○安衛法と仲良くなるクレーン作業

クレーンの安全その16。クレーンの性能試験

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クレーンは年に1回、月に1回と定期に自主検査を行わなければなりません。
これだけでも、結構な頻度で検査しているように思いますが、残念ながらクレーンには、まだ検査があります。

クレーンは、特に危険性が高いとされ、管理を必要とする特定機械に含まれます。
特定機械は、公的な機関による検査を必要とするのです。

設置時には落成検査がありましたが、これとほぼ同等の検査を定期的に受けなければなりません。
対象は、落成検査を受けた、吊り荷重3トン以上のクレーンになります。

準備に手間がかかりますし、費用もかかります。
しかし、重量のある荷物を吊り上げる場合には、性能の劣化などは、危険を招きます。

安全にクレーンを使うために、性能検査は非常に重要です。

今回は、性能検査に関する条文をまとめます。

index_arrow クレーンの性能検査

【クレーン等安全規則】

第4節 性能検査

(性能検査)
第40条
クレーンに係る法第41条第2項の性能検査
(以下「性能検査」という。)においては、クレーンの
各部分の構造及び機能について点検を行なうほか、
荷重試験を行なうものとする。

2 第34条第4項の規定は、前項の荷重試験に
  ついて準用する。

クレーンは各構造や性能点検、荷重試験などを、公的な検査機関による、性能検査を受けなければなりません。

法第41条第2項とは、安衛法の条文になります。 内容は、次のとおりです。

【安衛法】

(検査証の有効期間等)
第41条
検査証の有効期間(次項の規定により検査証の有効期間が
更新されたときにあつては、当該更新された検査証の有効期間)は、
特定機械等の種類に応じて、厚生労働省令で定める期間とする。

2 検査証の有効期間の更新を受けようとする者は、厚生労働省令で
  定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で   
  定める事項について、厚生労働大臣の登録を受けた者   
  (以下「登録性能検査機関」という。)が行う性能検査を   
  受けなければならない。

検査は、厚生労働省が定める登録検査機関が行なうことになります。
例えば、クレーン協会などが検査を実施します。

クレーン協会

ただし、この後の条文にも出てきますが、労働基準監督署長が検査を行うこともあります。
落成検査は、労働基準監督署長でしたから、性能検査も行なうこともあるのです。

なお、試験内容については、落成検査の時に行った検査と同等です。
荷重検査も、落成検査の時の行った方法に準拠します。

落成検査については、こちら。

クレーンの安全 その2。 設置後のイベント。落成検査。

性能試験では、定格荷重まで荷重をかけるので、その分の重りも準備します。

index_arrow クレーンの性能検査の申請
(性能検査の申請等)
第41条
クレーンに係る性能検査(法第53条の3において
準用する法第53条の2第1項 の規定により
労働基準監督署長が行うものに限る。)を
受けようとする者は、クレーン性能検査申請書
(様式第11号)を所轄労働基準監督署長に
提出しなければならない。¥

労働基準監督署長が行なう、クレーンの性能検査を受けようとする場合は、クレーン性能検査申請書を提出しなければなりません。
提出先は、労働基準監督署長です。

申請書の様式は、クレーンに関する申請書の様式第11号になります。

労働安全衛生法様式集
クレーンに関する書式は、ページ中程にあります。

登録検査機関の場合も、登録機関から送られてくる申請書があるので、必要事項を記入して提出しましょう。

index_arrow 性能検査時の準備
(性能検査を受ける場合の措置)
第42条
第7条の規定(同条第1項中安定度試験に関する
部分を除く。)は、前条のクレーンに係る性能検査を
受ける場合について準用する。

性能検査では、落成検査の時と同様に、荷重試験用の重りなどの準備をしなければなりません。 また必要があれば、ボルトを外して内部を確認するなどの措置も行われます。

ただし、性能検査では安定度試験は行わないので、この試験に関する準備は不要です。
安定度試験は、落成検査の時だけ実施です。

また、荷重試験について、 公益社団法人 ボイラ・クレーン安全協会のHPを見てみると、次の通り書かれています。

荷重試験は、クレーンに定格荷重に相当する荷重の荷をつって、つり上げ、走行、旋回、トロリの横行等の作動を定格速度により行います。

公益社団法人 ボイラ・クレーン安全協会  「クレーン・デリックの性能検査

年次点検と同様に、定格荷重までの吊り試験を実施します。
定格荷重が50トンなら、50トンの重りを吊上げます。

過荷重は負担がかかり、手続きやしっかりとした準備がない限り、禁止になります。
またワイヤーやジブなど本体に与える負荷も大きいので、過荷重は行わない方がいいということですね。

index_arrow 検査証の有効期限
(検査証の有効期間の更新)
第43条
登録性能検査機関(法第41条第2項 に規定する
登録性能検査機関をいう。以下同じ。)は、
クレーンに係る性能検査に合格したクレーンについて、
クレーン検査証の有効期間を更新するものとする。
この場合において、性能検査の結果により2年未満
又は2年を超え3年以内の期間を定めて有効期間を
更新することができる。

性能検査に合格すると、検査証の有効期限が更新されます。
次に性能検査を受けなければならないのは、期限が切れる前までにとなります。

更新される期間は、性能検査によって若干のばらつきが出てきます。
良い状態であれば期間は長くなりますが、古いクレーンだと最短期間になります。

最短で2年未満になり、最長で3年以内までの間で有効期間が設定されます。

新しく、メンテがしっかりされているものほど、有効期間が長くなると言えます。

車も新車は車検までの期間が長く、その後は2年以内とかになりますね。
クレーンも同じなんですね。

index_arrow 性能検査時の労働基準監督署長の適用
(労働基準監督署長が性能検査の業務を行う場合における規定の適用)
第43条の2
法第53条の3において準用する法第53条の2第1項の
規定により労働基準監督署長がクレーンに係る
性能検査の業務の全部又は一部を自ら行う場合に
おける前条の規定の適用については、同条中
「登録性能検査機関」とあるのは
「所轄労働基準監督署長又は登録性能検査機関」とする。

クレーンの性能検査は、クレーン協会等の登録検査機関が行なうことになっています。

しかし、安衛法第53条の3、53条の2の規定に従い、労働基準監督署長が実施することもできます。

(都道府県労働局長による製造時等検査の実施)
第53条の2
都道府県労働局長は、登録を受ける者がいないとき、 第49条の規定による
製造時等検査の業務の全部 又は一部の休止又は廃止の届出があったとき、
前条の規定により登録を取り消し、又は登録製造時等検査機関に対し
製造時等検査の業務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、
登録製造時等検査機関が天災その他の事由により製造時等検査の
業務の全部又は一部を実施することが困難となつたとき
その他必要があると認めるときは、当該製造時等検査の
業務の全部又は一部を自ら行うことができる。

2 都道府県労働局長が前項の規定により製造時等検査の業務の全部   
  又は一部を自ら行う場合における製造時等検査の業務の引継ぎ
  その他の必要な事項については、厚生労働省令で定める。

(登録性能検査機関)
第53条の3
第46条及び第46条の2の規定は第41条第2項の登録について、
第47条から前条までの規定は登録性能検査機関について準用する。
この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中 同表の中欄に掲げる字句は、
それぞれ同表の下欄に掲げる字句と 読み替えるものとする。

第53条の2 都道府県労働局長  → 労働基準監督署長

登録検査機関が、性能検査ができない場合の措置です。

大体においては、各都道府県のクレーン協会支部が行うことが多いです。

労働基準監督署長が性能検査を行う場合、第41条にあるクレーン性能検査申請書を提出します。

index_arrow 条文の要約

【クレーン等安全規則】

第40条
性能検査は、クレーンの各部分の構造及び機能について点検を行なうほか、荷重試験を行なうものとする。
第41条
性能検査を受けようとする者は、クレーン性能検査申請書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
第42条
性能検査を受ける場合は、クレーンに係る性能検査を受ける場合について準用する。
第43条
登録性能検査機関は、クレーンに係る性能検査に合格したクレーンについて、クレーン検査証の有効期間を更新するものとする。
第43条の2
労働基準監督署長がクレーンに係る性能検査の業務を自ら行う場合における前条の規定の適用については、同条中「登録性能検査機関」とあるのは「所轄労働基準監督署長又は登録性能検査機関」とする。