○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

兎長耳、鉄パイプでごろんする。

entry-208

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

犬尾沢を始めとするチームは、羊井たちの建築作業の手伝いに来ました。
明日から外壁工事を行うことになり、羊井たちはその準備を行います。

犬尾沢、兎耳長、猫井川、そしてエスパニョール鼠川は、足場の組立作業を行うことになったのでした。

「よし、ではまず鋼管を運んできてから、組立を行おう。
 鋼管は後で組み立てやすいように、長さやパーツごとにまとめておくように。
 バラバラに置いていたら、作業しづらいだけでなく、転がって危ないからな。」

犬尾沢が作業手順を説明すると、早速みんなトラックの荷台から鋼管を持って行きました。

「足場組なんて、珍しいですね。いつもは足場屋さんに頼むのに。」

猫井川が、犬尾沢に聞きます。

「うん。いつも頼むんだが、今回は急だったこともあり、頼めなくてな。
 そんなに高いものではないし、一応俺も資格は持ってるからな。」

「そうなんですか。資格って講習ですか?」

「ああ、何年か前に羊井とかと一緒に、講習を受けたよ。
 今回のは高さが5メートルもないから、作業主任者は必要ないんだけどな。」

「なるほど。
 俺もそのうち受けたほうがいいんでしょうか?
 それにしても、この仕事は資格がいっぱいありますよね。」

「建設業は資格、資格だな。
 猫井川も、少しずつ資格を増やしていって、作業責任者とかになってもらわないとな。

 よし、作業床はここに並べていこう。」

そんな話をしながら、支柱や手すりとなる鋼管や作業床、筋交いなどの部材をトラックの荷台から運び、並べていきます。

「うーん、腰がいたいー。ちょっと休憩。」

運び終えたくらいで、兎耳長が腰をトントン叩きながら、つぶやきます。

「わしもです。年をとると、重いものが辛い。」

鼠川も、同調します。

「俺も痛いです。」

猫井川も言いますが、すぐさま、

「お前は若いんだから、頑張って運べ。」

と、言われてしまうのでした。

部材をひと通り、運び終えると、次は組立を行っていきます。

犬尾沢の指揮のもと、足元から組み立てていきます。

何本もの支柱が立ち、その支柱を水平材でつなぐ。
作業床を置き、手すりを取り付ける。

スイスイと材料が運ばれ、足場の形になっていきました。

1層目が終わり、2層目の組立を行おうとした時です。

並べて置かれていた鋼管が、ゴロンと転がって行きました。

すぐに止まったものの、その鋼管は、兎耳長の足元に横たわったのでした。

腰に手をやり、伸びをしている兎耳長は、転がった鋼管に気づいていなさそうです。

猫井川は、2本、3本と鋼管を取り上げた時、兎耳長が鋼管の上に足を降ろそうとしているのを見ました。

「兎耳長さん、危ない!鋼管!」

とっさに叫びましたが、もはや着地に向かっていた兎耳長の足を止めることはできませんでした。

兎耳長の足は、鋼管の上に置かれ、その勢いで鋼管は前に転がります。

猫井川の声で、みんなが目を向ける中、バランスを崩し、工法に倒れそうになる兎耳長。

「兎耳長さん!」

ほぼ全員が叫んだ時でした。

兎耳長は、後方に倒れこむ勢いのまま、後ろに手をつき、くるりと一回転したのでした。
それはそれは見事な弧を描く、バック転。

先ほどまで、腰がいたいとしなだれていた姿からは想像できない瞬間でした。

「えっ!?」

これまた全員が同時に、声を発しました。

そして我に返った、猫井川が聞きます。

「大丈夫ですか?何ですか今のは??」

みんなが思った疑問に対する、兎耳長の答えは、

「大丈夫。昔、体操をやっててね。」

どうやら無事そうです。

「体操ですか。。。」

疑問への答えなのか、何なのかわからない顔を、全員がしています。

「まあ、大丈夫なら良かったのですが。
 足元には注意して下さい。
 あと、鋼管は転がらないように固定しておきましょう。」

犬尾沢が、場をまとめます。

「兎耳長さんは、前にボクシングしてたり、柔道をしてたとは聞いていたのですが、体操もですか。

 鼠川さん、兎耳長さんは何者ですか?」

猫井川が、そっと鼠川に聞きます。

「わしも分からん。」

「鼠川さんでも分からないんですか。」

みんなの謎をよそに、平然と作業を続ける兎耳長なのでした。

今回は、足元不注意で起こるヒヤリハットですね。

普通ならば、後頭部をぶつけてしまい、ヒヤリハットでは、済まないかもしれません。
しかし、謎の男、兎耳長は華麗に危機を脱します。

彼は身につけた技術をいかんなく、危機回避に活かしているようです。

とはいえ、そもそも危機を招かないことも大切なのでしょうが、そうなると兎耳長の活躍は語れません。

仕事場、特に建設現場や工場など、不特定の材料や工具を使用する場所では、足元が散らかるということはよくあることです。

理想的には、整理整頓されていることがよいのですが、作業中はどうしても整然とはいかないのが常です。

今回は足場の組立作業ですが、部材となる鋼管が転がってしまいました。
犬尾沢が、整然と作業を進めていったものの、それでも完全にとはいかないようです。

作業場を整理整頓することは、事故予防になります。

4Sや5Sなどとスローガンで掲げられるのは、見た目の美しさだけでなく、事故を防止するためのものですね。

家庭内でも、足も踏み場もない部屋と、きちんと収納され床の上には何もない部屋とでは、転んだり、足をぶつけたりする可能性はどちらの方が高いかは、言うまでもありませんよね。

仕事場でも同じなのです。

整理整頓されている作業場は、事故が防ぐのに役立つのです。

それでは、ヒヤリハットをまとめてみます。

ヒヤリハット 足場用の鋼管が転がり、これを踏んで転倒しそうになった。
対策 1.転がりやすいものは、縛ったりして、固定する。
2.通路に転がらないような方向にする。

整理整頓することは、意識的に行うものですが、習慣によって身につけられます。

単純には、使い終わったものは、元の場所に置く。
決まった場所に、材料や道具を置く。

あれやこれやとルールを複雑にすると、混乱のもとですが、使ったらすぐに元の場所に戻そうという程度のキマリであれば、みんなも理解しやすいのではないでしょうか。

転倒は、非常に多い事故の型です。
しかも業種を問わず、発生します。

ただ足元に注意しましょうと言うだけでなく、そもそも転ぶ原因を作らないのが大切ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA