フォークリフト○事故事例アーカイブ

フォークリフト横転、運転の男性死亡(栃木県さくら市)

entry-468

先日、とある機器製造メーカー工場に行く機会がありました。
安全診断等ではなく、別件ではあったものの、やはり気になるのは、どこか危険な場所はないかということです。

ほんの一部しか見ていないので、つぶさに見たわけではないのですが、気になったのがフォークリフトの運用でした。

その工場では非常にフォークリフトの行き交い多いのです。
一応、フォークリフトの運行ルートと作業場の区別はあります。しかし歩行通路はフォークリフトと同じなのです。

フォークリフトもかなりのスピードを出しています。
今のところ事故はないようですが、歩車分離はしたほうがいいなと思いました。

この工場にかぎらず、フォークリフトを使う会社は多いと思います。
使う機会が多いとどうしても、事故にあう頻度も高くなります。

栃木県さくら市でも、フォークリフトに関係する事故がありました。

今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
フォークリフト横転、運転の男性死亡 (平成27年10月31日)

31日午前1時15分ごろ、さくら市鷲宿の川崎三興化成関東事業部栃木工場で、同市、会社員男性が運転するフォークリフトが横転した。男性は頭を強く打ち、間もなく死亡した。

さくら署は横転の原因や死因を調べている。

下野新聞

この事故の型は「転倒」で、起因物は「フォークリフト」です。

記事自体が非常に短いため、状況はほとんどわかりません。

この記事から読み取れることは、フォークリフトが横転し、運転者が頭を打ち、亡くなったということです。
フォークリフトから投げ出されたのか、下敷きになったのかも不明ですが、頭を打ったということなので、おそらく横転した勢いで、投げ飛ばされたのだと思われます。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

フォークリフトが横転する原因は、いくつか考えられます。
まず、スピードを出しすぎたまま、方向転換したこと。フォークリフトは、小回りが効き、自動車に比べ重心が高いので、方向転換時に、バランスを崩しやすいのです。

次に考えられるのが、障害物があったことです。障害物を避けようとして、ハンドルを切り、バランスを崩したことも考えられます。
例えば、作業者が急に前を横切るなどです。
またフォークリフトのタイヤは小径ですので、そのためちょっとした段差でも、バランスを崩してしまいます。

いずれの原因せよ、ある程度のスピードが出ていたことは考えられそうです。
その場合、速度制限などが定められていなかったのかもしれません。

障害物があったならば、整理整頓がされていなかったことも背景にあるかもしれません。
フォークリフトの通行路に、荷物などが置かれていた、もしくははみ出していたならば、非常に通行のジャマだったことでしょう。

工場でのフォークリフトの運行計画、整理状況に問題があったのかもしれません。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

フォークリフトがスピードを出しすぎていたこと。
通路に障害物があったこと。
フォークリフトの運行経路が定められていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

フォークリフト等の荷役運搬機械を使用する時には、事前に作業場や作業方法などを検討して、作業計画を定めなければなりません。この作業計画には、走行ルートなどが含まれます。歩車分離も検討しておく必要があります。

また走行スピードも定めておきます。狭い場所なので、さほど飛ばさないとはいえ、時速10キロとか20キロ以下などを定め、守らせます。
狭い場所であったり、荷物が多い、段差があるなど転倒するおそれがある場合は、走行路の幅を十分に確保するなども必要です。

そして、これはかなりの確率で守られていないと思いますが、フォークリフトを含む荷役運搬機械は作業指揮者を配置します。作業指揮者は、全体を見て、通行させたりするのですが、工場内でフォークリフト運行のための作業指揮者配置は、少ないのではないでしょうか。

その他、人と接触する危険があるならば、別途誘導者を配置することも必要です。

これらは全て作業計画で定められることです。そして定められた作業計画は、きちんと守られないと、意味がありません。

さらに、工場全体のことまで視野を広げると、整理整頓の徹底、作業者はフォークリフトの前を横切らないなどといったルール作りも事故を防止するために大切なことです。

対策をまとめてみます。

フォークリフト運用の作業計画を定める。
整理整頓を行う。
作業者とフォークリフトが接触しないように、通路を分ける。

労働新聞社の安全スタッフでは、今年の書類送検事例として、「フォークリフトの運行計画が作られていなかった」というケースが紹介されていました。フォークリフトは、非常に身近な機械です。通常に使用している分には事故もないでしょうが、一度事故が起こると、被害は小さくありません。

日頃からの運用も大切ですが、作業計画を定めておくことも非常に大切なことです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第151条の3
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、あらかじめ作業場所を調査し、作業計画を作成し、作業すること。
第151条の4
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、作業の指揮者を定めて、指揮させなければならない。
第151条の5
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、適正な制限速度を定めなければならない。
第151条の6
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、転倒や転落を防止する措置をとらなけばならない。
第151条の7
車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、接触するおそれのある場合は、誘導者を指名し、誘導させる。
第151条の8
車両系荷役運搬機械等について誘導者を置くときは、一定の合図を定めなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。 安全に荷役運搬機械を使用するための措置

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