○コラム

部長、タバコ辞めないってよ。

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平成26年6月の安全衛生法の改正は、比較的大きな改正になりました。

法律はだいたい5年に1度見直しがされるようで、平成26年は安衛法の当たり年になったようです。 ちなみに本来であれば、平成23年が法改正の年だったそうですが、民主党政権化で廃案になり、流れてしまったそうです。

先日、兵庫県労働基準連合会主催の安全講習に参加した時、元厚生労働省の半田有通さんという方の講演を聞く機会がありました。 半田さんは、平成26年に退官されたのですが、最後の大仕事が今回の法改正だったそうです。

法改正の時に裏話をお話いただいたのですが、これが実に面白かったのです。

それにちなんで、今回は法改正の1つ、受動喫煙の防止について取り上げてみたいと思います。

タイトルを「桐島、部活やめるってよ」風にしてみました。
うちの会社の場合は、部長ではなくて、社長が喫煙者なんですけどね。 辞めそうにありませんし、この法律を盾に迫っても、分煙の道は遠そうなんですけど。

index_arrow 受動喫煙防止に至るまで

JTのの「平成26年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は30.3%で、昭和41年のピーク時83.7%と比較すると、48年間で53ポイントも減少したことになります。 一方、成人女性の平均喫煙率は9.8%だそうで、ここ数年は横ばいだそうです。

厚生労働省の最新たばこ情報

たばこに対する世間の認識は、この10年くらいで大きく変わったように思います。

法律まではならなくとも、都道府県や市では受動喫煙防止の条例などもあります。 現在では、飲食店にかぎらず、建物内は禁煙というのも珍しくありません。

私も昔は喫煙していましたが、7年前に辞めました。 理由は、たばこ代がバカバカしくなったからです。

今は人にも辞めろとは言わないですが、こっちに煙を持ってこないでとは思います。

喫煙者に厳しくなってきました。

そんな世間の動きもあり、今回の法改正では、受動喫煙防止の努力義務が盛り込まれたのでした。

この法改正に取り組んでいた半田さんによると、この条文がかなり喧々諤々の議論を招いたようです。

法律は、各省庁が草案を作り、政府より議会に提出されます。
国会への提出に先立って、与党で審議があるのですが、その段階から揉めたそうです。

国会議員にも喫煙者が多いわけですから、その人たちが反対するわけです。
しかも、喫煙に関しては、与野党関係なく、超党派の反対連合ができ上がるそうです。その一方では、喫煙しない議員もいるので、こちらも超党派で賛成連合を作ります。

つまり、与野党を超えた、「喫煙派VS嫌煙派」となったようです。

どちらも、主張が激しく「何だ!このヤロー」と言った議論がかわされました。 急先鋒は、「自民党たばこ議員連盟」の会長を務める野田毅議員だったりします。

実は、平成23年民主党政権時の法改正案にも受動喫煙防止はあったようですが、結果廃案になりました。 当時の小宮山洋子厚労相は、就任早々たばこ税を引き上げるなど、嫌煙派の最たるものでした。 そのため、この法案にも積極的だったようですけども、あえなく立ち消えました。

民主党政権化のゴタゴタはともかく、安衛法は、労働者の生命を保護する目的のものです。 そのため与野党の対立が起こりにくく、すんなり通る法案なのだそうです。

しかし、この平成26年の法改正は時間がかかったようです。
喧々諤々の議論の末、ようやく受動喫煙防止の努力義務を謳った条文が追加されました。

それが、安衛法第68条の2です。

【安衛法】

(受動喫煙の防止)
第68条の2
事業者は、労働者の受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、
他人のたばこの煙を吸わされることをいう。第71条第1項において同じ。)
を防止するため、 当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を
講ずるよう努めるものとする。

ぱっと見は分からないのですが、この条文実はちょっと変わっています。

これも半田さんが講演の中で言われてて、面白いなと思ったエピソードがあるんです。

この条文の最後の部分ですが、「努めるものとする」とありますね。

普通、事業者を守護にする場合は「努めなければならない」なんです。

例えば、次の第69条は、こんなです。

(健康教育等)
第69条
事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の
保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように
努めなければならない。

2 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の
  保持増進に努めるものとする。

「努めなければならない」とありますね。

「努めるものとする」は、労働者や国が主語になった場合に使われる傾向にあります。 意味はどちらも同じ。この使い分けは、他の条文とも合わせた、慣例的なものです。

しかし、受動喫煙防止については、「努めるとする」なのです。

これも喫煙派議員の主張により、こうなったそうです。 「努めなければならない」は、表現として強すぎるというのだそうです。

何というか、世間的にはしょうもない主張だなと思うものの、本人たちには重要な事なのでしょう。 でもその努力、国民に伝わっていませんよ。

あわせて、受動喫煙防止に関する援助も追加されました。

(国の援助)
第71条
第71条  国は、労働者の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るため、
必要な資料の提供、作業環境測定及び健康診断の実施の促進、
受動喫煙の防止のための設備の設置の促進、
事業場における健康教育等に関する指導員の確保及び資質の向上の促進
その他の必要な援助に努めるものとする。

2 国は、前項の援助を行うに当たつては、中小企業者に対し、
  特別の配慮をするものとする。

太字の赤字が追加された部分です。

受動喫煙防止では、場合によっては室内に喫煙ルームを作ることもあります。
国の支援として、こういった設備について、援助しますということです。

厚生労働省には、受動喫煙防止についての案内があるので、こちらにも援助や補助について書かれていますね。

職場における受動喫煙防止対策について

援助や補助金については、各都道府県の労働局健康課等で相談できます。

でも補助金を受ける時は、ご注意ください!

喫煙ルームなどは作る前に相談、申請しましょう。
出来上がってからでは、申請は通りません。
設計段階でというのが重要です。

また排気装置等、直接煙を処理する設備には補助は出ますが、その他の娯楽設備には出ないようです。 もし喫煙ルームにテレビを置く場合は、自費になります。 たぶん椅子も自費じゃないかな。

補助は最大で、総費用の半分が出るみたいなので、喫煙ルームを作ろうと考えている事業者は相談するのがいいのではないでしょうか。

パソナの社長が、社員総会で喫煙する幹部を名指しで批判したのがニュースになっていました。
人を前に名指し パソナ社長が喫煙社員に「たばこやめろ」(日刊ゲンダイ) リンク切れ

喫煙者に対する風当たりは、年々強くなっています。
この傾向は、きっと変わらないでしょう。

喫煙は吸っている人はともかく、吸わない人にはかなりのストレスになります。
喫煙派、嫌煙派などで対立するは結構ですが、住み分けするのはお互いにメリットがありますよね。

吸わない人にとっては、煙漂う職場は快適ではありません。
経営者が不快な環境を作り、無頓着なのは、いかがなものでしょうという話です。

本来、嗜好品であるたばこです。
努力義務ではありますが、行政的にかなり踏み込んだ政策になりましたね。

↓本記事と関係無いですが、結構面白かったですよ!
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