○コラム

無事故という結果は、安全だったといえるか?

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私は以前、営業研修の仕事をしていました。
その会社では、営業スキルだけでなく、モチベーションアップも研修も行っていました。いわゆる自己啓発のセミナーです。セミナーを受けたからといって、成果が上がったり、人が変わったりすることはありませんが、一時的にせよモチベーションは上がります。問題は、持続するのが難しいことですが。

セミナーの効果についてはともかく、研修の1つにこういうものがありました。
会議室の中に、A地点とB地点に線を引きます。受講者にはA地点からB地点まで移動してもらいます。ただし条件が1つあります。それは全て違う移動の仕方をするというものです。

例えば、最初の人が「歩いて」移動したとします。次の人からは「歩く」というのは使えません。
そのため2番目の人は、「走って」移動します。そうなると、3番目移行は、「歩く」、「走る」が使えません。
このようにして、どんどん移動してもらいます。全員が移動し終えると、2周目、3周目と繰り返します。

最初の間は、スキップするとか、後ろ向きに歩くなど、割りとすんなり移動できます。しかししばらくするとネタ切れになります。知恵を絞り、何とかオリジナリティのある移動の仕方を考えるのです。

私がこれをやった時、寝転がって、イモムシのような動きをしたりしてました。

この講習は、「意図と方法」と呼ばれます。

この講習の目的は何かというと、目的ために、ありとあらゆる方法を尽くして、達成させる体験です。
もうこれ以上移動方法はないと追いつめられた時でも、脳みそを必死に動かすと何かしらの方法が見えます。
不思議な事に、これは30~40分も何かしら続くのです。

意図したもの、目的が明確であり、それを何としても達成してやろうという意志があれば、必ず何かしらの突破口、方法が見つかるのです。諦めてしまえば、新たなアイデアは浮かびません。意図なくして方法なしです。

さて、これを安全におきかえてみます。

安全とは、目に見える結果として得られるのは、無事故で仕事を終えるということです。

しかし、無事故で終える結果は、意図されたものか、たまたま結果的にそうなったのかで、大きく異なります。
少なくとも、私は異なると思います。

私は安全とは、無事故を意図するものなのだと考えます。

index_arrow 安全の意図と方法

先日、このブログを読んでいただいている方から、ご連絡をいただき、お会いする機会がありました。

その方は、安全教育センター所長の佐々木登さんです。佐々木さんの安全教育センターは仙台と東京を拠点にし、全国の企業の安全教育やパトロールなどを行われていらっしゃいます。クライアントには、名だたる企業も多数あります。

安全教育センター 

佐々木さんのお話は、様々な現場で見聞された最前線のことなので、非常に刺激になりました。
その話の中で、このようなことをご紹介いただきました。

今は亡くなられましたが、警察官僚で、危機管理評論家として活躍された佐々淳行さんが、サミット等の警備について、こんな言葉を残されたそうです。

「「何も起きなかった」のではなく、「何も起きないようにした」のです。」

この言葉について調べてみたところ、佐々淳行氏のホームページに同様の話が掲載されていました。

佐々淳行ホームページ 2004年9月10日

佐々木さんからこの言葉を聞いて、ハッとするとともに、いい言葉だなと思いました。
安全管理とは、まさに佐々氏の言う警備と同じなのだと思います。

意図した無事故と、何となくやっていたけど、結果的に無事故になったというものは、同じように見えて、大きく違うのではないでしょうか。安全とは意図して達成するものです。

何となくで、結果的に無事故がダメかというと、完全にそうではありません。
しかし、意図せず得られた結果は、次につながりません。次の現場では事故が起こるかもしれません。そして、目的や意図がないので、何が原因で、次はどうしたらいいのかの検証ができません。

いわゆる、PDCAサイクルがない状態です。意図しないということは、PCAがなく、Dだけなのです。

もちろん、安全を意図したとしても、事故が起こることもあります。確率を上げることはできますが、100%は困難でしょう。
とはいえ、仮に事故が起こっても検証ができます。何がダメだったかを次に活かせます。

安全とは、過去からの経験の蓄積です。経験値を積むのは、意図と結果を結びつけることではないでしょうか。

index_arrow 何を意図するか

安全を意図するとして、何を意図すればいいのか。

簡単に次のようなことではないでしょうか。

1.現場にはどんな危険があるかを知る。

一番大事なのは、現場にどのような事故の確率があるかを知ることです。
現場作業者からの聞き取りや、調査などで、とにかくピックアップします。

2.危険の対策は何か。法的な準拠は何か。リスク・アセスメントではどのような方法が考えられたか。

次にピックアップした事故の対策を検討します。安衛法などで規定されていることを守ると同時に、リスク・アセスメントも非常に有効です。

3.安全目標を決める。(意図)

さあ、材料が揃ったら、それらを踏まえて目標です。「無事故達成」という抽象的なものより、「クレーンの落下事故ゼロ」などとしてもいいと思います。また、業種ごと部門ごとに目標を立てるのもいいですね。

4.目標に沿った、具体的行動(方法)

目標達成のための、具体的行動や方法を行います。具体的であれば、具体的であるほど、行動につながりやすいです。
「クレーン落下事故ゼロ」ならば、玉掛けの際の手順を見直すことも検討してみるのもいいでしょう。

5.検証する

目標を達成したかどうかだけでなく、目標や行動の検証です。
具体的行動の中には、あまり意味のないものもあるでしょう。そういったものを精査して、次の現場に活かしていきます。
事故があった場合は、なぜその事故が起こり、次にどうして防ぐかを考えます。

まさに、PDCAサイクルですね。

ちょっとした考え方を変えるだけでも、結果が大きく異なります。

安全は意図と方法。
方法ばかりに気を取られてもいけません。そして意図にかなっていなければ、意味がありません。

結果的に無事故なのはラッキーなことです。なるべくなら、この幸運を引き寄せておきたいものですね。

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