○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、バイブレーターにしびれる。

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

「牛黒さん、注意してくださいよ。」

猫井川たちが仕事を終えて、事務所に戻ってくると、中から羊井メェの声が聞こえてきました。

何事かと思って、中に入ると、羊井が牛黒ベコに怒っているところでした。
2人は建築作業を主に行うチームで、リーダーは羊井です。

どうやら今日の現場で、何かあったようです。

「分かってる。分かってる。そうガミガミ言うな。」

牛黒が、やれやれといった感じで答えます。

「もう何回もじゃないですか。ちゃんとやることはやりましょうよ。」

あまり反省が感じられない様子に、羊井はさらに言葉をつなげます。

牛黒は、羊井よりも年上です。
それもあってか、牛黒は真剣に取り合っていない様子に見えました。

「おいおい、どうした? 外まで声が聞こえているぞ。」

そんな2人に、エスパニョール鼠川が口を挟みました。

「いや、鼠川さん。ちょっと聞いてくださいよ。
 今日の現場なんですけどね・・・」

羊井のチームは、今日は建物基礎のコンクリート打設をしたのでした。
牛黒も羊井と一緒に、作業を行っていたのでした。

「じゃあ、コンクリートを打っていきますんで、牛黒さんはバイブレーターをお願いします。」

羊井はコンクリートポンプ車を誘導しながら、牛黒に言います。

「おう、任せとけ。と、バイブレーターはどこかな?」

「まだ車じゃないですか?準備お願いします。」

「じゃあ、準備するか。」

牛黒は、仕事は早くしっかりやるのですが、やり方は荒く、生傷の絶えない男です。
そんな牛黒は、どすどすと車に向かい、バイブレーターを引っ張り出します。

バイブレーターの電源は、発電機を使います。
しかし発電機を載せている車から、コンクリート打設現場までは距離があるので、延長ケーブルを使うことにしました。

「ありゃ、ドラムはどこだ?見つからんな。
 仕方ない。この長いのでいいか。」

牛黒はそう言うと、20メートルの延長ケーブルを取り出すと、発電機のコンセントにプラグを挿し、もう一方に、バイブレータのコンセントを挿し、伸ばしていきました。

ズルズルズルと、ケーブルは引きずられ、伸びていきます。
伸ばしていく途中で、どうやら打設現場の端から端までに伸ばすには、短いようでした。

「あれ、ケーブルがちょっと短いか。
 うーん、もう一本延長ケーブルを足しとくか。」

そう言うと、バイブレーターをその場に置き、車に延長ケーブルを取りに行ったのでした。

延長ケーブルを取ってくると、バイブレーターを持ち上げます。

「何だ、ちょっと濡れてしまったか。
 あー、こんなところに水たまりがあるな。」

バイブレーターについた水を軍手で拭うと、延長ケーブルのプラグを差し替え、また伸ばしていきます。

この時、延長ケーブル同士の接続部は、水たまりの近くに位置していたのでした。

「おーい、もう準備大丈夫だぞ!」

牛黒は型枠の側で、羊井に手を振ります。

「では、行きまーす。」

羊井はそれを確認すると、型枠の中にコンクリートを流し込み始めました。

ドボドボとコンクリートが入っていきます。

牛黒は、バイブレーターをコンクリートに差し込むと、スイッチを入れました。

ブブブと動き始めたところ、牛黒の手には痛みが走りました。

「いて!?何だ?」

痛みに驚いてスイッチを切ったのですが、痛みの原因が分かりません。

「まあ、いいか。」

牛黒は気にせず、またスイッチを入れました。

ビリッ!

今度はさっきよりもはっきりとした痛みが走りました。

「あいて!!」

強い痛みに思わずバイブレーターを落としてしまいました。

「どうしたんですか?」

そんな様子に驚いた羊井も、牛黒に尋ねます。

「いや、分かんねえんだけど、ビリっと来た。」

「ビリっと来た?感電ですか?
 でも、この前使った時はそんなことなかったのに。
 ケーブルとか破れてないですよね。」

そういうと、延長ケーブルをたどって見てみると、延長ケーブルの接続部が水たまりにハマっているのでした。

「ああああ、発電機切れ!プラグが水に浸かってる!」

そういうと、発電機近くにいた人に指示しました。

「牛黒さん、何でドラム使わなかったんですか?
 それにこの延長ケーブルは防水じゃないから、水たまりに接続部をつけたら危ないじゃないですか!」

「ああ、そうか。悪い悪い。車の中にドラム見つからなくてよ。」

「さっき、自分で出して、あっち置いたんじゃないですか!
 あのまま使ってたら感電してましたよ。」

「いや、ちょっとビリっと来ただけだから、大丈夫だって。」

「大丈夫じゃないですよ。ほんと、そういうのしっかりやりましょうよ。」

・・・という感じだったんですよ。

羊井が話し終えると、半ば呆れ気味に鼠川が言いました。

「お前は相変わらずだな。羊井が言うように、注意が足りんぞ。」

「自分では注意しているつもりなんですけどね。」

「はぁ、してるつもりではなくて、必ずするの。
 とはいえ、羊井もガミガミ言い過ぎじゃないか。
 牛黒は先輩なのだから、もうちょっと言い方も考えてだな。」

鼠川は、今度は羊井にも苦言を言います。

「でも、鼠川さん。言いたくもなりますよ。
 何度も何度もだし。
 それに、今回はそれだけじゃないですよ。
 近くにいた新しく入った子に、ビリっと来るから持ってみろと触らせようとしたりするし。」

それを聞いた鼠川は、

「そりゃ、牛黒が悪い。」

と、しばらく説教をするのでした。

牛黒は、豪快で明るい人なのですが、一緒に仕事するのは少し大変かもと思う鼠革なのでした。

今回は、猫井川とは違うチームの話です。

犬尾沢チームが土木などを中心とした仕事をしていますが、羊井チームは建築工事を中心に行っています。

今回主人公になった牛黒は、羊井チームのベテランです。
以前、頭をぶつけたという話で名前は出てきていましたが、今回のお話でもしっかりやらかしてくれていたようです。

牛黒のエピソードは、掘れば色々出てきそうです。
その分、羊井の気苦労は絶えないでしょうけど。

さて、今回のヒヤリハットは感電です。

感電は、体に電気が走る事故です。
強い電気が体を通ると、心臓を停止させ、死んでしまうこともあります。

そのような強い衝撃を与えるものですが、今や電気製品はなくてはならないものですね。

電気製品は、日常生活だけでなく、仕事においても欠かせません。
屋内の仕事だけでなく、屋外の仕事でも使います。

電気製品を使う限り、感電の危険は身近だと言えます。

普通に使っている分には、感電を気にすることはありません。
手に触れる部分には電気を通さないようになっています。

ところが条件によっては、普段使用しているものでも、感電することもあるのです。

今回のケースでは、延長ケーブルの接続部が水たまりに浸かっていたことが原因でした。
また軍手もバイブレーターを拾い上げた時に、水たまりに触れて濡れていたのでした。

水は通電をよくするのは知っていますね。
多少の水では、あまり気にする必要はありませんが、条件が整うと、感電してしまうのです。

それでは、ヒヤリハットをまとめてみます。

ヒヤリハット バイブレーターのスイッチを入れたら、電気が走った。
対策 1.延長ケーブルを水たまりに接触させない。
2.コネクタが防水型の延長ケーブルを使用する。
3.ゴム手袋などを着用し、電気を通さない。

体に重大な影響をあたえるほどではなくとも、ビリっと来る感電は身近です。
電気が走る痛みは、耐えられるものではありません。

電気製品の感電は、事前の注意で防げます。
ケーブルの被覆が破れていないか、充電部が露出していないかなど、事前点検が必要です。

もちろん、水たまりの中で使わないなども大切です。

牛黒は、色々と気にしなさすぎだったかもしれませんね。

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