○安衛法と仲良くなる土木工事・土止め支保工

土止め支保工を安全に行うための措置

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掘削作業において、穴の作業にいるときに、土砂崩れが起こるのは、恐怖です。

いつ崩れてくるのだろうとビクビクしながらだと、作業も手につきません。

土壁の倒壊、土砂崩れの対策としては、地質などに応じ、適度な勾配をつけたりする方法がありますが、むき出しのままの土肌は、いつ落ちてくるかは予想がつきません。

また勾配をつけるとなると、地表部はかなりの範囲を掘り返さなければならず、都会の道路など、工事の影響をなるべく少なくするには不向きとも言えます。

土砂崩れを防止する対策として、土止め支保工があります。

土止め支保工とは、土壁の前に矢板などの鉄板や、木の板などで壁を作り、この壁を鉄骨などで、内側から土壁に向かって押さえつけるものです。

土壁に固めて、壁が崩れてきたり、岩が落ちてきても作業場所に入ってこないようにします。

この工法は、土壁の前の壁になる矢板、矢板がずれないように支える腹起し、矢板への突っ張り棒の役割を果たす切ばりなどの部材で構成されます。

この他にも、グランドアンカー方式などもあります。

施工方法等については、ここでは詳細に述べませんが、掘削作業時に土砂崩れを防ぐための方式なのです。

メリットとしては、土砂崩れを防ぐこともありますが、勾配を必要とせず、垂直に掘ることができるので、作業範囲を狭くすることもあります。

土止め支保工は、掘削作業とはセットになるものであり、安衛則でも、掘削作業に引き続き、条文が書かれてれています。

【安衛則】

第2款 土止め支保工

(材料)
第368条
事業者は、土止め支保工の材料については、著しい損傷、
変形又は腐食があるものを使用してはならない。

(構造)
第369条
事業者は、土止め支保工の構造については、当該
土止め支保工を設ける箇所の地山に係る形状、地質、地層、
き裂、含水、湧水、凍結及び埋設物等の状態に応じた
堅固なものとしなければならない。
(組立図)
第370条
事業者は、土止め支保工を組み立てるときは、 あらかじめ、組立図を作成し、かつ、当該組立図により
組み立てなければならない。

2 前項の組立図は、矢板、くい、背板、腹おこし、
  切りばり等の部材の配置、寸法及び材質並びに取付けの
  時期及び順序が示されているものでなければならない。

(部材の取付け等)
第371条
事業者は、土止め支保工の部材の取付け等については、
次に定めるところによらなければならない。

  1)切りばり及び腹おこしは、脱落を防止するため、
   矢板、くい等に確実に取り付けること。

  2)圧縮材(火打ちを除く。)の継手は、突合せ継手と
   すること。

  3)切りばり又は火打ちの接続部及び切りばりと
   切りばりとの交さ部は、当て板をあててボルトにより緊結し、
   溶接により接合する等の方法により堅固なものとすること。

  4)中間支持柱を備えた土止め支保工にあっては、切りばりを
   当該中間支持柱に確実に取り付けること。

  5)切りばりを建築物の柱等部材以外の物により支持する場合に
   あっては、当該支持物は、これにかかる荷重に耐えうるものと
   すること。

(切りばり等の作業)
第372条
事業者は、令第6条第10号 の作業を行なうときは、次の措置を
講じなければならない。

  1)当該作業を行なう箇所には、関係労働者以外の労働者が
   立ち入ることを禁止すること。

  2)材料、器具又は工具を上げ、又はおろすときは、つり綱、
  つり袋等を労働者に使用させること。

(点検)
第373条
事業者は、土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない
期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に
軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、次の事項について点検し、
異常を認めたときは、直ちに、補強し、又は補修しなければならない。

  1)部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態

  2)切りばりの緊圧の度合

  3)部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態

(土止め支保工作業主任者の選任)
第374条
事業者は、令第6条第10号 の作業については、地山の掘削
及び土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから、
土止め支保工作業主任者を選任しなければならない。
(土止め支保工作業主任者の職務)
第375条
事業者は、土止め支保工作業主任者に、次の事項を
行なわせなければならない。

  1)作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること。

  2)材料の欠点の有無並びに器具及び工具を点検し、
   不良品を取り除くこと。

  3)要求性墜落制止用器具等及び保護帽の使用状況を監視すること。

土止め支保工は、矢板、腹起し、切ばりなどの部材で構成されます。
これらは鉄板や鉄骨の他、場合によっては木製のものが使用されます。

土壁が崩れてこないように押え、支えるためには、強固でなければなりません。

土止め支保工に使用する材料は、損傷、変形、腐食があるものは使用してはいけません。
しっかりと強度があるものを使用しましょう。

もし、損傷や変形があれば、取り除き、新たなものを使う必要があります。
材料が不適切であれば、きちんと組み立てても、本来の強度を発揮することができないのです。

構造については、掘削作業に先立って行った調査に基づき設計します。
具体的には地質や形状、き裂の状態、湧水、含水、埋設物などの状態を元に、検討します。

粘土質の地山と、水を含んで緩い地山とでは、矢板の根入れの深さや切ばりの数など、土止め支保工の設計が変わってくるのです。

地質などの条件に応じた強度をもった構造にします。

構造を決めたら、必ず組立図を作成しましょう。
これは土止め支保工の設計書です。
設計書なくして、実際に作ることはできません。

組立図には、矢板や腹起し、切ばりなどの配置、寸法、材質、取付時期や順序など、詳細に書き込まれていなければなりません。

地質などの条件を元に、組立図を作成しているのですから、条件に見合った内容なのです。
後述しますが、作業主任者は、組立図作成に関わるとともに、実際の作業でも、組立図通りの、材料や構造になっているかは、確認しなければなりません。

組立図が作成されたら、これをもとに現場で組立作業を行っていきます。

掘削した場所の土壁に、矢板を打ち込み、各部材を取り付けていきます。
部材の取り付け方は、確実に強固になるようにしなければなりません。

まず切ばりや腹起しは、地面に直置きではありません。
支えとなるのは、矢板やくいなどの取付部になります。
この取付部が、ゆるゆるだと、当然のことながら、落ちるかもしれません。

切ばりや腹起しなどはがっちりと、びくともしないほど確実に取り付けます。

切ばりなどは、鉄骨などを使用しますが、かなり強度のある圧縮材という木材を使用することもあります。

圧縮材とは、ヒノキなどに熱と圧力をかけ、厚さを半分くらいまでに押し固めます。
非常に強い圧力をかけて、縮めるため、強度も通用より遥かに増します
土止め支保工では、このような圧縮材を使用することがあるのです。

しかし1本の圧縮材では長さが足らず、継いで使う時には、継手の方法に注意が必要です。
継手の方法は、突き合わせ継手とします。

継ぎ合わせ継手とは、端の面と端の面をくっつける方法です。
端面同士が接続するので、あたかも1本の木材になるようにするのです。
もちろん、継手部の周りを囲うように補強材で、ずれないようにもします。

重ねるような継手は、力が抜けてしまうので、圧縮材ではやってはいけません。

ちなみに火打ちというのは、角部の補強になります。
角の支え棒ともいえます。
この火打ち部では、突合せ継手にする必要はありません。

切ばり同士、切ばりと火打ちとの取付部は、確実に固定します。
鉄骨などの金属であれば、ボルトでしっかり止めておく必要があるのです。

切ばりは、矢板に内側から押す支え棒です。
この切ばりが長いものになると、切ばり自身の重さに耐え切れず、落下したり、中間部がたわんでしまうことがあります。

長い切ばりには、支えるために中間支持柱を備えたりします。
中間支持柱と切ばりの取付も、ボルトなどで確実に取り付ける必要があります。

土壁を切ばりで押し出す時、矢板の対面は土壁の力に負けないくらいの強度のものでなければなりません。
建築物では、柱は強度が強く、十分支えになりますが、壁などは薄いため、下手をすると突き破ってしまうかもしれません。

切ばりの支えとするものについて、土壁の圧力に負けないくらい強度のあるものを選ばなければなりません。

組立にあたっては、作業の途中で崩れたりしないように、確実に取付け、強固にする必要があるのです。

土止め支保工の作業時は、作業者も注意することがあります。

土止め支保工が完成するまでは、土砂崩れの危険性もあります。
また矢板や鉄骨などが行き交っている状況です。
作業者以外の人が立ち入ると危険なので、関係者以外は立入禁止としなければなりません。

穴の底に作業員が入り、作業しているのですが、材料や工具と放り込むと、当たってしまいかねません。
材料や工具などを穴の底に運ぶときには、つり網、つり袋などを使います。

作業時には、きちんとルールを定めて、行う必要があります。

土止め支保工が完成したら、内部で作業を行っていきます。

土止めが長期に渡る場合、作業時の振動や、雨などの天候、時間がたつことによって部材が劣化することなどがあります。
土止め支保工が、弱くなってしまうと、作業の安全上問題です。

土止めの状態は、定期的に点検しなければなりません。
点検のサイクルは、7日以内に1回です。つまり1周間に1回は点検しなければなりません。

また臨時点検として、地震のあとや大雨などの悪天候の後にも行います。
地震は、震度4の中震以上が、地層に影響をあたえるので、確認します。

点検した結果は、必ず保管しましょう。
少なくとも、土止め支保工を設置している間は、記録を保管します。

点検内容は、材料の損傷や変形、腐食の状態や取付の状態などです。
もし異常があれば、補修する、材料を取り替えるなどの措置をしましょう。

土止め支保工の作業にあたっては、必ず作業主任者を選任します。
作業主任者は、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者の技能講習を修了している人から選任します。

掘削作業であれば、2メートル以上の深さを掘る場合に選任する必要がありますが、土止め支保工の作業主任者は、深さに関係なく選任です。

例え1メートルであっても、土止め支保工を行うならば、選任します。

作業主任者の職務は、掘削作業と同様です。

作業内容を決定し、直接指揮する。
材料などの状態をチェックし、保護帽などの着用状況を監視します。

作業全体を把握して、安全に作業が進められるように監視、指揮するのです。

土止め支保工は、土砂崩れの防ぐために重要な対策です。
深く掘る場合や、広範囲に掘る場合、または都会の道路のように最小限の掘削で影響を少なくする場合などに有効です。

土止め支保工を行う目安の深さは一般に2メートルくらいでしょうか。
もちろん地質や地層、含水などの条件によります。

しかし都会の道路などでは、1.5メートル以上掘削する場合は、土止め支保工を行いましょう。
勾配をつけることができず、掘削幅を最小にして、深く掘る場合は、土止め支保工は必須なのです。
そのため、都会での掘削作業では、土止め支保工は重要であると言えます。

土砂崩れの防ぐ土止め支保工ですが、一方では、組み立てている途中で土砂崩れが起こってしまうこともあります。
この作業自体が、危険な環境での作業になるのです。

土止め支保工を安全に行うために、先行工法というものがあります。
これは、掘削作業が完了してから、土止め支保工を行うのではなく、掘削しながら土止め支保工もやってしまう方法です。

これらについては、労働基準監督署長での通達がありますし、ガイドラインもあります。

次は、安全な土止め支保工のために、先行工法についても紹介してみます。

まとめ。

【安衛則】

第368条
土止め支保工の材料については、著しい損傷、変形又は腐食があるものを使用してはならない。
第369条
土止め支保工の構造については、設ける箇所の地山に係る形状、地質、地層等の状態に応じた堅固なものとしなければならない。
第370条
土止め支保工を組み立てるときは、組立図を作成し、組み立てなければならない。
第371条
土止め支保工の部材の取付け等については、堅固に取り付けなければならない。
第372条
土止め支保工の組立の作業を行なうときは、関係者以外の立ち入り禁止などの措置をとらなければならない。
第373条
土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等の後に、点検し、異常を認めたときは、直ちに、補強し、又は補修しなければならない。
第374条
事業者は、土止め支保工の組立を行う場合は、土止め支保工作業主任者を選任しなければならない。
第375条
土止め支保工作業主任者は、必要な措置をとらなければならない。

 

コメント

  1. 千葉 より:

    中間支持柱を備えた土止め支保工は、切りばりを中間支持柱に溶接しなくてはダメてすか?

    1. itetama より:

      こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      安衛則第371条には「切りばりとの交さ部は、当て板をあててボルトにより緊結し、溶接により接合する等の方法により堅固なものとすること。」あります。
      「等」というのがポイントになります。

      つまり、溶接以外の方法も含め、堅固に固定する方法をとってくださいということになります。

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