はさまれ・巻き込まれ○事故事例アーカイブ

ローラー車下敷きになり男性が死亡する事故(千葉県柏市)

entry-392道路工事では、地盤を固くすることが大事です。
地盤となる土などを、ギュウギュウに圧縮し、高密度にして硬くすることを、締め固めといいます。

締め固めには、土などに振動を与える機械が使われます。
小型のものは、タンパやランマと呼ばれる機械があります。これは狭い範囲の地盤を固めるのに向いています。
道路など、範囲が広い場所では、小型振動機では間に合いませんし、仕上がりもデコボコして悪いです。
広範囲をきれいに締め固める時には、大きなローラーを使います。

ローラーとは、大きな鉄製の筒のことです。鉄の筒なので、非常に重量もあります。
このローラーを備えた機械が、ローラー車というものです。

ローラー車は、タイヤの代わりに鉄の筒を付けた機械というものです。
ローラー車のローラーはただ重いだけではありません。細かく振動もします。
重さと振動で、地盤を締め固めるのです。

非常に重量のあるローラー車ですから、これにひかれるのは、自動車にひかれるよりもダメージがあるのは想像できますよね。

千葉県の柏市で、ローラー車にひかれるという事故がありました。
ひかれてしまった方は、残念ながら亡くなられました。

今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討してみます。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

ローラー車下敷きになり男性死亡(千葉県柏市)(平成27年8月18日)

18日午後1時半ごろ、柏市花野井の農道の工事現場で、無人の小型ローラー車(重さ約3・6トン)が動き出し、約10メートル前で作業していた土木建設会社役員が下敷きになった。被災者は頭などを損傷し、搬送先の病院で死亡が確認された。

柏署によると、運転者がエンジンをかけたままローラー車を離れようとして、誤ってギアが入ったとみられ、被災者は背後から来る車に気づかなかったらしい。同署は業務上過失致死の疑いがあるとみて調べている。工事は土地改良区が発注。幅約2・9メートルの農道に砕石を敷く作業を被災者の会社が請け負っていた。

産経新聞

この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「ローラー車」です。

農道の整備工事の時に事故が起こりました。
砕石、つまり砂利を敷き、ローラー車で締め固める作業中でした。

被災者がローラー車を運転していたのですが、エンジンをかけたまま席を離れ、作業していると、ローラー車が勝手に動き出したのでした。
ローラー車が向かう先にいた被災者は、そのことに気づかぬままひかれてしまいました。

重量3.6トンのローラー車に、体の上に乗りあげたのです。
頭部を損傷しという記事の文言が、どれほどの被害だったのか、想像をかきたててしまいます。

運転席を離れた時に、ギヤを入れたらしいのですが、かなり痛ましい事故といえます。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

ローラー車は、車両系建設機械というものに分類されます。
これは、ショベルカーやブルドーザーと同じものです。

そのため、ショベルカーなどと同じように使うときには、注意が必要なのです。

直接的な原因としては、ローラー車が動き出し、それにひかれてしまったことです。

ショベルカーなどで、エンジンが掛かっているものの、席には誰も居ないというのは、珍しくありません。被災者は、いつもエンジンをかけっぱなしで、席を離れ、作業を行ったりしていたのでしょう。

ブレーキもかけているし、ギヤも入れていないから、車同様動き出す心配はない。
きっとそんな風に思っていたのかもしれません。

今回はたまたま席を離れるときに、体か服の一部がギヤレバーに引っかかったのでしょう。
意図せず動き出してしまいました。

重機から離れる時は、エンジンを切らねばなりません。
エンジンがかかっていなければ、このような事故は起こらないのです。

それでは、原因を推測してみます。

エンジンをかけたまま、席を離れたこと。
周囲の作業者も、ローラー車が近づくのを気付かなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

ローラー車やショベルカーなどをストップさせ、席を離れる場合は、必ずエンジンを切ります。
安全対策として、ヒモ付きの鍵を使い、腰ベルトに取り付けるということも行われています。
これであれば、エンジンを切って、鍵を外さなければ、外にでることができないわけです。

冬場、暖気のためにエンジンをかけっぱなしにしていることもあるでしょうが、席を離れずに行なうことを考えなければなりませんね。

また、機械が勝手に動き出した時、いち早く異変に気づくように、周りの人たちも注意するのも大事です。 ローラー車ほどの大きさでは、車止めは効果は薄いですが、カラーコーンなどを車体の前後に置いておくと、動き出した時気づきやすくなりそうですね。

対策をまとめてみます。

席を離れる時は、エンジンを切り、鍵を外す。
ローラー車の前後に、カラーコーンなどを置く。
作業に集中するだけでなく、周辺の注意も行なう。

機械の乗り降りが頻繁に行われる現場では、その都度エンジンを切ったりするのは面倒に思うかもしれません。 しかし、体の一部がギヤに少し触れるだけでも、このような事故が起こってしまいます。

手間でも、確実に安全を確保することに、越したことはありませんね。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

第160条
車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときは、運転者に必要な措置を講じさせなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

安全に車両系建設機械を使用するための措置 その2

コメント

  1. 匿名 より:

    なぜローラー車には囲いがないのか?全面には何かを巻き込まないように板が一枚でもあれば違うのに。メーカーと国土交通省はそこを考えるべき。今の世の中で考えたら作業員の責任だけでは無いだろう。今の科学からしたら何とも低レベルな機械。

  2. 元穴掘りの安全屋 より:

    タイヤローラー・振動ローラー等の車輌系建設機械は道交法に縛られる部分もあり、車体の前方あるいは周囲に特定の突起(巻き込まないような設備)を配備するのはかなり困難があると推測されます。
    車体の外側に展開するエアバッグなども付属できない事は無いだろうが車両規則などで付けられないので、低レベルという表現はそぐわないように感じます。

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