○安衛法と仲良くなる安全体制元方事業者の責務

特定元方事業者の職務2

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建設業のように、特に危険な仕事を請け負った元方事業者のことを、「特定元方事業者」といいます。

今回は、「特定元方事業者」の責務についてのまとめ、その2です。

前回はこちらをご覧ください。
特定元方事業者の職務1

安衛法第30条にあげられた講ずべき措置のうち、1~5について、まとめてみました。

今回は、6のその他ですが、これが実は多いのです。

6)その他の労働災害を防止するため必要な事項

その他の労働災害防止のために必要なことを行わなければなりません。
何をするのか?
簡単にまとめると、様々な関係請負人がいるので、ルールを統一することです。

特定元方事業者が定めるルールについて、見て行きましょう。

 1.クレーン等の運転の合図の統一

【安衛則】

(クレーン等の運転についての合図の統一)
第639条
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の
労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、
当該作業がクレーン等(クレーン、移動式クレーン、
デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン則 の
適用を受けるものをいう。以下同じ。)を用いて
行うものであるときは、当該クレーン等の運転に
ついての合図を統一的に定め、これを関係請負人に
周知させなければならない。

2  特定元方事業者及び関係請負人は、自ら行なう
  作業について前項のクレーン等の運転についての
  合図を定めるときは、同項の規定により統一的に
  定められた合図と同一のものを定めなければならない。

クレーン作業を行う場合、クレーン操作者(オペレーターといいます)と、玉掛け者(荷をワイヤー等で固定する作業のことです)、また荷の周囲で作業する労働者がいます。

荷を吊ったり、移動させたり、下ろしたりと、オペレーターに適切に指示を出すのですが、オペレーターは車内にいるのと、エンジン音が大きいため、声で指示するのには限界があります。

そのため一般的には、ハンドサインなどで合図し、指示を出します。
例えば、片手を上にあげ輪をかくと、巻上げのサイン。
腕をほぼ水平に上げ、 手のひらを下にして下方に振ると、巻き下げのサインなどです。
ハンドサイン以外にも、旗を使ったりする場合もあるようです。

大体に通った合図を使っているのですが、時々会社独自のルールを持っていたりします。
例えば、ある請負人では荷を吊り上げる合図としているものを、他の請負人では荷を下ろす合図ということもありえます。
近くで作業している関係請負人が、合図を見ていてて、誤解してしまうと危険なことがありますね。

このハンドサイン等の合図を統一して、全ての関係請負人に統一した合図を使わせることが、特定元方事業者の重要な役目です。

関係請負人は統一合図を使わなければなりません。

指示する人も、オペレーターも、周りの労働者も、全員が合図の取り違えがないようにして、的確に動けるようにしなければならないのです。

サインについては、掲示ポスターなども販売されていたりします。
ちょっとここでは、許可も取っていないので、掲載できないのですが。
しかし一般的なサインですので、販売されているポスターを共通の合図として利用するのも、手っ取り早いのではないかと思います。

ところで、クレーン以外、たとえばショベルカーや杭打ち機、ブルドーザー等の車両系建設機械などについて、合図の統一は必要でしょうか?

答えは、必要ありません。

クレーンのみ合図の統一が必要なのです。


 2.事故現場等の標識のの統一

(事故現場等の標識の統一等)
第640条
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の
労働者の作業が同一の場所において行われる場合に
おいて、当該場所に次の各号に掲げる事故現場等が
あるときは、当該事故現場等を表示する標識を統一的に
定め、これを関係請負人に周知させなければならない。

  1 )有機則第27条第2項本文(特化則第38条の8 に
   おいて準用する場合を含む。以下同じ。)の
   規定により労働者を立ち入らせてはならない
   事故現場

  2)高圧則第1条第3号の作業室又は同条第4号
    の気閘室

  3)電離則第3条第1項の区域、電離則第15条第1項の室、
   電離則第18条第1項本文の規定により労働者を
   立ち入らせてはならない場所又は電離則第42条第1項
   の区域

  4)酸素欠乏症等防止規則 (以下「酸欠則」という。)
   第9条第1項の酸素欠乏危険場所又は
   酸欠則第14条第1項の規定により労働者を
   退避させなければならない場所

2  特定元方事業者及び関係請負人は、当該場所において
  自ら行なう作業に係る前項各号に掲げる事故現場等を、
  同項の規定により統一的に定められた標識と同一のものに
  よって明示しなければならない。

3  特定元方事業者及び関係請負人は、その労働者のうち
  必要がある者以外の者を第1項各号に掲げる事故現場等に
  立ち入らせてはならない。

安全対策を施したり、労働者への教育を行っていても、不測の事態はあるものです。
残念ながら事故が起こることもあります。
またその他にも、危険な箇所は関係者以外の立入りを制限しなければならない場所もあります。

そのような労働者の立入りを制限する場所の標識を統一し、関係請負人の労働者に周知しなければいけません。

具体的に、どのような場所かというと、次のとおりです。

1.タンクの内部で有機溶剤が充満している事故現場
2.高圧工法での気こう室(エアーロック)
3.放射能の線量が一定以上の場所
4.酸素が欠乏している場所

各内容は、各専門則にまとめられていますので、見て行きましょう。

  1.タンクの内部で有機溶剤が充満している事故現場

タンク内部などの閉鎖された場所で、労働者が作業する場合、締め切っていない配管から、溶剤が漏れだし、中に充満してしまうことなどがあります。
通常は換気設備や酸素補給用のマスクを着けて作業するのですが、これも十分に機能せず、タンク内で作業していた労働者が中毒になり、倒れてしまうこともあります。

このような有機溶剤の事故について、有機則で次のように規定されています。

【有機則】

(事故の場合の退避等)
第27条
事業者は、タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を
従事させる場合において、次の各号のいずれかに該当する事故が
発生し、有機溶剤による中毒の発生のおそれのあるときは、
直ちに作業を中止し、労働者を当該事故現場から
退避させなければならない。

  1)当該有機溶剤業務を行う場所を換気するために設置した
   局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置の
   機能が故障等により低下し、又は失われたとき。

  2)当該有機溶剤業務を行う場所の内部が有機溶剤等により
   汚染される事態が生じたとき。

2 事業者は、前項の事故が発生し、作業を中止したときは、
  当該事故現場の有機溶剤等による汚染が除去されるまで、
  労働者を当該事故現場に立ち入らせてはならない。
  ただし、安全な方法によって、人命救助又は危害防止に
  関する作業をさせるときは、この限りでない。

有機溶剤が室内に充満している、換気装置が故障するなど、労働者が立ち入ると中毒を起こしかねない場合は、しっかりと換気され安全が確認できるまでは、関係者以外は退避させなければなりません。
救助や対処を行うことができるのは、十分な装備を整えた者のみです。

誰もが立入禁止であると分かるような標識を設置し、労働者の進入を制限する必要があります。

  2.高圧工法での気こう室(エアーロック)

急激に圧力の変動を受けた人体には、悪影響があります。
スキューバーダイビングなどでは、海面に出るまでには、一気に上昇したらダメというのは耳にしたことあるのではないでしょうか。

高圧室で作業する前後には、体を圧力に慣らせる必要があります。
この規定の圧力を徐々にかけていくための部屋を気閘室(きこうしつ)いいます。
エアーロックとも言いますので、こちらの方がイメージしやすい方もいるかもしれませんね。

気こう室の定義については、高圧則で定義されています。

【高圧則】

第1章 総則

(定義)
第1条

この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、
当該各号に定めるところによる。

  1)高圧室内業務
   労働安全衛生法施行令第6条第1号の高圧室内作業に係る業務をいう。

  2)潜水業務
   令第20条第9号の業務をいう。

  3)作業室
   潜函工法その他の圧気工法による作業を行うための
   大気圧を超える気圧下の作業室をいう。

  4)気閘室
   高圧室内業務に従事する労働者(以下「高圧室内作業者」という。)が、
   作業室への出入りに際し加圧又は減圧を受ける室をいう。

無関係の労働者が高圧室の入ったりすると、急激な圧力変化で、体に影響が出てしまいます。
また圧力を調整している部屋を、急に開けたりすると、中にいる人も、急激な圧力変化を受け、体に影響してしまうこともあります。

関係者以外の立入りを制限することは、労働者を守るためにも必要なことなのです。

そのために、気こう室についての標識を定め、しっかりと周知しなければなりません。

  3.放射能の線量が一定以上の場所

【電離則】

第2章 管理区域並びに線量の限度及び測定

(管理区域の明示等)
第3条
放射線業務を行う事業の事業者(第62条を除き、以下「事業者」
という。)は、次の各号のいずれかに該当する区域(以下「管理区域」
という。)を標識によって明示しなければならない。

  1)外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による
   実効線量との合計が3月間につき1.3ミリシーベルトを
   超えるおそれのある区域
  
  2)放射性物質の表面密度が別表第3に掲げる限度の
   10分の1を超えるおそれのある区域

2 前項第1号に規定する外部放射線による実効線量の算定は、
  1センチメートル線量当量によって行うものとする。

3 第1項第1号に規定する空気中の放射性物質による実効線量の
  算定は、1.3ミリシーベルトに一週間の労働時間中における
  空気中の放射性物質の濃度の平均(1週間における労働時間が
  四十時間を超え、又は40時間に満たないときは、1週間の
  労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均に
  当該労働時間を40時間で除して得た値を乗じて得た値。
  以下「週平均濃度」という。)の3月間における平均の
  厚生労働大臣が定める限度の10分の1に対する割合を
  乗じて行うものとする。

4 事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に
  立ち入らせてはならない。

5 事業者は、管理区域内の労働者の見やすい場所に、
  第8条第3項の放射線測定器の装着に関する注意事項、
  放射性物質の取扱い上の注意事項、事故が発生した場合の
  応急の措置等放射線による労働者の健康障害の防止に
  必要な事項を掲示しなければならない。

(放射線装置室)
第15条
事業者は、次の装置又は機器(以下「放射線装置」という。)を
設置するときは、専用の室(以下「放射線装置室」という。)を
設け、その室内に設置しなければならない。
ただし、その外側における外部放射線による1センチメートル線量当量率が
20マイクロシーベルト毎時を超えないように遮へいされた構造の
放射線装置を設置する場合又は放射線装置を随時移動させて
使用しなければならない場合その他放射線装置を放射線装置室内に
設置することが、著しく、使用の目的を妨げ、若しくは作業の
性質上困難である場合には、この限りでない。

  1)エックス線装置

  2)荷電粒子を加速する装置

  3)エックス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の
   発生を伴うこれらの検査を行う装置

  4)放射性物質を装備している機器

2 事業者は、放射線装置室の入口に、その旨を明記した標識を
  掲げなければならない。

3  第3条第4項の規定は、放射線装置室について準用する。

(立入禁止)
第18条
事業者は、第15条第1項ただし書の規定により、工業用等の
エックス線装置又は放射性物質を装備している機器を
放射線装置室以外の場所で使用するときは、そのエックス線管の
焦点又は放射線源及び被照射体から5メートル以内の場所
(外部放射線による実効線量が1週間につき1ミリシーベルト以下の
場所を除く。)に、労働者を立ち入らせてはならない。
ただし、放射性物質を装備している機器の線源容器内に放射線源が
確実に収納され、かつ、シャッターを有する線源容器にあっては
当該シャッターが閉鎖されている場合において、線源容器から
放射線源を取り出すための準備作業、線源容器の点検作業
その他必要な作業を行うために立ち入るときは、この限りでない。

2 前項の規定は、事業者が、撮影に使用する医療用の
  エックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合に
  ついて準用する。この場合において、同項中「5メートル」と
  あるのは、「2メートル」と読み替えるものとする。

3 第3条第2項の規定は、第1項(前項において準用する場合を

  含む。次項において同じ。)に規定する外部放射線による
  実効線量の算定について準用する。

4 事業者は、第1項の規定により労働者が立ち入ることを
  禁止されている場所を標識により明示しなければならない。

電離則で指定されている場所は、次のとおりです。
 1.放射線業務
 2.放射線室
 3.エックス線、放射線装置の5m以内の場所

放射線というと、福島第一原発事故などでさんざん話題に上がったので、人体への影響については、ご承知だと思います。

作業の中には、どうしてもエックス線撮影やガンマ線撮影などの放射線を扱う仕事があるのです。
エックス線撮影などの特性は、外面からは見えない内部を確認する事ができことです。
レントゲンなんてのは、その最たる例ですね。

建設現場で使用する鉄骨やコンクリートが、中にヒビがあったり、空洞があれば、その部分が破損してしまう恐れがあります。そのために品質基準がクリアしているかを確認しなくてはいけません。

しかし内部の状況は外からでは見れません。
かといって、壊して内部をチェックするのは、本末転倒です。

そういう場合に、エックス線撮影を使用したりします。

現物を壊さずに、内部の確認検査を行うことを、非破壊検査といいます。

エックス線などの放射線は、とても簡単に言うと物体を通り抜ける性質があります。
この性質を利用して、鉄骨などの内部を壊さずに検査します。

ですから建設資材の品質チェックのためには、エックス線、ガンマ線などの放射線は必要になるケースがあるのです。
とはいえ、放射線が人体に影響があるのは、確かです。
標識を立てて、関係のない労働者が立ち入らないようにしないと行けませんね。

  4.酸素が欠乏している場所

【酸欠則】

(立入禁止)
第9条
事業者は、酸素欠乏危険場所又はこれに隣接する場所で作業を
行うときは、酸素欠乏危険作業に従事する労働者以外の労働者が
当該酸素欠乏危険場所に立ち入ることを禁止し、
かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。

2 酸素欠乏危険作業に従事する労働者以外の労働者は、
  前項の規定により立入りを禁止された場所には、
  みだりに立ち入ってはならない。

3 第1項の酸素欠乏危険場所については、労働安全衛生規則
 (以下「安衛則」という。)第585条第1項第4号の
  規定(酸素濃度及び硫化水素濃度に係る部分に限る。)は、
  適用しない。

(退避)
第14条
事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合で、
当該作業を行う場所において酸素欠乏等のおそれが生じたときは、
直ちに作業を中止し、労働者をその場所から退避させなければならない。

2 事業者は、前項の場合において、酸素欠乏等のおそれがないこと
  を確認するまでの間、その場所に特に指名した者以外の者が
  立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に
  表示しなければならない。

通常の空気中では、酸素は約21%程度の濃度です。
これが16%未満になると、頭痛や吐き気などの症状が現れます。
12%未満ともなると、死につながる症状に陥ります。
8%未満となると、失神昏倒し、死に至る可能性が高くなります。
酸素濃度は非常に大切です。
酸素濃度が低い(薄い)場所にいると、このような症状が現れてくるのです。
これを酸素欠乏症、略して酸欠症といいます。

地上であれば、酸素濃度が低下するおそれはほとんどありませんが、密閉された風通しの悪い地下室や井戸の底などだと、酸素濃度が低い場所もあり、酸欠症になることもあります。

酸欠則等では、18%以上の酸素濃度の場所でないと作業してはいけません。
当然、十分な換気設備も必要です。

このような酸欠のおそれがある場所に、労働者が入ると、意識を失って事故になりかねません。
そのために、標識をつけ、立入りを制限しなくてはいけないのです。

特定元方事業は、このような場所に関係請負人の労働者が入らないようにするため、標識を統一し、立ち入り制限を行わなければなりません。
標識が曖昧だと、進入を許すかもしれないので、全員が分かり、誰が見ても分かる標識を建てる必要があります。

また標識はあらかじめ全関係請負人に周知し、標識のある場所には労働者が立ち入らないように伝えることも大切ですね。


 3.有機溶剤等の容器の集積場所の統一

(有機溶剤等の容器の集積箇所の統一)
第641条
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の
作業が同一の場所において行われる場合において、
当該場所に次の容器が集積されるとき(第2号に掲げる
容器については、屋外に集積されるときに限る。)は、
当該容器を集積する箇所を統一的に定め、
これを関係請負人に周知させなければならない。

  1)有機溶剤等(有機則第1条第1項第2号の有機溶剤等
   をいう。以下同じ。)又はエチルベンゼン等
   (特化則第2条第1項第3号の2 のエチルベンゼン等を
    いう。以下同じ。)を入れてある容器

  2)有機溶剤等又はエチルベンゼン等を入れてあった
   空容器で有機溶剤又は令別表第3第2号3の3若しくは
   19の2に掲げる物の蒸気が発散するおそれのあるもの

2  特定元方事業者及び関係請負人は、当該場所に前項の
  容器を集積するとき(同項第2号に掲げる容器については、
  屋外に集積するときに限る。)は、同項の規定により
  統一的に定められた箇所に集積しなければならない。

有機溶剤は揮発して、空気中に充満しします。
そのような容器が関係請負人ごとにあちこちで保管していたら、頭がクラクラしてしまう場所が多くなってしまいます。
そのため、特定元方事業が溶剤の保管場所を一箇所に定めて、全関係請負人はその場所に保管しましょうということです。

溶剤ごとで、扱いは異なるのですが、ここでは個別のものについてまで深入りしないでおきます。

なるべく人体に有害なものに接触するのは、最小限としようということですね。


 4.警報の統一

(警報の統一等)
第642条
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の
作業が同一の場所において行なわれるときには、
次の場合に行なう警報を統一的に定め、
これを関係請負人に周知させなければならない。

  1)当該場所にあるエックス線装置(令第6条第5号
    のエックス線装置をいう。以下同じ。)に電力が
   供給されている場合

  2)当該場所にある電離則第2条第2項に規定する
   放射性物質を装備している機器により照射が
   行なわれている場合

  3)当該場所において発破が行なわれる場合

  4)当該場所において火災が発生した場合

  5)当該場所において、土砂の崩壊、出水若しくは
   なだれが発生した場合又はこれらが発生する
   おそれのある場合

2  特定元方事業者及び関係請負人は、当該場所において、
  エックス線装置に電力を供給する場合、前項第2号の
  機器により照射を行なう場合又は発破を行なう場合は、
  同項の規定により統一的に定められた警報を
  行なわなければならない。
  当該場所において、火災が発生したこと又は土砂の崩壊、
  出水若しくはなだれが発生したこと若しくはこれらが
  発生するおそれのあることを知ったときも、同様とする。

3  特定元方事業者及び関係請負人は、第1項第3号から
  第5号までに掲げる場合において、前項の規定により
  警報が行なわれたときは、危険がある区域にいる
  その労働者のうち必要がある者以外の者を
  退避させなければならない。

労働者に危険がある場合や、危険作業を行う前には、労働者が近づかないように警報を出さなければなりません。

警報を出す場所としては、次のとおりです。

1.エックス線装置に電力が供給されている場所
2.放射性が照射されている場所
3.発破が行われる場所
4.火災が発生した場所
5.土砂の崩壊
6.(トンネルや圧気室内など周囲に水がある場所など)出水がある場所
7.なだれがある場所

全て労働者が立ち入ると危険な場所だということが分かります。

労働者が警報音や警報用の回転灯を見て、何のことだと分からないと退避が遅れてしまいます。
そのため、事前に警報を統一し、全関係請負人の全労働者に誤解が生じないようにしなくてはいけません。そして近くの労働者は迅速に退避できるようにしなくてはいけません。

危険な場所の危険作業を行う場合には、関係者以外は近づけないようにするのが、最も大切ですね。


 5.避難訓練等の実施方法等の統一

(避難等の訓練の実施方法等の統一等)
第642条の2
特定元方事業者は、ずい道等の建設の作業を行う 場合において、その労働者及び関係請負人の労働者の 作業が同一の場所において行われるときは、 第389条の11第1項の規定に基づき特定元方事業者及び 関係請負人が行う避難等の訓練について、その実施時期 及び実施方法を統一的に定め、これを関係請負人に 周知させなければならない。 2  特定元方事業者及び関係請負人は、避難等の訓練を   行うときは、前項の規定により統一的に定められた   実施時期及び実施方法により行わなければならない。 3  特定元方事業者は、関係請負人が行う避難等の   訓練に対して、必要な指導及び資料の提供等の   援助を行わなければならない。
(周知のための資料の提供等)
第642条の2の2
前条の規定は、特定元方事業者が土石流危険河川において
建設工事の作業を行う場合について準用する。
この場合において、同条第1項中「第389条の11第1項の規定」と
あるのは「第575条の16第1項の規定」と、
同項から同条第3項までの規定中「避難等の訓練」とあるのは
「避難の訓練」と読み替えるものとする。

トンネル内での作業中に落盤事故が起こったら。
河川の工事中に土石流が起こったら。

危険場所での作業なので、いつ事故が起こるかわかりません。
事故が起こった場合は、まずは労働者が避難し、身の安全を図るが大切です。

しかしいざ事が起こっても、体は動いてくれないものです。
何をしていいのか、どこへ行けばいいのか、混乱してしまいます。
事前に何も決まっていなければ、オロオロするばかりになって、被害が拡大してしまいます。

そのため、特定元方事業は定期的に避難訓練を実施しなくてはいけません。
他の条文で規定されていますが、大体6ヶ月に1度は避難訓練を行います。

特定元方事業は、避難訓練の時期と実施方法を統一して、全関係請負人に周知し、実施しなくてはいけません。
また避難方法などについては、資料を作成し、関係請負人に配布して、周知する必要があります。

緊急時の対応になりますので、常日頃の準備が大切になりますね。


 6.周知のための資料の提供

(周知のための資料の提供等)
第642条の3
建設業に属する事業を行う特定元方事業者は、
その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の
場所において行われるときは、当該場所の状況
(労働者に危険を生ずるおそれのある箇所の状況を含む。
以下この条において同じ。)、当該場所において行われる
作業相互の関係等に関し関係請負人がその労働者であって
当該場所で新たに作業に従事することとなったものに対して
周知を図ることに資するため、当該関係請負人に対し、
当該周知を図るための場所の提供、当該周知を図るために
使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。
ただし、当該特定元方事業者が、自ら当該関係請負人の
労働者に当該場所の状況、作業相互の関係等を
周知させるときは、この限りでない。

特定元方事業は、関係請負人の労働者が安全に仕事できるようにサポートしなくてはいけません。

関係請負人は、自社の労働者が作業に着手する前には、作業内容の他、現場特性、危険箇所、安全対策や、他の関係請負人の仕事との抵触範囲などを教育します。
この教育内容には、クレーン合図や立入禁止の標識などの統一事項も含まれます。

この作業前に、労働者に行う教育のことを、一般に新規入場者教育と言います。
文字通り、新たに作業場に入場した労働者に行う教育のことです。

関係請負人が自分たちだけで揃えられる資料は、自社の作業に関する分だけです。
作業場全体の統一事項や他の関係請負人との調整すべきことなどについては、資料として不足します。

特定元方事業は、関係請負人が新規入場者教育を行うにあたって必要な資料を提供しなくてはいけません。
その資料の中には、他の関係請負人が行う作業状況や、どのような関係があるかなども含まれます。もちろん各統一事項についても含まれます。

さらに、作業場で新規入場者教育を行うので、仮設事務所の会議室を使わせるなど、会場の提供も行う必要があります。

危険を防ぐには、まず決まり事をしらなければなりません。
全労働者に周知するための資料提供が、個々人の安全意識を高めるためにも重要なのです。


特定元方事業者の職務について、まとめてきました。
主に建設業を想定している内容だといえます。

建設業の死亡事故は、全体の約30%前後になっています。
全業種の中で、最も多い数字です。
それだけ事故が多いのです。

仕事上、どうしても危険状態に接することは、避けられません。
危険を排除しようにも、やりきれないのです。

各メーカーの多大な努力により機械が進化し、どんどん安全性が高くなり、事故を減らしてきました。
各建設会社の知恵により、工法が進化し、どんどん事故が減ってきました。

それでも事故はなくならないのです。

相変わらず、土砂の倒壊事故が起こってしまいます。
相変わらず、クレーンの事故が起こってしまいます。
相変わらず、酸欠事故が起こってしまいます。

作業方法に原因があったり、管理体制や労働者個人の不安全行動が原因ということもあります。

ただでさえ、事故の多い現場。
特定作業では、その事故の可能性が飛躍的に高くなります。

特定元方事業者は、作業場全ての労働者の安全に責任があります。
そのための統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者を選任しての安全体制なのです。
統括安全衛生責任者が中心となり、関係請負人と協力して、安全で衛生的な現場を、意識的に作っていかなければ、無事故は難しいと言えます。

特定元方事業者の責務は重大です。

しかし、この体制と協力がうまく行けば、とてもよい仕事の完遂となります。
私も建設業に身をおいているので分かりますが、仕事が完了した時の達成感はこの上ないものがあります。
自分が携わったものが、形になるわけですからね。
とても誇りに思います。

無事故で現場を終える。
これはとても誇りにできることです。
形に残りません。残らないからこそ価値があります。

安全の価値は、プロセスにあります。

最後に、誰一人も現場に残らないこと。
これが特定元方事業者の、そして統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者の最大の仕事の成果なのではないでしょうか。

まとめ。
【安衛則】

第639条
特定元方事業者は、クレーンの合図を統一しなければならない。
関係請負人は、決められた合図を使わなければならない。
第640条
特定元方事業者は、事故現場や立入禁止の標識を統一しなければならない。

【有機則】

第27条
事業者は、有機溶剤の漏洩などの事故が起こった場合、
労働者を退避させ、立入禁止にしなくてはならない。

【高圧則】

第1条
高圧則で使用する定義を定めています。

【電離則】

第3条
事業者は、放射能が放射されている場所には、標識等で明示しなければならない。
第15条
事業者は、放射線が放出される場所では、放射線室を設置して、管理しなけれがならない。
第18条
事業者は、放射線にさらされる場所は、労働者が立入禁止にしなければならない。

【酸欠則】

第9条
事業者は、酸欠の危険がある場所では、労働者を立入禁止にしなければならない。
第14条
事業者は、酸欠の危険が生じたら、労働者を退避させなければならない。
第641条
特定元方事業者は、有機溶剤等の容器の集積箇所を統一しなければならない。
第642条
特定元方事業者は、警報を統一しなければならない。
第642条の2
特定元方事業者は、避難等の訓練の実施方法等を統一しなければならない。
第642条の2の2
特定元方事業者は、土石流危険箇所などの周知する資料を関係請負人に
提供しなければならない。
第642条の3
特定元方事業者は、関係請負人が行う新規入場者教育のため、
危険箇所などを周知する資料の提供などの支援を行わなければならない。

 

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