コラム
厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
| 犬尾沢と鼠川は明日からのコンクリート工事のために、型枠を組み立て、配筋工事を行うことになりました。
型枠を組み立てる場所は非常に狭く、2人以上が入ると身動きがとれなくなるようなところです。 猫井川は、2人の手伝いです。 「がははは、俺に任せとけ」 牛黒は、なぜだか自信満々です。 「はあ、お願いします。」 相変わらずの牛黒の様子に、猫井川は少々戸惑い気味です。 しかしそんなことで、あたふたしていられません。 「猫井川、型枠を切って、こっちに渡してくれ。」 犬尾沢からの指示を受け、早速仕事にとりかかります。 猫井川と牛黒の仕事は、あらかじめ測った寸法通りに、コンパネを切ったりして、加工することです。 加工が終わったコンパネは、どんどん犬尾沢たちに渡していきます。 牛黒は、配筋作業用の鉄筋を運び、部材ごとに並べていきます。 「猫井川、こっちが終わったら、すぐに手伝ってやるかな。」 「はい。早めにお願いします。」 おう、と返事をして、牛黒は鉄筋を肩に抱えて、運びます。 「牛黒さん、一度に運ぶ量が多くないですか?」 「あああ、だ、大丈夫だ。。。」 と、言うものの、明らかに鉄筋を載せた右肩が下がり気味。 「ちょっと、減らしたほうがいいですよ!」 「そ、そうだな。ちょっと減らす。」 そう言うと、その場で鉄筋を下ろし、半分程度の量を改めて拾い上げます。 「お、これは楽だー。 なんとポジティブなのでしょう。 「いやー。一度にたくさん持って行って、早めに終わらせようと思ってさ。 そして、牛黒はいい人でもあるです。 その後は、牛黒も適正な量の鉄筋を運び、部材ごとに並べ終えました。 「あー、1人で運ぶのはえらかった。 「はい、お願いします。 「おー、大変だったわ。 牛黒は、こんな時だけ、妙にいい勘を働かせます。 「え、牛黒さんが『大した人』ということなんじゃ。」 「違う違う。『偉い』ってのは、『疲れる』という意味だ。 「へー、関西弁なんですか。 「いや、生まれは違うけど、しばらく大阪にいたからな。 「急に口調が訛りましたね。 「おう。ほな、やってこか。」 関西弁もどきの牛黒は、早速コンパネに描かれた線に従い、切っていきました。 何枚か切断すると、次はセパ穴などを通す穴を開けていきます。 ハンドドリルを使い、加工していっている時でした。 「ありゃ、キリがつぶれてしもた。」 急に牛黒が頓狂な声をあげたのでした。 「猫井川、キリがつぶれたわ。替えのキリはあるやろか?」 「キリがつぶれた? 「ちゃうちゃう。『つぶれた』言うんは、『壊れた』という意味や。 「はあ、それも関西弁ですか。何か色々混ざってそうですけど。 「そうか。ほな、このキリは投げとくわ。」 「え、投げたら危ないですよ。」 「だからちゃうって、『投げる』言うんは『捨てる』いう意味や。」 ちょっと、得意気に関西弁講座をする牛黒。 その時でした。 「捨てるを『投げる』というのは、関西じゃないぞー。東北の方の言葉だぞー。」 型枠の組立作業をしていた鼠川の一声が響きました。 「牛黒、関西弁を使うのもいいが、相手に分かるように話さんと、指示を取り違えてやってしまうぞ。」 鼠川のちくっとした言葉に、先程まで得意げだった牛黒が少し固まります。 「まあ、ワシは嫁さんのスペイン語は分からんが、分かり合ってるがな。」 訳の分からない追い打ちをかけ、鼠川は仕事に戻ります。 少しシュンとした牛黒は、ぼそっとつぶやきます。 「実は、おれ関西人じゃないんだ。」 「いや、それは知ってます。」 「青森さ、出身だ。」 「そうだったんですか!?」 牛黒は先ほどまで、ノリノリで関西弁講座をやっていたので、これも本当かどうかわからなくなる猫井川なのでした。 |
今回は、ヒヤリハットしたのは、牛黒だけでしたね。
とはいえ、事故や怪我になるようなものではないので、いつもと違う感じになりました。
指示伝達やコミュニケーションは、仕事をする上で非常に重要です。
ちょっとした言い方の違いが、誤った指示の実行になることもあるのです。
何よりも注意しなければならないこととして、コミュニケーションは、何を伝えたかではなく、相手に対してどのように伝わったかかです。
時として、自分の意図とは違った伝わり方をしていることもあります。
どんな時に、自分の意図と異なった伝わり方をするのでしょうか。
原因の1つは、言葉の違いです。
日本語しか分からない人に英語で指示をしても分かりませんよね。
これは明らかに、理解ができていないというのが分かります。
微妙なのが、同じ言語であっても、理解できないということがあることです。
今回のお話でもあった方言などは、一例ではないでしょうか。
同じ動作であっても、地方によって表現が異なるのが方言です。
「ゴミを捨てる」を、関西では「放る(ほる)」等と言い、東北では「なげる」と言います。
「放る」も「投げる」も別の意味があります。違う地方の人が聞くと、どうしても「投げる」=「捨てる」とはわからないのです。
同じ地方であれば、問題ありませんが、様々な出身地の人が集まる場所では、こういったほんの少しの言葉の違いが、指示ミスにつながることもあります。
関東地方では「片付ける」ことを「片す(かたす)」と言います。これは関東以外では?となりかねません。
場合によっては「立たす」と勘違いしてしまうことも。
もしコンパネを「片しておいて」と指示した場合、「立たす」と誤解した人が、コンパネを壁に立てかけたとします。
立てかけていたコンパネが倒れ、下敷きになる人がいれば大事故ですね。
この時、真っ先に責任を問われるのは、コンパネを立てかけた人でしょうが、誤解を生む指示をした人にも責任がゼロとも言えません。
ミスコミュニケーションは、時として事故を招くのです。
それでは、ヒヤリハットをまとめます。
| ヒヤリハット | 関西弁で指示をしていたら、相手に正しくない行動をとらせそうになった。 |
| 対策 | 1.相手に分かる言葉で指示を伝える。 2.指示を受けた人は、内容を復唱して、お互いに指示内容に誤解がないことを確認する。 |
指示間違い、誤解は大事故の原因になったりします。
よく映画などで見るシーンですが、自衛隊などで時間を確認する時、10:00を「じゅうじ」とは言わず、「ヒトマル、マルマルじ」と言いますね。
これは、聞き間違いなどをなくすために、あえて回りくどい言い方をしているのです。
きちんと伝えることは、ミスを起こさないためにとても大切なことなのです。