○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、ローリング・ホイールに翻弄さる

entry-506

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第66話「猫井川、ローリング・ホイールに翻弄さる」
猫井川が作業現場に到着し、材料などを下ろし準備をしていると、犬尾沢が近づいてきました。

「猫井川、ちょっと手が開いている?」

「ええ、まだ大丈夫ですけど。

「そうか。悪いけど、あっちの電気屋さんの手が足りないみたいだから、手伝ってやってくれないかな。」

ふと犬尾沢が指差した方を見ると、今日から現場入りしたと思われる、やや小太りの電気屋さんが1人で材料を下ろしていました。
電線管やケーブルなど、かなり大量です。

「わかりました。こっちを片付けたら、手伝ってきます。」

急いで、荷物を下ろし終えると、電気屋さんのところに向かいました。

「荷物多そうなので、手伝いますよ。」

「ああ、すみません。そうしてもらえると、ありがたいです。」

見るとその男は、すでに額に汗しています。
まだ半分くらいしか下ろせておらず、トラックにはたくさんの材料が残っています。

「これだけの量を1人で載せるのも大変だったんじゃないですか。」

「会社だと、クレーンが使えるから、載せるのは平気だったんだけど。
 材料を一度に持ってきすぎたかも。」

荷降ろしをしながら、話をしていると、その電気屋さんは猪頭ピギという名前で、よく犬尾沢が頼むそうです。確かに猫井川も何度も顔を見かけていました。職種が違うので、今までそれほど話したことはなく、名前も知らなかったのでした。

猪頭は、1人で電気工事をやっています。犬尾沢は工事に付帯する電気工事をお願いすることが多かったのです。

話をしながら、電線管を下ろし、ケーブルの束を下ろしていくと、最後に太いケーブルを巻いたドラムが残りました。 これは非常に重く、1人で下ろすことは難しそうです。

「これを下ろすのは、手伝ってくれません?」

トラックの荷台に登った猪頭が、ドラムを転がし、端まで運んできました。
猫井川はトラックの下で、ドラムを持つと、協力して下ろしたのでした。

「クレーンがあると積むのは楽なんだけど。」

猪頭が、さらに額の汗を濃くして言いました。

「手伝ってくれて助かったよ。あとは、1人で運べるから大丈夫。」

「ドラムとか持たなくて平気ですか?」

「ああ、大丈夫。転がせばいいからね。下ろしちゃえば楽なんだよ。」

「それじゃ、あとお願いします。」

そう言うと、猫井川は自分の作業に戻りました。

猪頭は、猫井川を見送ると早速、大きなドラムを運ぼうとしました。
手でゴロゴロと転がし、トラックから離れていきます。
しかし材料を仮置きする場所へはすこし傾斜があります。そのため押していくのも一苦労そうでした。

「あ、しまった。カッターを忘れてた。」

猫井川は、先ほど荷物を下ろしていた時に使ったカッターを置いたままにしていたのを思い出し、戻って行きました。

荷台に置かれていたカッターを手に取ると、腰袋に入れた時でした。

「あー、待ってー」

素っ頓狂な声が背後から聞こえて来ました。
驚いて、振り返ってみると、先ほど猪頭が運んでいたケーブルドラムが猫井川に向かってきたのでした。

「危ない。猫井川くん避けて!」

猪頭は大声で叫びます。その声に反応して、猫井川が身をかわすと、ドラムはトラックの側面にゴンと衝突し、止まりました。

「あー、この前修理したばっかりなのに。」

転がるスピードはそれほど速くなかったので、強く当たったわけではありません。しかしかなりの重量なので、ボディを凹ますには十分な威力だったようです。

「猫井川くん、ごめんね。坂を上げるとき、なかなか上がんなくて、蹴ってやったら、方向が変わっちゃって。」

へこんだボディを撫でながら、猪頭は言います。

「ああ、へこむわー」

残念そうに、ボディを撫でる猪頭を残し、猫井川はその場を去って行きました。

猪頭はしばらくトラックの側にいましたが、名残惜しそうにドラムを坂の上に運んでいくのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回のヒヤリ・ハットは新キャラクターによるものです。

土木工事では、電気工事と一緒に仕事をする機会は少ないと思います。時々、何か関係する工事があればというくらいではないでしょうか。建築工事ならば、同じ現場に入りますが、電気は最後の仕上げなので、同時に仕事をすることは少なそうです。

土木と電気はそんな関係が多いのですが、犬尾沢は猪頭を使うこともあるようです。何に使っているのかは、追々話に出てきそうです。

さて、小太りの電気屋、猪頭ピギは初登場でいきなりやらかしてくれました。

電気のケーブルは、家電製品のケーブルのようなものもあれば、大量の電流を通す太いものもあります。太いものとなると、ワイヤー以上になりますので、かなり重く、容易に曲げることもできません。50センチの切れ端であっても、もはや警棒のような凶器になりかねません。

それくらい太いケーブルを持ち運ぶ時は、ドラムというものに巻いておきます。ケーブルが巻かれたドラムはかなりの重量になります。

今回のヒヤリ・ハットは、そのドラムが転がってしまったというものです。車にあたったら、ボディが軽くへこむくらいのものです。もし人にあたったら大怪我になりかねませんね。

実はこれに似たヒヤリ・ハットは、先日私の会社であったものなのです。撤去したケーブルを巻くために準備していた、空のドラムを蹴飛ばして運んでいたところ、あらぬ方向に転がり、車のバンパーに当たってしまったのです。

大切に乗っていたハイエースのフロントバンパーにあたり、凹みはしないものの、塗装には蜘蛛の巣のような日々が入っていたのでした。

人のほうがヘコんでました。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 電気ケーブルのドラムを蹴っ飛ばしたら、転がって、車に当たった。
対策 1.ドラムは手で押し、蹴飛ばさない。
2.転がして運ぶものは、地面の状態を確認する。

横着をすると、あらぬことが起こります。蹴飛ばして転がすと、楽かもしれませんが、コントロール不能になるので、地面の状態を見ながら、行わなければなりませんね。

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