○コラム○雑感

僕は元ソニーの黒木靖夫さんが好きだ

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大きな影響を受けた人と聞かれて、すぐに思い浮かぶ人は3人います。

その内の2人は、直接関わりを持つ中で、その考え方や在り方に惹かれていきました。
今も第一線で活躍している人たちであり、今も輝いています。
住んでいる場所が遠いため、ここ数年会うことがないのですが、尊敬の念は何一つ変わっていません。

そして、もう一方。
この方とは、直接面識はありません。
テレビで話されている姿や、著作を通して、格好いいなと思った方です。

それが、元ソニーの黒木靖夫さんです。

黒木さんを初めて知ったのは、「平成日本のよふけ」という番組でした。
もう15年くらい前の話です。

鶴瓶さんが司会をされていたこの番組は、戦後日本を創ってきた人たちが出演されていました。
元副総理後藤田正晴さん、田中角栄元首相の秘書をされていた早坂茂三さん、浅間山荘事件を担当された佐々淳行さんなど、どなたも第一線で時代を作って来られた方です。
鳩山由紀夫元首相も、出演されていたかと思います。確かそれなりのことを話されていたと思いますよ。

この番組は好きだったので、毎週のように見ていたところ、黒木靖夫さんが出演されたのでした。

当初、私は黒木さんを知りませんでした。
見た目の印象としては、ダンディ、おしゃれ、何とチャーミングな笑い方をする人というものでした。

そして、紹介を聞くと、元ソニーの方で、なんとウォークマンを開発責任者で、あのロゴを作った人とのこと。

そうか、ウォークマンを作った人は、こんなにかっこいい人なんだ、さすがソニーと思ったものです。

どんな話をされたかは、ほとんど覚えていませんが、盛田昭夫さんとのエピソードが多かったように思います。

ウォークマンを開発した時の、斬新で、挑戦的、リスクいっぱいの世界に飛び込んでいく在り方が、とてもかっこよかったです。
今でも、録画していなかったことが悔やまれてしまいます。

この放送からすぐ、黒木さんの著作を書いました。
「大事なことはすべて盛田昭夫が教えてくれた」
なんとも、盛田昭夫さんへの思いがあふれている本です。

著作を読んで、ますます黒木さんが好きになりました。
著作の裏表紙かどこかに事務所の住所が書かれていたので、手紙を送ったくらいです。
人生でファンレターを送ったのは、後にも先にも、黒木さんだけです。

実は、先日どうしてもこの本が読みたくなって、購入しました。
もう絶版だったらしく、古本でなんとかゲットしました。

読み返して思ったのですが、黒木さんに強く憧れを抱いた時期のソニーは、とにかく格好良かった。

ウォークマンなどもありますが、VAIOも格好良かった、プレステ2も最高だった。
フラッシュメモリーなどソニー製品以外では使い道のないものを作っていても、それも格好良かった。
ソニーは美しく、斬新で革新的な製品を生み出していまいた。
ちょっと高いのが難点でしたが、値段が許せば、ソニーのものが欲しかった。

まさか、今現在あのソニーが、こんなことにという感じがします。

ソニーの製品に魅力を感じなくなって、そう短くはありません。
見渡すと、私の回りのものにソニー製が1つもありません。

私自身の年齢もあるでしょうが、ソニーへの憧れはありません。

かつてのソニーは黒木さんのような方が、活き活きと活躍されていました。
そんなソニーだからこそ、あふれる魅力があったのかもしれません。

私は現在、建設業で、安全衛生にも携わっています。
先日、労働安全コンサルタント試験に合格し、資格を得ました。

仕事において、安全管理とは、とても地味な仕事です。
何かを作るものではありません。生産性はゼロです。

しかし、全ての生産活動は安全が確保されてこそのものだというのは、誰もが分かるはずです。
事故や怪我、病気をしてしまうと、物を作るどころではありませんからね。

とはいえ、地味ですし、時には生産活動の効率を妨げます。

安全確認を行っていれば、作業の手を止めなければなりません。
安全委員会などがあれば、時間だけが取られます。
保護具を着けるのは、面倒ですし、作業性を損ないます。

安全活動は、必要と分かっているけど、面倒なことと言えます。

私も最初は、何となくお鉢が回ってきたからやっていただけでした。
形だけ。書類だけという感じです。

今のところ、私の会社では1日以上休むという事故は起こっていません。
ところが、当たり前のように続く無事故は、いつ崩れるか分からないというのも実感するようになりました。

近くの会社で、死亡事故は起こりますし、ニュースを見れば、毎日のようにどこかで事故が起こっています。

たまたま起こったのではない。
これが分かるようになると、安全活動の大切さを分かり、これをきちんとやろうと思うようになったのです。

こんな気持が嵩じて、労働安全コンサルタント資格をとるまでになったのでした。

労働安全コンサルタントの資格を得て、活動の幅を広げようと考えた時に、黒木さんのことが思い出されました。

ソニーの中で、盛田さんに「社内で逆らうのは、こいつだけなんですよ。」と言われながらも、革新的な製品を世に送り続けた黒木さん。

私もここ数年くすぶり続けていたのですが、「安全」というキーワードで心に火が付いた時、かつての憧れが思い出されたのかもしれません。

安全など、革新的ではありません。
新しいものを創りだすものではありません。
ましてやスマホやウォークマンなどのように、世界を変えるものではありません。

どちらかと言うと、世界を守るものだと思います。
人を守るものです。

1人が被災すると、影響は本人だけに留まりません。
被災した人には、家族がいます。
友人がいます。
会社があります。
同僚がいます。

被災者が死ねば、その人の世界は終わります。
同時に、被災者に関わる人たちの世界も変わります。

安全活動は、個々人の世界を守る仕事なのだと思います。

黒木さんは、「平成日本のよふけ」に出演された時に、若者へ向けてメッセージを送られました。
「元禄文化は、若者たちが常識外れの格好をして歩き、眉を潜められた。しかし彼らが絢爛たる元禄文化を作ったのだと。」

40代、50代になっても雑誌のPOPAIを読んでおられた黒木さんならではの言葉だと思います。

一見すると毛嫌いされるようなものも、文化と成り得ていくのです。

労働安全コンサルタントとは、マイナーな資格です。
受験者は毎年1000人弱。司法書士や技術士などといった国家資格としては少ない方ではないでしょうか。
地味この上ない資格です。

この地味で、一見すると生産性のない資格の仕事ですが、私は大切な仕事だと確信しています。
こんな世界に突き進もうとした時、黒木さんのことが思い出されたのかもしれません。

前途多難でしょうが、それもまた良しかなと。
そう思えるのは、黒木靖夫さんという先輩がいるからでしょうね。

今回は、あまり安全とは関係ありませんでしたね。
黒木靖夫さんが格好いいというのが、伝わればこれ幸いです。

ところで、今のソニーに魅力がないとかをいっぱい書いていたら、ちょっと愛しくなってきました。
まだPCは元気なので、買い換える予定はありませんが、次はVAIOにしたり、スマホはXPERIAもいいかもと思い始めました。
厳禁なものです。

でも食指が動かない。
ものすごく不満なのが、VAIOの色です。
なぜ紫をやめたのか。
これがものすごく不満です。

正直、性能は戸のメーカーも大差ないのだから、せめて格好いいものを出せばいいのに。

紫のVAIOは、そのままで持ち歩きたいくらい格好良かったのに残念。

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コメント

  1. 黒木 より:

    黒木靖夫の娘です。
    たまたま父のウェブを検索したところ、あなたさまの記事を見つけました。
    父が亡くなってもうすぐ8年が経つというのに、今でも思っていただける人がいるということに大変感謝いたします。

    ありがとうございます。

    取り急ぎお礼まで

  2. 中野博喜 より:

    黒木さんとソニーに対して自分と全く同感な人がいることに驚きました。当時のテレビの映像と語りは、今でも覚えていてます。60年安保の時サラリーマンなのにデモに参加したこと、ウォークマンが「確かに壊れやすい」と認めたこと、ソニーはすべての商品の部品を保管していること、松下社長と盛田社長の会見に同伴した時の話(傘下のビクターのVHSを押し切られたこと、でも市場外ではテレビ局すべてベータ―であること)、そして「一番問題なのは諸外国に日本が尊敬されていない」ことなど。鶴瓶さんの司会と、小田実、佐々淳行、早坂茂三の三氏との会話が実に面白かったことを、忘れられません。私も直に65歳です。

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