指示されたことを行うのが普通でした。

しかし今回の現場については、自分で計画を立て、スケジュールと人員を調整しなければなりません。お客さんとも今までであれば、現場で挨拶するくらいだったのが、ここでは猫井川がやり取りしなければなりません。

多少距離があるとはいえ、工事の内容はそう難しくないコンクリートで擁壁を作る工事です。仕事の内容はともかく、色々なことが初めて尽くしです。戸惑うことばかりで、頭の中はいつも工事のことでいっぱいでした。

「ああ、あれをやらなきゃ。」と、思い出すこともあれば、犬尾沢に「前に言っていたあれは確認した?」と指摘されて、焦ったりすることも、しばしばでした。

犬尾沢や鼠川が、相当フォローしていますが、猫井川の気の落ち着かない日々は続くのでした。

「・・・はい。はい。承知しました。
 それでは、来週に一度現場に行って、はい、丁張をやります。
 ええ、それくらいの変更なら、大丈夫です。

 はい。よろしくお願いします。それでは失礼します。」

元請けとの電話を終えると、

「ふ~~~、こういうやり取り疲れる。」

大きく息を吐き出します。

その様子に、鼠川は、

「大変だろうけど、まだちゃんとやれていると思うぞ。」

と、ねぎらいを込めて言いました。

「そうですかね?自分の中ではいっぱいいっぱいですけど。」

「それは、そうだろうとも。
 初めてで余裕だったら、わしらは立つ瀬がないわ。
 でも、うちの会社でも、客とまともに相手できないのもいるからな。」

「そうなんですか。大変ですけど、そんなもんなんですか?」

「意外とそういうのも多いんだよ。
 まあ、お前は今のところうまくやれてる方だ。

 で、さっきの電話で元請さんは、何だって?」

「あ、そうでした。この前丁張をかけたんですけど、ちょっと変更したいそうです。」

「そうなのか。何か問題があるのか?」

「ちょっと、他の仕事に影響があるそうです。詳しくはわからないんですけど。」

「いや、きちんと聞けよ。まあ、変えてくれと言われたら仕方ないな。
 で、来週丁張をかけ直しにいくんだな。」

「はい。日程は犬尾沢さんに確認してからなんですけど。」

「うむ。わしは行けるようにするから、日は決めてくれ。」

「はい。犬尾沢さんに聞いてみます。」

そうして、猫井川は犬尾沢に丁張の変更と、日程の確認を行ったのでした。

「鼠川さん、犬尾沢さんが来週は手が開かないから、鼠川さんと2人で行ってくれとのことです。
 来週の火曜日でもいいですか?」

「ああ、わしは構わんよ。
 それだったら、忘れないうちに、元請に連絡しとけ。」

「そうですね。電話しておきます。」

こうして、2人は再度現場に向かうことになったのでした。

現場に到着すると、

「ちょっと元請けに挨拶してきます。
 準備してもらってても、いいですか?」

と言い、猫井川は敷地内の現場ハウスに向かいました。

現場には、他の工事もしていて、バックホウが行き交っています。
なるべく邪魔になりにくそうな場所を選び、鼠川がトランシットのセッティングをしていると、猫井川が図面を持って帰ってきました。

「変更を確認してきました。
 こんな感じにするそうです」

鼠川に図面を見せなから、説明します。

「そうか。今の丁張だと、他の作業の邪魔になるんだな。
 まあ、それほど大きな変更じゃないから、難しくはなさそうだ。」

「そうですね。面倒な変更だったらと心配でしたけど、大丈夫そうです。」

「こんなの全然だぞ。もっと無茶を言われることだってある。
 それじゃ、どうしていく?猫井川?」

鼠川が問いかけます。
それに答えて、

「それじゃ、鼠川さんは尺を持って立ってもらっていいですか?
 おれがメガネを覗きますので。」

「おう、分かった。」

猫井川の指示の下、それぞれの位置につきました。
そして、変更の丁張を始めていきました。

廻りでは、バックホウやダンプが動き回っていましたが、猫井川はメガネを覗くことと、メモに集中していたのでした。

猫井川がメガネを覗いていると、背後で妙な振動を感じました。
その瞬間、

「危ない!猫井川!後ろ!」と、叫ぶ声。

その声に驚き振り返ると、ダンプがすぐ近くまで近づいていたのでした。

思いの他、近くにいたことに驚き、

「うわっ!」と、声を上げました。
その勢いで、思わずトランシットを載せた三脚を蹴ってしまったのでした。

「集中するのもいいけれども、周りの注意は怠るなよ。」

いつもと違い鼠川の妙に優しげな注意に、逆におののく猫井川。

何となくの居心地の悪さを感じながら、

「足を動かしてしまったので、三脚の位置を替えましょうか。
 ここも危なそうです。」

と、提案する猫井川。

「そうだな。」

と、鼠川も同意しました。

ダンプに迫られたことと、鼠川の様子に驚きつつも、その肩に三脚を担ぐ猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回も丁張の時のヒヤリ・ハットです。
丁張を行うときは、細かに測量するので、集中する必要があります。

集中すると、どうしても視野が狭くなります。そのため時として、周りが見えにくくなるのです。

自分たちだけで作業している時ならば、どんなに集中していても問題ありません。
しかし今回のように、他にも作業していたりすると、目の前のことだけ見ているわけにもいかないでしょう。
特に重機が走っている作業場や道路上では、周りを見ていないと危険極まりありません。

道路での測量の場合、誘導員をつけて、安全を確保します。
猫井川たちも、もう1人連れて来て、誘導員にしておくと、より安全に作業を進められたかもしれません。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 測量していたら、バックホウの接近を許した
対策 1.誘導員をつける
2.あらかじめ、他の作業と調整し、影響のない場所にセッティングする。

同じ作業場で、他に作業する会社があれば、仕事の取り合い位置など、打合せて、調整するのが大事ですね。

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