○安衛法と仲良くなる車両系建設機械

解体用機械を使用する際の措置

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世の中には物を作る仕事もあれば、壊す仕事もあります。

役割を終えた製品は、そのままではリサイクルできません。
一度部品に分解して、それぞれの用途で使われます。
スクラップ工場などでは、金属ごとに分別したりします。

解体され、リサイクルされるものは、製品だけではありません。
役割を終えたビルや家屋などの建物も、解体されるのです。

建設業には、解体を専門とする業者もあり、解体のための機械もあるのです。

今回は解体用の機械についてです。

解体用の機械はとしては、安衛令別表第7の6号にあります。
そこには、ブレーカーとそれ以外で厚生労働省令で定める機械 という形で規定されています。

それ以外の機械として、平成25年4月12日の安衛則改定により、新たな規定が設けらました。
新たな規定では、第151条安衛則第第151条の175で鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機といったものが含まれます。

ブレーカーとは、コンクリート等を壊すための機械です。
一本爪が振動して壊していきます。コンクリート圧搾機は、機械で挟み込んで壊す機械のことです。
建物の鉄骨を切る鉄骨切断機、押しつぶしながら掴むつかみ機など、解体用の機械も様々な用途に対応した機械があります。

バックホウ アタッチメント

追加された機械も、車両系建設機械に規定されている構造を備えなければなりません。
また定期点検や、特定自主検査の対象にもなります。

さらに、車両系建設機械(解体用)技能講習も、追加された機械を拡充になります。
そのため今までブレーカーのみの講習を受けていた方も、拡充された機械にも対応する講習を受けなければなりません。
平成26年6月30日まで、追加講習の特例措置などがありましたが、もう期限を過ぎています。
今後は新たなカリキュラムの講習を受けなければならないので、昔解体の技能講習を修了したという人は注意が必要です。

解体用建設機械は、このように対象機械を増やすといった、法改正になったのです。

それでは、解体用建設機械の規定を見て行きたいと思います。

【安衛則】

第5款 解体用機械

(使用の禁止)
第171条の4
事業者は、路肩、傾斜地等であって、ブーム及びアームの長さの
合計が12メートル以上である解体用機械(以下この条において
「特定解体用機械」という。)の転倒又は転落により労働者に
危険が生ずるおそれのある場所においては、特定解体用機械を
用いて作業を行ってはならない。ただし、当該場所において、
地形、地質の状態等に応じた当該危険を防止するための措置を
講じたときは、この限りでない。

第171条の5
事業者は、物体の飛来等により運転者に危険が生ずるおそれの
あるときは、運転室を有しない解体用機械を用いて作業を行っては
ならない。ただし、物体の飛来等の状況に応じた当該危険を
防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
(立入禁止等)
第171条の6
事業者は、解体用機械を用いて作業を行うときは、次の措置
(令第6条第15号の2 、第15号の3及び第15号の5の作業にあっては、
第2号の措置を除く。)を講じなければならない。

  1)物体の飛来等により労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に
   運転者以外の労働者を立ち入らせないこと。

  2)強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が
  予想されるときは、当該作業を中止すること。

解体用機械の形状は、ショベルカーなどのように、本体からアームが伸びている形状です。
高いビルの解体などでは、長いアームを伸ばし、高層階を取壊したりします。
長いアームを伸ばすのですから、当然重心はアーム側に偏り、本体のバランスが悪くなります。

ただでさえ重心の偏った作業を行うのに、足元が不安定だと、しっかり踏ん張れません。

解体用建設機械に限りませんが、傾斜地や路肩など不安定な場所での作業は、避けた方がよいです。
機械は一度バランスを崩してしまうと、立て直すことが困難です。
傾いたら最後、そのまま倒れてしまいます。

そのため転倒するおそれのある場所では、使用してはいけません。

しかし作業現場によっては、どうしても使用せざる得ない場合もあるでしょう。
その場合は、転倒しない措置をとらなければなりません。
地盤が緩いのであれば、敷き鉄板などの他、大規模になると、埋め立てや地盤改良なども選択肢に入るでしょう。
傾斜地であれば、機械を配置する場所を検討したり、場合によっては水平になるよう掘削、埋め立てなども検討対象になるでしょう。

機械を使用するには、安定した地盤が大切なのです。

さて、解体工事の時は、特に注意しなければならないことがあります。
それは、壊されたがれき等の落下です。

ビルなどを解体する場合、解体した場所からボロボロとコンクリートが落ちてきます。
対策としてネットを張るなどの措置があります。
しかし機械の運転手は、解体工事の最前線にいるため、がれきが間近に落ちてくるわけです。
もし運転席に屋根がなければ、ぶつかってしまいますね。

そのため、解体用機械は運転室を設け、飛来したがれきなどが運転手に当たらないような構造をしていなければならないのです。

がれきがぶつかる恐れがあるのは、運転手だけではありません。
当然、周囲の作業員もその危険の中で作業しなければならないのです。

機械で解体作業を行っている時、作業員はがれきが落下するおそれのある場所に立ち入ってはいけないのです。
また解体作業は、大雨や強風などの悪天候時には行ってはいけません。

解体作業にかぎらず、荒れた天気の時に屋外の作業は、様子見したほうがよさそうです。

解体等の作業は、第171条の6にもありますが、作業主任者を選任すべき作業のものがあります。
安衛令第6条の「作業主任者を選任すべき作業」にあるのですが、具体的には3つ挙げられています。

15の2号)建築物の骨組み又は塔であって、金属製の部材により構成されるもの(その高さが5メートル以上であるものに限る。)の組立て、解体又は変更の作業

15の3号)橋梁の上部構造であつて、金属製の部材により構成されるもの(その高さが5メートル以上であるもの又は当該上部構造のうち橋梁の支間が30メートル以上である部分に限る。)の架設、解体又は変更の作業

15の5号)コンクリート造の工作物(その高さが5メートル以上であるものに限る。)の解体又は破壊の作業

鉄骨、橋梁の上部、コンクリート造の工作物ですね。

特にこれらの作業では、作業主任者が現場を仕切ります。
その内容は、作業内容を決め、直接指揮をとること。工具、用具の点検。作業員の安全保護具着用の監視などです。

作業員は、小石などの落下に備えヘルメットを着用しなければなりません。
高所で作業する場合は、安全帯(要求性墜落制止用器具)を使用し、解体で粉じんが巻き上がっているならば、防護マスクを着けなければなりません。

当然、解体用機械の使用も、作業主任者の指揮のもと行われるのです。

高度経済成長期の頃には、ビルなど建築ラッシュでした。
その時代に作られた建物は、未だ健在です。

しかし40年以上経過し、耐震規格に満たない建物も多く、役割を終えるものも増えてくるでしょう。

解体は今後ますます需要が増えてくるでしょう。
それに伴い、用途も広がり、広がった用途に応じた機械も増えてきました。

安衛則の改正は、この流れに応じたものです。

解体は、頭の上から、がれきが落ちてくるのですから、建築よりも危険に満ちた現場です。
解体用機械もこの危険に耐えるものでなければなりません。

危険が多い現場で使用する機械だからこそ、より一層の安全を求められるのです。

まとめ。

【安衛則】

第171条の4
路肩、傾斜地等であって、転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのある場所では解体用機械を使用してはならない。
第171条の5
物体の飛来等により運転者に危険が生ずるおそれのあるときは、運転室を有しない解体用機械を用いて作業を行ってはならない。
第171条の6
事業者は、解体用機械を用いて作業を行うときは、立入禁止等の措置を行わなければならない。

 

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