○安衛法と仲良くなる移動式クレーン作業

移動式クレーンの製造検査

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特定機械の製造は、使用よりも製造の段階の方が、厳しくチェックを受けます。
今回は、移動式クレーンの製造検査について、まとめます。

特定機械の中でも、特にボイラーや第一種圧力容器であれば、構造検査、溶接検査、使用検査などの段階を経て、ようやく使用する許可が得られるのです。
製品であれば、ここで出荷できるようになるということですね。

これは個々の製品ついて、検査があります。
製造者としては、非常に手間暇のかかりますね。

このような製造の検査過程を経なければならない程、特定機械の不具合は許されないものと言えます。
万が一事故が起こった時の、被害の大きさを考えると、仕方ないのかもしれません。

さて、移動式クレーンも製造過程で検査を受けなければなりません。

移動式クレーンは、製造検査と使用検査を受けて、ようやく現場で使うことができます。

一方、固定式のクレーンやデリックには製造検査や使用検査はありません。
この違いは、クレーンやデリックは、工場で製作される製品ではなく、特定の場所で組み立てるからです。
そのため、組み立て後に落成検査という検査を受けます。

移動式クレーンは、工場で製作され、製品という形になって工場から出荷されます。
使う場所を決まっていません。
建設業であれば、毎日違う現場で使用することもあります。

そのため製品として完成した段階で検査しなければならないのです。

同じクレーンでも、目的や機能が異なると、検査も異なるので、混同に注意ですね。

移動式クレーンの製造検査については、クレーン則第53条から第56条にまとめられています。

【クレーン則】

第3章 移動式クレーン

第1節 製造及び設置

(製造許可)
第53条
移動式クレーン(令第12条第1項第4号 の移動式クレーンに限る。
以下本条から第61条まで、第63条及び第64条並びにこの章第4節
及び第5節において同じ。)を製造しようとする者は、
その製造しようとする移動式クレーンについて、あらかじめ、
所轄都道府県労働局長の許可を受けなければならない。
ただし、既に当該許可を受けている移動式クレーンと型式が
同一である移動式クレーン
(次条において「許可型式移動式クレーン」という。)については、
この限りでない。

2 前項の許可を受けようとする者は、移動式クレーン製造許可申請書
 (様式第1号)に移動式クレーンの組立図及び次の事項を記載した書面を
  添えて、所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

  1)強度計算の基準

  2)製造の過程において行なう検査のための設備の概要

  3)主任設計者及び工作責任者の氏名及び経歴の概要

(検査設備等の変更報告)
第54条
前条第1項の許可を受けた者は、当該許可に係る移動式クレーン又は許可型式移動式クレーンを製造する場合において、同条第2項第2号の設備又は同項第3号の主任設計者若しくは工作責任者を変更したときは、遅滞なく、所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。
(製造検査)
第55条
移動式クレーンを製造した者は、法第38条第1項 の規定により、
当該移動式クレーンについて、所轄都道府県労働局長の検査を
受けなければならない。

2 前項の規定による検査(以下この節において「製造検査」という。)に
おいては、移動式クレーンの各部分の構造及び機能について点検を
行なうほか、荷重試験及び安定度試験を行なうものとする。

3 前項の荷重試験は、移動式クレーンに定格荷重の1.25倍に
  相当する荷重(定格荷重が2百トンをこえる場合は、
  定格荷重に50トンを加えた荷重)の荷をつつて、つり上げ、
  旋回、走行等の作動を行なうものとする。

4 第2項の安定度試験は、移動式クレーンに定格荷重の1.27倍に
  相当する荷重の荷をつって、当該移動式クレーンの安定に
  関し最も不利な条件で地切りすることにより行なうものとする。

5 製造検査を受けようとする者は、移動式クレーン製造検査申請書
  (様式第15号)に移動式クレーン明細書(様式第16号)、
  移動式クレーンの組立図及び別表の上欄に掲げる移動式クレーンの
  種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる構造部分の強度計算書を
  添えて、所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。
  この場合において、当該検査を受けようとする移動式クレーンが
  既に製造検査に合格している移動式クレーンと寸法及びつり上げ荷重が
  同一であるときは、当該組立図及び強度計算書の添付を
  省略することができる。

6 所轄都道府県労働局長は、製造検査に合格した移動式クレーンに
  様式第17号による刻印を押し、かつ、その移動式クレーン明細書に
  様式第18号による製造検査済の印を押して前項の規定により申請書を
  提出した者に交付するものとする。

(製造検査を受ける場合の措置)
第56条
製造検査を受ける者は、当該検査を受ける移動式クレーンについて、
次の事項を行なわなければならない。

 1)検査しやすい位置に移すこと。

 2)荷重試験及び安定度試験のための荷及び玉掛用具を
  準備すること。

2 所轄都道府県労働局長は、製造検査のために必要があると
  認めるときは、当該検査に係る移動式クレーンについて、
  次の事項を当該検査を受ける者に命ずることができる。

  1)安全装置を分解すること。

  2)塗装の一部をはがすこと。

  3)リベツトを抜き出し、又は部材の一部に穴をあけること。

  4)ワイヤロープの一部を切断すること。

  5)前各号に掲げる事項のほか、当該検査のため必要と認める事項

3 製造検査を受ける者は、当該検査に立ち会わなければならない。

製造に関わる検査は、都道府県労働局長の管轄になります。
使用に関する検査は、労働基準監督署長なので、少し管轄が異なります。

まず、移動式クレーンを製造しようとする場合には、製造許可を得なければなりません。
これは設計図や強度計算、製造設備や設計者などの資料を提出し、審査を受けるのです。
この許可を得て、製造できるようになります。

これは型式ごとに許可を得なければなりませんが、個々の機械を作る場合には不要です。

もし許可を得ている条件から変わる場合。
例えば、製造する機械が新しくなった。設計者が変わったなどがあれば、これも報告しなければなりません。

製造する個々の製品だけでなく、その体制までしっかり管理されるんですね。

さて、製造許可を経て、実際の製品を作ると、今度は製品自体の検査を受けます。
これを製造検査と言います。

製造検査は、1つ1つの製品に対して行われます。

検査の内容は、各部の機能などを事細かに見ていきます。
しかしメインは荷重試験と安定度試験といえます。

荷重試験は、吊る能力が十分かという試験です。
安定度試験は、吊った荷物がフラフラしないかという試験です。

どちらも定格荷重以上の負荷をかけて、不利な条件で使用される場合を想定して行います。

荷重試験では、定格荷重の1.25倍の荷重をかけて、吊上げたり、移動したり、旋回したりします。
ただし200トンを超える場合は、プラス50トンとなります。200トンの1.25倍ですから250トンということですね。

安定度試験は、もう少し重い荷重で、1.27倍の荷重を掛けて、不利な地切り条件でも、ふらつかないかを試験します。
地切りとは、少しだけ吊上げることを言います。

移動式クレーンにとって、重量物を吊り上げる作業が最も重要な機能です。
この機能に不備があれば、元も子もありませんよね。
そのため、製造検査では、吊上げに関する試験は入念に行われるのです。

なお荷重試験等は、性能検査でも行われますので、使用する限りいつまでも性能は保持されなければならないといえます。

試験の際には、試験用の用具などをあれこれ準備しなければなりません。
また、検査員の指示があれば、外装を外したり、ネジやナットを外したりと、分解することもあります。

1つ1つの製品の機能を確認するとはいえ、移動式クレーンを作るのは大変ですよね。

製造者こういった検査を経ているからこそ、使用者は最も危険が少ない状態で使用できるのです。

製造者は、基本性能の向上だけでなく、より安全に使用できるようにと腐心されていると思います。
そして手にし、使用する人が危険なく使うことを願っておられると思います。

そして使用者に届けられる製品の1つ1つには、プロジェクトXのようなドラマがあるはずです。

そういったことを考えると、使用者としては、性能を維持するとともに、使い方も気をつけないといけませんよね。

まとめ。
【クレーン則】

第53条
移動式クレーンを製造しようとする者は、あらかじめ所轄都道府県労働局長の許可を受けなければならない。
第54条
許可を受けた者は、当該許可に係る移動式クレーンを製造する場合において、設備、又は主任設計者若しくは工作責任者を変更したときは、遅滞なく、所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。
第55条
移動式クレーンを製造した者は、当該移動式クレーンについて、所轄都道府県労働局長の検査を
受けなければならない。
移動式クレーンの各部分の構造及び機能について点検を行なうほか、荷重試験及び安定度試験を行なうものとする。
第56条
製造検査を受ける者は、当該検査を受ける移動式クレーンについて、必要な措置を行わければならない。 次の事項を行なわなければならない。

 

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