コラム
 
	厚生労働省労働局長登録教習機関
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今回は、特定元方事業者の安全管理体制について、統括安全衛生責任者や元方安全管理者よりも、やや規模の小さいの場合についてです。
今回は「店社安全衛生管理者」という用語が出てきます。
詳細については、徐々に説明していきますが、簡単にいうと、統括安全衛生責任者等を選任する作業よりも、労働者の従事人数が少ない現場で、安全管理を行う人のことです。
特に危険が伴う仕事を請け負う事業者は、特定元方事業者といいます。
家庭に置き換えると、家を買う等の大きな買い物をするときには、慎重に慎重を重ねて、購入に至るというように、安全に対して十分な慎重さが必要になるという感じです。
 特定元方事業者は、そんな危険が伴う作業が伴います。
 そのため、特定元方事業者は統括安全衛生責任者と元方安全管理者を選任して、作業現場の安全と衛生管理にあたらせる必要があります。
 この統括安全衛生責任者と元方安全管理者の選任は、どの作業でもというわけではありません。
 仕事の内容と労働者の数による制限があります。
表にすると、こんな感じです。
| 1 | ずい道等の建設工事 | 常時30人 | 
| 2 | 特定の場所での橋梁の建設の仕事 | |
| 3 | 圧気工法による作業を行う仕事 | |
| 4 | その他の工事 | 常時50人 | 
この表の「ずい道工事」などは、「特定工事」と言います。
 「特に危険な作業と定めた工事」のことです。
 (この「特定作業」の略は、適当ですので、あしからず)
 では、これよりも人数が少ない場合には危険がないのでしょうか?
 例えば、25人で行う高圧力下での工事では、労働者への体の負担は軽減されたりするのでしょうか?
 もちろん、そんなことはありません。
 人数に関係なく、危険はあります。
 確かに多くの人がいると、その分事故が起こる可能性が高くなります。
 全労働者の母数が増えるわけですから、確立は高くなるわけですね。
人数がたとえ2、3人であったとしても、事故は起こります。
 先ほど家を買う例えを出したので、似たような例をあげてみると、こんな感じでしょうか。
 パソコンを買う時も、カタログを見たり、値段や性能を比較したりと、あれこれ考えますよね。
 家の購入とは比較にならないかもしれませんが、慎重に検討します。
 買って後悔なんてしたくないし。
分かるような、分からないようなたとえかもしれませんが、人数に関わりなく、危険は変わらず、十分に安全対策しなくてはいけないわけです。
 しかし、人数が少ないと、現場の作業長が全員のことに注意が払うことができます。
 全員で10人くらいで作業をしているならば、誰かが危ないことをしてる時には注意できますし、体調が悪そうならば、すぐに対応できますね。
言うなれば、パソコンであれば、自分の小遣いの範囲で収まるという感じでしょうか。
つまり、少人数であれば特定作業であっても、作業長が全体把握できるので、別途安全管理者が必要ではないということです。
逆に、30人、50人という大所帯になると、作業長だけでは目が届かないので、別途専門スタッフが必要になるというわけです。
では、少人数と大所帯の間の人数の場合はどうでしょう。
 ちょうど、作業長も全体把握が困難になってくる、しかしながら統括安全衛生責任者、元方安全管理者を選任すると、コストや様々な面で過剰に思う。
 そんなどっちつかずの範囲があります。
 また、買い物で喩えるならば、車を買うという感じでしょうか。
 家ほど高くなく、パソコンのように小遣いで買えるものではない。
当然、こんな時、家庭であれば相談して、どんな車にするのか、お金はどうするのかなど相談しますね。つまり1人の決裁ではないわけです。
 周りくどくなりましたが、特定作業においても、この中間部をカバーする体制があります。
 統括安全衛生責任者や元方安全管理者とは別に、安全衛生の管理者を選任し、労働者の安全衛生管理を行わせます。 
 この人のことを「店社安全衛生管理者」というのです。
 店社といっても、スーパーなどの小売店などでは、必要ありません。
 必要になるのは、建設業の現場のみです。
 統括安全衛生責任者のように、造船業でも不要です。
 事業者は、特定作業で、一定の人数以上の労働者常時働いている現場では、店社安全衛生管理者を選任して、安全衛生管理を行わせなければなりません。
 労働者は、この店社安全衛生管理者の指導に従わなければなりません。
ちょうど、車を買うのに、家族の意見を聞くのと同様であると言えなくもありません。
店社安全衛生管理者については、安衛法第15条の3に規定されています。
【安衛法】
事業者は、店社安全衛生管理者を選ばなければならないと、規定されていますね。
 ただし、「労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第15条第1項又は第3項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く。)」とあります。
 要するに、労働者が一定数未満、もしくは統括安全衛生責任者を選ばなければならい場合を除くとありますので、中規模の現場で必要ということです。
第2項は、店社安全衛生管理者は資格があるものから選びなさいということです。
 この条文だけでは、どの程度の人数で必要なのか?どんな資格が必要なのか?
 といったことは、触れられていません。
詳細は、安衛則で規定されています。
【安衛則】
第18条の6で、選任する場合の要件をまとめていますね。
 ここで、統括安全衛生責任者や店社安全衛生管理者の選任要件を表にまとめます。
| 仕事種類 | 労働者数(常時) | |||
| 20人未満 | 20人以上 30人未満 | 30人以上 50人未満 | 50人以上 | |
| ずい道工事 | 不要 | 店社安全衛生管理者 | 統括安全衛生責任者 | |
| 特定の場所での橋梁の建設の仕事 | ||||
| 圧気工法による作業を行う仕事 | ||||
| 鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物工事 | 店社安全衛生管理者 | 統括安全衛生責任者 | ||
| その他の工事 | 不要 | 統括安全衛生責任者 | ||
ほとんど、統括安全衛生責任者を選任する作業で、人数は20人以上、30人未満となっています。
 新しく出てきている業種は、「鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事」です。
 これは、高所での作業になるため、墜落事故が起こりやすいからが理由であると分かります。
この建築工事も他の工事と同様に50人以上の労働者を常時使用する場合は、統括安全衛生責任者を必要とします。
この表で分かると思いますが、店社安全衛生管理者を選任する作業は、20人から30人、もしくは50人未満の特定工事なのです。
ちなみに造船業は、「その他の工事」に含まれるため、店社安全衛生管理者を選任する必要は無いというわけです。
さて、他の条文を確認しましょう。
第18条の7は店社安全衛生管理者の資格要件ですが、統括安全衛生責任者や元方安全管理者と似通っていますが、 ちょっと違います。
 大学、専門学校卒で、実務期間が3年以上
 高卒で、実務期間が5年以上
 実務経験8年以上
大学や高校は、理系でなくとも選任できます。現場の実務経験だけが、選任要件ということですね。
第18条の8は、店社安全衛生管理者の職務についてまとめています。
あちこち他の条文を引用しているので、この条文だけでは分かりづらいですが、まとめます。
 1)少なくとも月1回は現場の巡視を行うこと。
 2)労働者の作業の種類、その他の作業の実施状況を把握すること。
 3)協議組織の会議に随時参加すること。
 4)仕事の工程計画及び機械、設備等の配置計画が適正かを確認する。
 統括安全衛生責任者の職務と似通っていますが、やや緩和されています。
 統括安全衛生責任者、元方安全管理者は毎日巡回しなくてはいけませんが、店社安全衛生管理者は月1回の巡視が義務付けられているという感じですね。
その他の条文は、統括安全衛生責任者等と重複しているため、書きませんが、店社安全衛生管理者も選任したら所轄労働基準監督署長に報告し、病気や休暇などで不在になる場合は、代理人を選ばなければいけません。
店社安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者と同様に現場での安全衛生管理の要となる人です。 この人が安全に目を見張らせているからこそ、安全に慎重な現場となり、衛生に気をかけているからこそ、健康に配慮できるのです。 このように見ていくと、人数規模等によりますが、体制づくりも考えられているのだなとわかりますね。
 安全は自分を守るものですけども、目の届かない範囲は人の目が助けになります。
 統括安全衛生責任者、元方安全管理者、店社安全衛生管理者は、危険な特定作業での、全ての労働者を見渡す目が大切なのですね。
まとめ。
【安衛法】
| 第15条の3 事業者は、労働者が一定数未満、もしくは統括安全衛生責任者を 選ばなければならい場合は、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。 | 
【安衛則】
| 第18条の6 店社安全衛生管理者を選任するのは、次の通り。 20人以上、30人未満のずい道工事、特定の場所の橋梁工事、圧気工法工事。 20人以上、50人未満の鉄骨、鉄骨鉄筋コンクリートの建築物の建設工事。 | 
| 第18条の7 事業者は、店社安全衛生管理者を資格要件を満たしたものから選任すること。 | 
| 第18条の8 店社安全衛生管理者は、職務を果たさなければならない。 |