○安衛法と仲良くなる林業

林業作業の安全

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林業は、作業する場所が山中で、安全が確保されている作業場ではありません。
作業環境としては、建設業に似ていますが、山中は建設業より過酷な環境かもしれません。
そのため、事故が多い業種です。

林災防 によると、ここ2年の事故は次の通りです。

平成26年度 死傷者数 1,611 死亡者数 42
平成27年度 死傷者数 1,406 死亡者数 35

ちなみに建設業の死傷者数は、次の通りです。

平成26年度 死傷者17,184 死亡者377br>
人数だけで見ると、建設業に比べて少ないように思います。
しかし、これを年千人率で比較するとどうでしょうか。
年千人率とは、1000人当りの死亡者数のことです。これで母数が違うものを比較することができます。
平成26年で比較してみます。

林業  年千人率 26.9
建設業 年千人率 5.0
全産業 年千人率 2.3

圧倒的に林業が大きいのが分かります。
林業の死傷者数が少なく見えるのは、建設業などに比べ、従事者が少ないからです。

この事故の多さは、尋常ではありません。

事故が多い理由は、作業環境、作業内容がそもそも危険というのはあります。
また、高齢化が進んでいるというのも、一因がありそうです。

さらに、深い山の中では、事故時の救助も迅速にできないため、被害を深刻にしています。

このように林業は事故が多い仕事なので、法律でも厳しく規制されているのです。

【安衛則】

第8章 伐木作業等における危険の防止

第1節 伐木、造材等

(伐木作業における危険の防止)
第477条
事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。第479条において同じ。)を行うときは、
立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。

  1)伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。

  2)かん木、枝条、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずる
   おそれのあるものを取り除くこと。

  3)伐倒しようとする立木の胸高直径が40センチメートル以上であるときは、
   伐根直径の4分の1以上の深さの受け口をつくること。

2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。

林業とは、平たく言うと木を育て、切り出す仕事です。
色々な作業があるものの、最も危険な作業は木を伐倒する作業です。

木が倒れる時の危険は、木の下敷きになることです。
数百キロにもなる木の下敷きになってしまうと、体は耐えられません。
山の斜面での作業のため、避難も簡単ではありません。

木の伐倒作業では、それぞれの立木について、避難場所の確保など必要な措置をとらなければなりません。

措置については、次のことを行います。
1.避難場所をあらかじめ選定する。
2.伐倒の際に、危険を生じるおそれのあるものを取り除く。
3.胸高直径40センチ以上の立木を切る時は、抜根直径の4分の1以上の深さの受け口を作る。

受け口とは、木を倒す方向に、三角形の切り込みをいれることです 。受け口を作った後、反対側から垂直に切っていき、木を倒すのです。
受け口の方向は、誰もいないこと、他の木に引っ掛からないことなどを確認し、慎重に決めなければなりません。

木の切り方1つで、どうしようもなく危険な状況を作ってしまいます。
そのため、安全確保が大事なのです。

第478条
削除
(伐倒の合図)
第479条
事業者は、伐木の作業を行なうときは、伐倒について一定の合図を定め、当該作業に
関係がある労働者に周知させなければならない。

2 事業者は、伐木の作業を行なう場合において、当該立木の伐倒の作業に従事する
  労働者以外の労働者(以下本条において「他の労働者」という。)に、
  伐倒により危険を生ずるおそれのあるときは、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者に、
  あらかじめ、前項の合図を行なわせ、他の労働者が避難したことを確認させた後でなければ、
  伐倒させてはならない。

3 前項の伐倒の作業に従事する労働者は、同項の危険を生ずるおそれのあるときは、
  あらかじめ、合図を行ない、他の労働者が避難したことを確認した後でなければ、
  伐倒してはならない。

林業作業でも、1人で山に入り、木を伐倒するということはありません。だいたい数人のグループで作業を行います。
ただし作業現場に着くと、近場にいながらも、各人で伐倒などを行います。1本の木の伐倒は、1人で行います。

近くにいながらも、個々に作業する時に注意しなければならないことは、自分の作業で周りの作業者を巻き込んでしまうことです。特に伐倒する先に人がいたら、下敷きにしてしまいます。

伐倒の際には、合図を決め、周りの作業者に周知しなければなりません。

ただ合図したら、伐倒作業に取り掛かってもよいかというと、そうではありません。
必ずみんなが避難し、木が倒れる先に誰もいないことを確認してからです。周りの作業者も合図があれば、一旦作業の手を止め、安全な位置まで避難しなければなりません。

それぞれの作業者が好き勝手に作業を行なうと、周りの人を危険に巻き込む可能性があることを知っていなければ、なりません。

(造材作業における危険の防止)
第480条
事業者は、造材の作業(伐木等機械による作業を除く。以下この条において同じ。)を行うときは、
転落し、又は滑ることにより、当該作業に従事する労働者に危険を及ぼすおそれのある
伐倒木、玉切材、枯損木等の木材について、当該作業に従事する労働者に、くい止め、
歯止め等これらの木材が転落し、又は滑ることによる危険を防止するための措置を講じさせなければならない。

2 前項の作業に従事する労働者は、同項の措置を講じなければならない。

造材作業とは、切り倒した木の枝や梢を切る枝払いや、決められた長さの丸太にする玉切りという作業があります。切ったままの状態では、木は運びにくいので、運びやすい形にしてやる必要があるのです。
多くの場合は、切り倒したその場で行なう作業です。そのため、伐倒と同じく斜面で行なうことがほとんどです。

造材の作業を行う時は、伐倒した木や、木の切れ端、枯れて倒れた木などが転落したり、滑ってきて危険を及ぼさないように、くい止や歯止などを行わなければなりません。

何人もの人で、木を切っている場所です。自分が担当している木以外もたくさんあります。
今、作業している木だけでなく、周りの状況も確認し、危険がないようにしてやる必要があるのです。

(立入禁止)
第481条
事業者は、造林、伐木、造材、木寄せ又は修羅による集材若しくは運材の作業
(車両系木材伐出機械による作業を除く。以下この節において「造林等の作業」という。)を
行っている場所の下方で、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材が転落し、又は滑ることによる
危険を生ずるおそれのあるところには、労働者を立ち入らせてはならない。

木の伐倒時に下敷きになるという危険がありますが、それだけではありません。斜面の上で横たわっている木が滑り落ちてくるという危険もあるのです。このどこから危険が来るのか分からないという不確定さが、事故を増やす一因になっているのです。

造林、伐木、造材などの作業を行っている下方で、上から何か落ちてくる危険のある場所は、立入禁止としなければなりません。

上で作業している人も、下方に人がいないことを確認する必要があります。

林業の作業は周りにたくさんの危険があります。そのことを理解し、周りに注意を払って作業するのが、自分の命と周りの人の命を守ることになるのです。

まとめ。

【安衛則】

第477条
伐木の作業を行うときは、退避場所の確保や受口を作るなどの措置をとらなければなりません。
第478条
削除
第479条
伐木の作業を行なうときは、伐倒について一定の合図を定め、周知しなければなりません。
第480条
造材の作業を行うときは、転落し、又は滑ることによる危険を及ぼすおそれのある伐倒木などはくい止め、歯止めなどの措置を行わなければなりません。
第481条
造林、伐木、造材などを行っている場所の下方で、木材が転落やことによる危険を生ずるおそれのあるところは、立入禁止にしなければなりません。

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